音楽小説 蜂蜜と遠雷(上)その2 あらすじとネタバレ

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蜜蜂王子と天才少女

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1次予選は異色の天才少年、風間塵の出番です。塵の天才少年との評判は既に観客にも届いているらしく、ステーイに出ると割れんばかりの拍手で迎えられました。それに16歳という年齢よりもさらに子供っぽい様子で応えてお辞儀をし、ピアノの前に座ると弾き始めます。

「何だ?この音は。」

その音に驚愕したのは審査員の一人でマサルの師、ナサニエルです。音の鳴りが他のコンテスタントとまったく違うのです。一人で弾いているとは思えない立体的な音と、観客がぎっしり入っているにもかかわらず長いリバーブタイム、通常ではありえなかったのです。塵は微笑みを浮かべ楽し気に弾いていました。その様子は塵の音楽がなんの気負いもなく自然と生まれてきたものであると示すようでした。

風間塵の演奏はここでも物議を醸し、審査員の評価は割れました。割れるだけではなく審査員の間にパニックすら与えたのです。

嵯峨三枝子は何となく風間塵の音楽がもたらすものがわかってきました。塵の音楽は心の中の一番柔らかいところに触れてくるのです。それは音楽の理想とも言うべきものだと三枝子は思うのでした。また、三枝子は最初に聞いた時ほど塵の演奏に嫌悪感を感じなくなっていました。

一方、復活がかかっている栄伝亜夜は不安のあまり居たたまれなくなっていました。自分は落ちる、一次予選で落ちるとの思いにとらわれていたのです。亜夜は奏に誘われ風間塵の演奏を聴きに客席に向かいました。塵の演奏は亜夜の不安を

「このように弾きたい。」

という思いに変えていきました。

亜夜はステージに立った瞬間から周囲の空気を変え、格が違う音楽を奏でナサニエルをして

「マサルのライバルは風間塵ではなく栄伝亜夜だ。」

と思わせたのです。

そのマサルは、亜夜を見て懐かしい想いに駆られます。実は亜夜はマサルを最初にピアノへと導いた少女だったのです。マサルは演奏を終えた亜夜に会いにひたすら会場を駆け抜けます。

「アーちゃん!」

「マーくんなの?」

二人はようやく再会したのでした。

一次予選には四人全員が通りました。ただ、風間塵の評価が割れたため一次通過ギリギリのラインになってしまったのですが。

二次予選

二次予選の目玉となる曲は、芳ヶ江国際ピアノコンクールのために作曲されたオリジナル曲「春と修羅」です。この曲のカデンツァ部分は「自由に、宇宙を感じて」と指示があるだけの即興演奏です。

亜夜はマサルと即興部分をどうするか話していた時、ぶっつけ本番の本当の即興にすると話しマサルを驚かせました。クラシックの演奏者は即興とはいっても予め譜面に起こしたものを練習して弾くことが圧倒的に多いのです。亜夜はクラシックから離れていた間ジャズやフュージョンを演っていたのです。それでアドリブに抵抗がないのでしょう。予め作って練習していった演奏では「自由に、宇宙を感じて」から外れていってしまう、というのが亜夜の主張でした。

一方明石は、カデンツァをしっかりと作りこんでいました。社会人で時間がなく、音大も卒業してしまっているため改めて当時の恩師に指導を受けるのも憚られる明石は、考え方を変えて年長者でなくてはできない解釈で「春と修羅」に挑むことにしたのです。

明石は通勤中に昔よく読んでいた宮澤賢治を読み直し、「春と修羅」の舞台となったとされている場所を見に岩手まで出かけて行ったりして自分なりのイメージを固めていきました。

その行程を経て、早く人前で弾いてみたいと感じるようになり二次予選を迎えたのです。

風間塵は客席で二次予選を聴いていました。塵は音楽の本質に体や行動が自然と反応してしまうようで(そこがこの少年の面白いところなのですが)上手いだけで面白みがない演奏だと眠ってしまい、楽しめる音楽だと自然とグルーウ”に身をまかせて揺れています。傍目には同じことに見えているのですが、明らかに塵の中では違います。

塵の唯一の師、ユウジ・フォン=ホフマンは

「音楽は現在でなければならない。」

と常々塵に伝えていました。曲が生まれた時代の背景や、曲の仕組みを知ることは大切なことだけれど、現在を生きるものでなければならないのです。

塵は高島明石の演奏を聴いて、その音の中に豊かなイメージを感じ取り気に入りました。宇宙まで感じられるイメージに驚いてもいたのです。

三枝子とナサニエルは、「春と修羅」の作曲者である菱沼忠明から、風間塵がピアノを持っていないこと、養蜂家の息子で父親と一緒に旅の暮らしをしている塵は、旅先でピアノを借りては弾いていたといいます。ユウジ・フォン=ホフマンと出会うまで、そのような練習だったという話に三枝子とナサニエルは驚愕します。

二次予選二日目、マサルは「春と修羅」を弾く夢を見ながら目覚めました。マサルは「春と修羅」で全部説明しきらない余白を表現すると決めました。そのためにどうすればいいか見つけたときに喜びを感じ、早く弾いてみたくなったのです。試行錯誤の末見つけ出した自分の「春と修羅」、その感覚を再現するためにマサルは二次予選のステージに向かうのです。そして亜夜はマサルの演奏を聴きその引き出しの多さに簡単し、「春と修羅」の宇宙に鳥肌を立てるのでした。

一次予選で風間塵が弾いた曲はこちら


映画「蜜蜂と遠雷」〜藤田真央 plays 風間塵

Piano Sonata in F Major, K. 332: I. Allegro クリックでyoutube

栄伝亜夜にこのように弾きたいと思わせ、彼女の復活の一助となった演奏がこれです。

そして亜夜の演奏はこちら。


映画「蜜蜂と遠雷」 ~ 河村尚子 plays 栄伝亜夜

淡々と進んでいくコンクールの中にたくさんのドラマがあるのですが、あらすじをまとめるのに非常に苦労しています。時間が欲しい。

下巻は映画の公開が終わってから更新しようかな。

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