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BLUE GIANT9巻(ブルージャイアント)あらすじとネタバレ

初めてのジャズフェス、3人で圧倒

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JASSが初めて出演するジャズフェス「カツシカジャズ」の打ち合わせからTake Twoに戻ってきた雪祈は非常に怒っています。アクトの天沼に若さだけのバンドと決めつけられた腹立ちです。雪祈は大と玉田に、アクトに勝つ!と宣言したことを話します。ビビる玉田に喜ぶ大、3人は当日に向けて走り出すのでした。ちなみに大は本当に走っています。それぞれ個人練習に打ち込む雪祈と玉田のカットの後、サックスを持たずに走り込みをする大のシーンが描かれます。以前雪祈に「強い音を出せ」と言われたときも大は走り、泳いでいました。

カツシカジャズ当日、JASSのリハを耳にした天沼の評価は徐々に「これは、ありじゃないか?」に変わっていきました。

「ピアノ、上手いな。」

「サックスは野太い音だね。」

「ドラムは、まあまあか。」

ドラム、まあまあなんですよ。So Blueの平には初心者と見抜かれてた玉田が、それから幾らもたたないうちに大や雪祈を支えるドラマーkとして「まあまあ」の評価を得るのですから、これってすごいです。

ただし、本番前までの天沼の評価は「なかなかいいバンド」まで好転したものの、やはり若い後輩バンドとして下に見る気持ちは消えないようでした。自分達が盛り上げるから失敗など気にせず演っていいと言う天沼に雪祈が再びムカつきだしたのを見た大は、天沼に元気に自己紹介と挨拶をし

「いつも通り全力全開で盛り上げます。ですので、天沼さん達も頑張ってください。」

と、挑発するのでした。

JASSのステージは大のソロではじまります。初っ端から全開で飛ばす大の音量のリハとのあまりの違いにPAさん焦りますが、音圧は下げない方向で必死にベストポジションを探ります。ステージ袖で見守る天沼の表情が変わり始めます。3分ほど続いた大のソロに雪祈と玉田が飛び込みます。そして雪祈のソロ、壁を完全に乗り越え考えないプレイをしている雪祈とノッている観客を認めた大は玉田に囁きます。

「ソロやっぺ!!」

玉田の初ソロは、バスドラのみの連打からはじまりました。熱いソロを叩き出す玉田とそれを見守る天沼の表情、観客のノリ、JASSは3人で場を圧倒したのです。曲終わりに大がメンバー紹介をします。玉田を紹介した時に、その玉田のスティックを握った手をつかみ高々と掲げたのは雪祈でした。

ステージ袖に戻ってきたJASSの3人に天沼は惜しみない拍手を送り、握手を求めステージへと出ていきます。そこで天沼は熱いプレイを繰り広げそれはアクトの他のメンバーにも伝染し、大人のプロとしての演奏で観客を沸かせるのでした。

この玉田のソロからアクトの演奏までが一話に納められていますが、一話を通して文字が一切なく絵だけで表現されています。一番音が鳴っている場面で直接的な音の表現がまったくないのです。台詞ももちろんありません。この一話、最高にかっこいいです。

次の一話で描かれる大の仙台の家族の話もとてもいいです。残された家族がそれぞれ自分の持ち場で大の話をする、それだけなのですがストーリー全体に厚みを与えています。ちなみに彩花は、由井先生にフルートを習っています。大に贈られたフルートです。

ある日、仙台から三輪舞が大を訪ねてきました。突然のことにびっくりする大に舞は

「お台場に連れて行って。」

と言います。

二人は久しぶりにデートをします。東京へ来てから一年、ジャウとバイト三昧だった大にとって初めてのお台場で案内などはとてもできませんが、お互いの近況を話しながら観光してまわります。大は、東京で色々なことがあったこと、それでも舞のことは忘れたことがないと話します。

二人は観覧車に乗ります。そこで大は舞から

「好きな人ができました。」

と告げられます。すぐには言葉を返せない大でしたが、続く舞の言葉に一年もほとんど連絡をとらず放っておいた自分を省みるのでした。

別れ際、舞は

「私、疑ったことないんだ。1ミリも。」

「宮本大が、世界一のサックスプレーヤーになるの。」

いつか、世界一の大のサックスを聴きに行くと言い残して舞は仙台に帰ります。

So Blueのステージに立つ!

舞との別れは大にとって想像以上のショックを与えました。大はそれを悟られまいと普段通りに振舞っていたのですが、大の出す音に現れていたため雪祈にも玉田にも気づかれていました。それを知った大は、気持ちがすべて伝わってしまうジャズはやはりすごい、と感じ改めて目標として

「So Blueのステージに立つ。」

と宣言します。舞との最後のデートで舞が言った

「宮本大は、昔話が似合わないね。」

の一言の通り、止まらずに突き進みジャズしか見えていない男なのです。

・・・別れて正解だわ、舞ちゃん。

JASSに可能性は残されている。

その日、雪祈はいつものように工事現場でバイト中でした。休憩中携帯が突然鳴りだし、表示された相手の名前を見て雪祈は驚愕するのでした。

「平さん So Blue」

平は緊急事態を迎えていました。So Blueでライブを二日後に控えたカルテットのピアニストが急病で倒れ来日できなくなったと連絡を受けたところだったのです。ついてはトラのピアニストを探してほしいとの要請でした。

電話を取った雪祈に平は事情を話し、出演してみないかと言うのです。ただし、JASSではなく雪祈だけだと。

雪祈はメンバーと話し3時間以内で返事をすると約束し、大の居候する玉田の家に駆け付けます。

玉田の家では大と玉田が牛乳の賞味期限のことで平和に喧嘩中でした。そこで雪祈はSo Blueから雪祈一人に出演オファーがあったことを告げます。抜け駆けだと思われてもしかたない、と話しはじめる雪祈をよそに大は玉田と二人分のチケットを入手します。

深夜のコンビニで譜面を手に入れ、徹夜で練習をして翌日昼からのリハに参加した雪祈はカルテットのメンバーにも無事

「いいと思うよ。」

と本番の参加を認められました。そして雪祈は平に頭を下げあの夜のことを謝ります。そして精一杯やるので今回自分の演奏がよかったら

「JASSに可能性は残されていると言ってください。」

と心から言うのでした。

そして、ステージははじまります。

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音楽漫画 僕のジョバンニ5巻 あらすじとネタバレ

今の彼を、俺にはどうしても放っておけない

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ある日、縁は高校の前で不審な男に出会います。彼は縁に郁未の所在を縁に尋ね、さらに縁を自らのファンだと勘違いして無理やりサインをして去っていくのでした。その不審者は皆川優、4巻で名前だけ出てきたもう一人の天才少年です。

無理やり鞄にサインをされた縁は怒り心頭で、練習場所で鉄雄相手に怒りをぶちまけます。

鉄雄は縁の怒りにはお構いなしでカルミナ・コンに向けて予選の課題曲も決まり、気合が入っているところを見せます。さらに皆川優が以前、鉄雄が金、銀該当なして銅賞をとったコンクールの有力候補だったことを思い出し、雪辱戦だとばかりますますやる気が漲るのでした。

そんな鉄雄に百合子は、ある事実を告げます。

「カルミナコンの予選の曲、郁未とかぶってる。」

「同じ曲を、橘郁未も弾く。」

偶然だな、とかわす鉄雄、百合子は続けてその場にいた哲郎に、

「郁未の元に出入りしているのは本当か?」

と聞きます。鉄雄は百合子が、哲郎が郁未に情報を流していることを疑っていると感じ、すべて偶然だ、と言い募りますが、百合子は、鉄雄と郁未の間にこの手の偶然が多いことを指摘します。公園で偶然会ったこと、鉄雄の出た東コンに郁未も出たこと。百合子は哲郎に

「お前が弁解するなら、お前の言葉を信じる。」

と言います。哲郎はそれに対し、

「郁未と会っていたのは本当だ。」

と告げます。しかし、

「郁未に鉄雄の情報を流したりはしていない。絶対に。」

とも言いました。しかし哲郎はもう一つ、鉄雄に告げることがありました。

「俺、郁未のメンタルトレーナーになろうと思う。」

「今の郁未を、俺はどうしても放っておけない。」

もう一人の天才・・・チェロとなら、どこへでも行け

鉄雄は自分がいると哲郎がやりづらいと思い、居候していた哲郎の家を出ます。自分の中の醜い感情を出してしまうことも、ため込んでおかしな方向に行ってしまうことも、両方を恐れる鉄雄。そんな鉄雄に縁はこっそり囁きます。

「誰にも言わないから、言ってみ。」

「あいつ、俺の大事なもの全部、持ってっちゃうのな・・・っていう。」

さらに続けて、醜い感情なくして音楽やるつもりだったのかよ、音楽は全部の感情を許容してくれる。

「だから私は音楽が好きだよ。」

そんな縁に鉄雄は

「俺と一緒に走って。最後まで。」

と頼み、縁は

「任せろ!」

と請け負います。それを影から見ていた百合子は密かに安堵するのでした。

百合子は鉄雄に、カルミナコンまで厳しく指導していくことを告げ、それを受け鉄雄は百合子に向かって

「宜しくお願いします。」

と頭を下げるのです。そんな鉄雄を目にした百合子の表情は我とは知らず和み、やはり蘇我百合子はこの唯一の弟子に師匠として並々ならぬ愛情を注いでいることが見て取れるのでした。

そしてカルミナコン当日、二人の天才と称される郁未と皆川優の邂逅に、参加者がざわめくのでした。橘郁未以外には眼中にないという態度を周囲に見せつける皆川に対し郁未は

「誰だ?」

と問いかけてしまい、皆川の態度にムカつきを抑えられない縁は密かに(でもないか)留飲を下げるのでした。郁未の心にあるのはあくまで鉄雄一人だったのです。しかしそれと同時に縁は、「皆川のようなタイプは強い」と見切っており、それを鉄雄に告げます。

トップバッターの皆川の演奏がはじまり、それとともに皆川の独白が流れます。無理やり習わされたピアノのレッスンから逃げ出した幼い皆川の目に映ったチェロ。その瞬間、彼はこの楽器を愛せる、この楽器となら自由になれる、なぜならチェロを愛しているから。

しかし、皆川は思ったほど自由になれなかったのです。皆川の目は郁未に向けられるようになりました。郁未となら自由になれる、そう思ったのです。

一方哲郎は、郁未のマネージャーの鷺とカルミナコンに出かけます。そこで鷺の持つ「郁未に頼まれた荷物」を目にしてしまいます。それは「東村山興信所」と名の入った封筒でした。

俺にとっての天才は、手塚鉄雄なんです。

出番待ちの縁は、皆川と再び出会います。そこで縁は皆川から

「思い出した。成田縁でしょ。僕と同じく神童と言われてた。」

と言われます。今はコンクール嫌いの縁も昔はコンクールで金賞を取りまくっていたのでした。カルミナコンには出場ではなく伴奏であると言う縁に皆川は、コンクールから逃げたと決めつけます。その皆川に縁は

「私は自分の大切なものを大切にしているだけ。」

と告げ、その場を去ります。落ち込んだ縁は鉄雄の元に行き

「死ぬのなら、どんな日がいい?」

と問いかけるのでした。続けて鉄雄は、

「もう死ぬって、どうしようもなくって、ここでおしまいってわかってたら、最後くらい笑いながらこんな晴れた日に、踊りながら死ぬのも悪くない。」

鉄雄の出番中、伴奏しながら縁は、鉄雄のそういう強さは嫌いじゃない、と思い返すのでした。そしてそれを客席で聴く郁未の表情がすべてを物語っているようだったのです。

郁未のマネージャーの鷺は、鉄雄の演奏を以前と全然印象が違う、チェリストはいろいろな表現ができてすごいと肯定的に評価しますが、哲郎はそれは鉄雄がまだ迷いのなかにいるからだと評します。身内だから厳しいという鷺に哲郎は、鉄雄を信じているからだと、自分にとっての天才は蘇我百合子でも橘百合子でもなく、手塚鉄雄だと言うのでした。

お兄ちゃんはつらいよ!

哲郎は百合子に、「お前は抱え込みすぎだ。」と言われますが、それに対して哲郎は「お兄ちゃんだからね。」と答えます。お兄ちゃんと言えばブルージャイアントの雅兄が思い浮かびます。初任給で弟の大に店で一番いいサックス買ってあげるお兄ちゃん、たった13歳で母親を亡くしてから弟妹の面倒を見てきたザ・兄貴です。哲郎は雅兄とは違って、自分もチェロをやっていて今も音楽家のサポートを生業としているだけあってその目は厳しいです。ただ、厳しい分確かな目で鉄雄の将来を信じているようです。さらに、郁未のメンタルトレーナーとなることである意味鉄雄の敵側についてしまった哲郎は、郁未に対してもお兄ちゃんなのですね。もっとも郁未はそれをまったく認めていませんが。

気分はグルービーの憲二と大将もお兄ちゃんですが、妹のかおりと麻美は兄貴を完全に舐めてるからな。

タランテラ

鉄雄と郁未がカルミナコンで弾く曲、ダーウ”ット・ポッパーの「タランテラ」

タランテラ自体はイタリアの舞曲で、ダーウ”ット・ポッパーのタランテラは鉄雄が縁と演るならこの曲、と選曲したものです。

D.Popper – Tarantella/Daniil Shafran (1950) クリックでyoutube

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ポッパー:タランテラ



夜間でも安心のサイレントチェロ

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BLUE GIANT8巻(ブルージャイアント)あらすじとネタバレ

全力で自分をさらけ出す

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雪祈は人を探しています。顔しか知らない人です。JASSがライブを演っている店を回って、その人が来たら教えてもらえるよう頼んでいます。その人に会わないと、始まらない何かが雪祈にはあるようです。

ある夜、雪祈はいつものように工事現場の誘導のバイトをしています。そこで、その人らしい人を見つけるのでした。その人は豆腐店の名前が入った軽トラに乗っていました。雪祈はバイトを終えてから地図アプリを頼りにその豆腐屋を訪ねます。たどり着いたのは深夜1時過ぎ、それから2時間ほど待って店のシャッターを開けた人は、雪祈の探していたその人でした。

まだ寒い早朝から黙々と仕事をするその人を雪祈は見つめています。

「こういう人が、JASSのライブを聴きに来てくれている。」

その人は、先日雪祈がライブ後にサインを断った男性でした。仕事が一段落するのを見計らい、雪祈は男性に声をかけ、自分のサインを渡します。

「次はもっと、いい演奏しますので。」

そういって頭を下げるのでした。

雪祈はSo Blueの平に言われた言葉が心底堪えていました。本当のソロができないこと、音楽以前に人として駄目であることを突き付けられ、自分を変え本当のソロを演りたいと思います。その一歩として無下にサインを断った男性にサインを渡し、次のもっといい演奏を約束しないと始まらなかったのです。

雪祈が悩んでいるらしいことは、始終一緒に合わせている大や玉田にも伝わっています。雪祈は何かを言ったわけではありませんが、音で伝わってしまうのです。

雪祈は、自宅を酒を持って訪ねてきた大に

「俺のソロ、どう思うよ。」

と聞きます。その雪祈の問いに大は

「話になんねえな。」

「俺はサックスを吹く時はいつでも、世界一だと思って吹いてる。」

「次元が違い過ぎて話になんねえ。」

と、ざっくり切り捨てるのでした。

しかし、大は雪祈を信じていたのです。

壁を破れなければそこで終わり。でも、あいつは破る。

So Blueの平は悩んでいました。仕事でブッキングした大物プレイヤーは昔の面影はなく、客の入りも今一つ。本人にもやる気は見られません。落ち目であることもわかっていない様子です。

平は雪祈に言い過ぎたと後悔するのです。仕事の合間にセミプロのバンドを何バンドか聴いてみて、JASSは面白いバンドだったと思い返します。面白いと思ったからこそ、率直過ぎることを言ってしまったのです。

ある日、平は立ち寄ったライブハウスで大を見かけます。途中で退席した大を追い、声をかけます。平は肩書を隠し、JASSのライブを聴いたこと、一杯奢らせてほしいと大に申し出ます。ところが、そこで少々おかしな誤解が生じてしまうのです。

平が大を連れてきた行きつけのスナックのママが心だけ女性のトランスジェンダーの男性であったことで、大は平がゲイだと勘違いします。

平は気になっていた雪祈の近況を聞きます。そこで大は、平が雪祈を狙っていると思い込み、

「雪祈は彼女いますよ。100人、いやもっと、メチャメチャモテるんで、女に。」

勘違いなのですが、大なりに雪祈を守るつもりで滅茶苦茶なことを言います。ここは妹の彩花じゃありませんが

「ちっちゃい兄ちゃん、ほんとバカだ!」

と言いたくなりますが、勿論平はそんなことは言わず、それどころか気にも留めず

「ピアノ、弾いてる?」

と聞きました。大は、今雪祈が大きな壁に突き当たり苦しんでいることを話します。

「壁を破れなかったら終わりです。」

誰も助けられない雪祈の悩みを思っての言葉です。

「でも、雪祈は破るでしょうね。」

大は別れ際、いつか必ず、JASSでSo Blueに出演するから見に来てください、と平に言います。

そんなある日のライブ、雪祈はまだ苦しんでいます。どうしても手グセのフレーズやコード進行の枠組みの中で考えたフレーズしか出てこないのです。平と会ってから数週間、練習しても練習しても自分をさらけ出すソロが弾けないのです。ダメであることに失望しながら自分のソロを終え、大に渡します。

ところが、大は吹きません。吹かないどころかサックスから手を放し、腕組みしてしまいます。次も雪祈のソロです。雪祈は渾身のソロを弾きます。考えるな、考えるな!

これでどうだ?と大を見ますが、大は相変わらずサックスから手を放したまま雪祈を煽ります。もうやるしかない袋小路に追われた雪祈のソロが再び続きます。両手でのワンノートの連打からはじまるソロ、考えずに自分をさらけ出している様が、絵だけで伝わってきます。そこに大の掛け声と観客の歓声、そして大のソロが割って入ります。玉田はその雪祈のソロが今までで一番良かったと感じながらサポートするのでした。

もっといい音が出るように

雪祈の最高のソロ、そのライブを観に来た人が楽屋に訪ねてきました。21ミュージックの五十貝と名乗るその人は、ジャズの時代が終わったと言われている今、ジャズを売ろうと思っていると言い、通るかどうかわからないがCDリリースの企画に出すからとJASSの音源を求めるのでした。

五十貝は21ミュージックのジャズ部に所属し、ジャズを売ろうと奔走していますが、力を入れたミュージシャンのCDでさえ初版1,500枚しかリリースできず、上からはジャズはわかりにくく売れないからリスクのない音楽を求められています。それでも負けずに日々戦い続けます。

雪祈はCDリリースが月旅行だとしたら、五十貝の話は熱海や品川までで月には遠すぎるというのですが、大は

「月まで行こうぜって言いに来たんだべ、あの人は。」

と、ほんの少しでも月に近づいたことを示唆します。

年末になり、冬休みを迎えた雪祈と玉田はそれぞれ実家に帰省します。一人になった大はバイト代も入り少しだけリッチな年末年始を過ごせることになる・・・はずでした。

サックスのメンテナンス代を払ったあとの全財産の入った財布を落とし、の日々を送るはめになるのでした。大晦日もいつもの練習場所でひたすら練習する大のもとに、家族からの電話が入ります。

一人で迎えた新年、大は通りかかった神社で初詣をします。次にバイト代が入るまでの残り少ない財産から100円を賽銭箱に入れて

「もっといい音が出るように。」

と祈るのでした。

うちのテナーを見れば、全部わかるんで

冬休みも終わり、雪祈も玉田も東京に戻ってきて再び練習の日々です。

そして、JASSに初めてジャズフェスの出演依頼がきました。町おこしとして開催される小さなジャズフェスですが、メインの出演者が名の通った「アクト」というバンドで、JASSの出番はアクトの直前です。

出演者の説明会と親睦会を兼ねた集まりに参加するため、雪祈は柴又駅に降り立ちます。ジャズフェスの名前はカツシカジャズ。葛飾区で実際にジャズフェスをやっているかどうか調べてみましたが、見当たらないようなので架空のジャズフェスの模様です。

会場にはアクトのピアニストの天沼がいて、雪祈に声をかけてきました。天沼は評論はラジオ等でも活動している著名なピアニストです。

雪祈はJASSをカツシカジャズに推薦したのは天沼だと知りますが、どこでJASSのライブを観たのか聴くと天沼は

「聴いたことはない。」

と答えるのです。知り合いに若くて元気のいいバンドを教えてもらった、それがJASSだったというわけでした。

少し鼻白む雪祈でしたが、天沼はJASSはどのような音楽をやっているか問い、「オリジナル中心のジャズ。」と答える雪祈に続けて、それだけでは曖昧すぎて何も伝わらない、アクトはジャズを数少ないジャズファンに届けるため幅広い活動をしてマイナーなジャズが受け入れられる努力をしてきた。JASSは何を伝えようとしているのだ、と畳みかけます。言っていることは正論ではありますが、JASSを若さだけのバンドと蔑んで絡んでいるようにも見えます。

それに対して雪祈は、

「一人でも多くの人に自分たちの音楽を聴いてもらうために出演する。」

と返し、

「うちのテナーを見れば、全部わかるんで。」

そう言い残し会場を去りました。

それにしても玉田の成長っぷりときたら

8巻は雪祈り中心に話が進んでおり、その分主人公である大の影がなんとなく薄いのですが、玉田の成長が地味にすごいのです。初心者ですから伸びしろは当然たっぷりあるのですが、雪祈のソロを聴いて「苦しそう」と思いながら叩いたり、また雪祈が壁を破ったライブでは「今までで一番よかった。」と感じたり、音をしっかり聴きながら叩いているし、音の裏側にあるものも感じ分けています。

努力が実っていることもありますが、大の音を聴いてまったく縁のなかったジャズをやってみたいと思うあたり、ジャズと相性がよく耳もよかったのだと思います。

玉田は大や雪祈のようにジャズプレイヤーとして生活していこうとは思っていません。いずれは大学に戻り就職するつもりです。そのうえで今はドラムに打ち込む(ドラムだけに)ことに決め大学を留年させてほしいと親を説得するために年末に仙台まで帰郷します。

ブルージャイアントの各巻には巻末に「bonus track」というサイドストーリーが掲載されています。その大半が恐らく世界を股にかけるサックスプレイヤーとなった大の無名時代の縁の人のインタビューという形式になっています。インタビューを受ける人の職場や自宅等でのインタビューです。

玉田は7巻に出演します。会社の会議室のようなところで、玉田はジャケットにノーネクタイというソフトカジュアルで出てきます。自由な雰囲気の業界に就職したようです。音楽関係の可能性もありますね。もしかしたら21ミュージック?などと思ってみるのも楽しいです。

玉田が8巻でスティックを購入したのがこちら。楽器の事なら石橋楽器!

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