郁未のまれにみるチェロの才能に、鉄雄は・・・。
百合子の弾く難曲、ドボルザークのチェロ協奏曲を自分が簡単に弾けるようになれば鉄雄が喜ぶ、そう信じて鉄雄へのプレゼントとしてこの曲を弾く郁未。ところが鉄雄は郁未のまれにみる才能と、それを自分が持っていないことに同時に気づき、深く打ちのめされるのでした。チェロをやめた兄、哲郎は
「お前を憎みたくなかったから、チェロをやめた。」
と伝えます。哲郎は鉄雄の才能に屈し、弟を憎まないうちにチェロをやめたのでした。
鉄雄がずっとあこがれて自らから放ちたかった音を、郁未が奏でるのを聴いてしまい、友達なのに郁未が憎いと泣きじゃくります。その鉄雄に何も言ってやる言葉がみつからないと、かつて同じ思いを当の弟に抱いた兄は弟を抱きしめます。
哲郎は二人がどうにか折り合いをつけてこれまで通りの友達でいてほしいと願いますが、百合子は、折り合いなどつけたら鉄雄はその瞬間、チェリストとして死ぬ、と言います。残酷な世界で苦しみながらでもチェロを離さない、生半可ではない覚悟が必要だと。
鉄雄は郁未に、気持ちをぶつけてしまいます。
「俺のチェロを返せ!」
鉄雄しかいない郁未は、彼から向けられる憎しみに大きく傷つきます。それはチェロしかない鉄雄の苦しみと同質のもののようにも思えます。郁未は、チェロをやめたら鉄雄の友達でいられる、という哲郎の言葉に、鉄雄の特別でいるためにチェロをやめない、と告げます。鉄雄と郁未とチェロの三角関係がはじまったようです。哲郎は、郁未の鉄雄に対する執着に恐怖すら感じます。
一方鉄雄は、百合子に弟子にしてくれ、と頼みます。一度は断った百合子ですが、彼女いわく「気まぐれ」で鉄雄を弟子にするのでした。鉄雄は小学校卒業を待たずに百合子とイタリアに旅立ちます。
鉄雄はイタリアへ、一方郁未は
5年後、日本に帰ってきた鉄雄が最初に目にしたのは、既に有名チェリストとなっている郁未の姿でした。郁未の存在で日本にはチェロブームが起きていたのです。鉄雄は東京で哲郎と同居生活に入ります。哲郎は一浪して入った大学を中退し、スポーツ心理学を専攻できる大学に入りなおしました。今は演奏家専門のメンタル・トレーナーとして事務所に勤務しています。
鉄雄は帰国してすぐ伴奏者を探しますが、候補から次々断られてしまいます。鉄雄が変わってしまっているようで哲郎は心配になります。そこに現れたのが成田縁(なりた ゆかり)音楽高校ピアノ科の生徒です。彼女なら鉄雄と合うのではないかと百合子から紹介されたのです。
鉄雄の演奏は個性的過ぎて、今までの伴奏候補が誰も合わせられなかったため断られていたことを、哲郎は悟ります。そして、縁は鉄雄の演奏は個性的なのではない、技術でびっちり個性的に聴こえるように作りこんであることを看破します。鉄雄についてこられたのは縁が初めてだったようです。鉄雄と縁はお互いを認め合い、縁は鉄雄の伴奏者となります。縁は鉄雄の伴奏を楽しんでいたことを告げます。鉄雄は小規模のコンクールに出場することになり、その会場で郁未と再会します。
鉄雄が郁未の怪物的な才能の前に、なすすべもなく泣きじゃくるシーン、読んでいてこちらが苦しくなります。百合子の言うとおり、残酷な世界なのです。そして、鉄雄とも郁未とも違って何にもとらわれていない縁の存在が、鉄雄に新しい風を送るように感じます。伴奏者に縁を得て、鉄雄がどのように変わっていくのか楽しみです。
2巻で使われた曲はこちら
鉄雄と縁の初顔合わせの時にやったリベルタンゴはこちらの一曲目です。
ヨーヨーマ・プレイズ・ピアソラ/ヨーヨー・マ[CD]【返品種別A】
youtubeからはちょっと珍しいピアニカバージョンをどうぞ(クリックでyoutubeへ)
1巻はこちら
3巻はこちら
4巻はこちら
5巻はこちら
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