ジャズ

BLUE GIANT1巻(ブルージャイアント)あらすじとネタバレ

迷わず突き進む。宮本大は今までで一番新しい主人公かもしれない

購入は画像をクリック

BLUE GIANT(ブルージャイアント)は仙台に住む高校生、宮本大(みやもと だい)がジャズに魅せられ、サックスに魅入られて、ジャズの世界に飛び込み世界一のサックスプレイヤーになると決めて突き進む物語です。ジャズに夢中な同級生の近藤周平(こんどう しゅうへい)に中学卒業記念にジャズライブに誘われて初めてジャズに触れ、一気にジャズにのめりこんでいきます。バスケ部に所属していますが、部活の後に毎日、広瀬川の土手でサックスの練習をします。まったくの独学です。教本すらも使っていません。

高校の同級生にはジャズという音楽の魅力をまったくわかってもらえません。このあたりは、僕のジョバンニの鉄雄の小学生時代と共通するものがあります。大にとってジャズは「熱く激しいもの」なのですが、その魅力をどう伝えればいいかはわかりません。

一方、高校へ入ったらジャズピアノをやると決めていた周平ですが、医者の息子で自らも医者志望の彼は勉強が忙しく、ピアノは高校一年で辞めてしまいます。ある日、久しぶりに家に訪ねてきた大が、あの日からずっとサックスを練習し続けていたことを知ります。周平は大の初めての観客になるのでした。

決してうまくはない大のサックスに引き込まれた周平は、世界一のサックスプレイヤーになるという大に

「俺は世界一の医者になるぞ。」

と告げるのでした。

初めてのライブの後、公園で一人・・・。

ある日、いつもリードを買いにいく楽器屋の店長から、

「決まったから、君のライブ」

と突然の誘いが来ます。店長の小熊は、いつも尋常ではない数のリードを買いにくる大を、高校のブラバン部員だと思っていたのです。が、一人でその量のリードを消費しているのを知り、それだけでは足りず竹でリードを自作したり、どうすればジャズプレイヤーになれるかと質問したりするのを見て、大を面白い子だと思うようになったのです。

初めてのライブ、ライブどころかセッションも出たことがない、譜面も読めない、曲も知らない大は、とにかく自分を出し切ると決めてソロを吹くのでした。

そして・・・。

夜の公園で、一人涙を流します。ジャズの約束事を何一つ知らない大は、途中でステージを下ろされてしまったのです。

けれども、次の日もまた、土手で一人練習する大の姿がありました。めげず、まっすぐにジャズの道を突き進むのです。

あっさりクビになってしまった最初のライブでしたが、大のまれにみる才能と、それすらも上回る情熱に注目していた人もいました。ライブハウスの店長と、バンドのピアニストです。各巻の最後にボーナストラックとして、世界で活躍し恐らく海外在住であろう大の現在を、縁の人達のインタビューという形で垣間見ることができます。1巻ではそのピアニストのインタビューも入っています。大のめちゃくちゃでド素人な演奏に一発で惚れたと語る彼は、そののち一流プレイヤーとなった大と再び共演しているようです。

世界を当然手に入れられると信じている

大は初めから世界に出られることを信じて疑いません。時々は疑ったり自信を失ったりしますが、総じて自分は当たり前に世界一であると信じています。「世界一」は初めから自分の中にあり、それを具体的に形にしていくだけのことなのでしょう。だから小さいことで悩んでいる暇はないのです。

ところで天才サックスプレイヤーといえば、この人もそうですね。「キャバレー」の矢代俊一。彼も自分の世界に出る才能についてだけは、まるで疑っていないようです。ただ性格的にうじうじしやすいところがあるため、ジャズ以外のところでおおいに思い悩むのですが。

サックスと世界一になるという確信と情熱以外に何も持っていない(あと、いい家族と親友と助けてくれる人はいたな。)大に比べると、俊一は何でも持っています。サックスだけではなくフルートも吹き、裕福な家庭に育ち、幼い頃からピアノとギターを習い、オリジナルも作ります。才能と情熱以外に知識もスキルも十分あります。だからこそ、それらを捨ててたたき上げのしぶとさを身に着けるために、場末のキャバレーで修行をするのです。

何も持っていない大は、ただひたすら突き進みます。捨てるものを何も持っていないのです。俊一が19歳で既にプロでやっていけるレベルであるのに対して、大はまだ素人です。それでも人を魅了することができるのです。

周平は、その大の音を聴いて、自分は世界一の医者になる、と宣言しました。大の中に既にある「世界一」に気づいたのではないでしょうか。

もし、大がここでリードを買っていたら

大は、ブラバン部員が代表で買いに来てる、と楽器店で誤解されるほど大量のリードを消費します。しかもそれでは足りなくて竹でリードを自作します。(まったく使えなかったのですが)

ここで買ったら安かったのにね。

サウンドハウス

D'Addario Woodwinds ( ダダリオウッドウインズ ) / La Voz Tenor Medium RKC10MD テナーサックスリード 10枚入り

D‘Addario Woodwinds ( ダダリオウッドウインズ ) / La Voz Tenor Medium RKC10MD テナーサックスリード 10枚入り

音楽に関わる全ての人が、知っておかないと損をする、楽器、PA機材、何でも安く手に入ります。

でも、大がここでリードを買っていたら、ひろせ楽器の小熊店長からライブの話がくることはなかったでしょうから、これでいいのかも。

2巻はこちら

3巻はこちら

4巻はこちら

5巻はこちら

6巻はこちら

7巻はこちら

8巻はこちら

9巻はこちら



 

 

ジャズ漫画 坂道のアポロン あらすじとネタバレ


坂道のアポロン(6) (フラワーコミックスαフラワーズ) [ 小玉ユキ ]

1960年半ばの長崎県佐世保市を舞台に、ジャズを愛する高校生の青春を描いた小玉ユキの傑作漫画です。
父親の仕事の都合で佐世保の親戚の家に預けられることになり、横須賀から転校してきた西見薫は転校先の高校にも下宿先である親戚の家にもなじめず、孤独な毎日を送っていました。そんなある日、番長の川渕千太郎と出会います。ジャズドラマーである千太郎に引っ張られ、クラシックピアノしか知らなかった薫もジャズにのめりこんでいきます。ジャズを通して深まっていく二人の友情の物語です。さらに、千太郎の幼馴染の迎律子、律子の父でベーシストの迎勉、大学生でトランぺッターの桂木淳一など、個性的な登場人物との関わりのなかで成長していく二人の姿を描いています。

人と壁を作り、一人でいいと思っていた薫が、音を重ねている楽しさを知り初めて笑顔を見せるセッションのシーンから薫の笑顔のカットが増えていきます。

優等生で医大志望の薫(ボン)とバンカラな一匹狼の千太郎、一見水と油の二人。クラシックしか知らなかった薫が千太郎の導きで初めてジャズという音楽を知り、クラシックとジャズの違い(スイングとは何か、アドリブとは何を弾けばいいのか)お互いの音を重ねて思いのままにセッションする楽しさを知り、灰色だった生活が色鮮やかなものに変わっていきます。
そんな中、薫はいつも二人を優しく見守る同級生の迎律子に恋心を抱くようになります。律子は千太郎の幼馴染で、実家はレコード屋。律子の父はベーシストで、千太郎にジャズを教えた張本人です。千太郎と律子の父、そして律子の家の隣に住む大学生の桂木淳一のトランペットを加えて、三人で迎レコード店の地下でよくセッションをしています。

演奏シーンやジャズについて語る会話のシーンが素晴らしいです。ジャズを知らない人、敬遠していた人にも興味を持ってもらえそうです。
そして60年代の地方都市の雰囲気も秀逸です

薫は律子が千太郎を好きなことに気づきます。律子が好きだからこそ気づいてしまうのです。一方千太郎は律子の気持ちにまったく気づいていません。千太郎はまだ恋を知らないのです。その千太郎が初めて好きになったのは、上級生の深堀百合香。薫が律子に抱く気持ちと、律子が千太郎に感じる気持ちは一緒なのです。好きだけど気づいてもらえない。相手の気持ちは自分にはなく、別な人を好きである。同じ気持ちだからこそ、より切なさが増します。

さらに百合香が魅かれる相手は律子の隣のケーキ屋の息子、桂木淳一でした。千太郎達が「淳兄」と呼び慕う淳一は、東京の大学に通っていましたが、学生運動にのめり込み挫折して佐世保に戻ってきていました。淳一も百合香を憎からず思うようになります。

いつしか淳一と百合香のことが噂となり、百合香を案じた両親に見合いをさせられそうになります。百合香を将来を慮った淳一は、百合香に別れを告げ東京に戻ることを決意するのです。

一方薫は、顔も覚えていないほど幼い頃に別れた母と再会します。薫の母は小学校しか出ておらず、字もあまり読めません。西見家は比較的裕福だったため嫁として認めてもらえず、薫の祖母に追い出されたのです。それ以降、薫が東京の大学に進学してからも母との交流が続くようになります。

薫と千太郎が仲違いを通して、ジャズをやる上でお互いかけがえのないパートナーと認識するようになった頃、ある出来事があり、千太郎は行方知らずとなってしまいます。

それから10年、東京で医者になった薫のもとに百合香が訪ねてきて、思いがけないことでわかった千太郎の消息を教えてくれました。

千太郎は離島で神父になっていました。それも彼らしく飛び切りファンキーな神父です。教会にはドラムが置いてありました。

本編終了後に発表されたスピンオフ作品も刊行されていますが、最終話のセッションシーンで妊娠中の律子がお腹の子に向かって語り掛けます。

「楽しそうやろ。早く出てきて混ざらんね。」

律子のお腹の子の父親が誰なのか、それは本書でぜひ確かめてください。またベースと初めて出会う律子の父、勉の若かりし日を描いた作品も収録されています。戦時中の出来事です。


坂道のアポロン BONUS TRACK(10)【電子書籍】[ 小玉ユキ ]

キャバレー あらすじとネタバレ


【中古】 キャバレー / 栗本 薫 / 角川書店 [文庫]【ネコポス発送】

キャバレーは栗本薫作のジャズ系ハードボイルド小説です。(注:そんなジャンルは存在しませんよ)栗本作品のうち現代ものに何度も登場する、サックスプレイヤーで作曲家の矢代俊一の若き修行時代を描いています。Wikipediaによると(架空の人物なのにWikipediaに載ってます。かなり細かく作りこまれていて、リアルです。)22歳で「モントルー・ジャズ・フェスティバル(実在の音楽フェス)」に飛び入りでセッションに参加し、観客を総立ちにさせた伝説の持ち主です。この頃はまだ無名だった矢代俊一は一躍有名になり、23歳でレコードデビューを飾ります。

キャバレーはそれより以前、19歳の大学生だった矢代俊一が下町のキャバレー「タヒチ」でジャズ修行をしている時代の物語です。いわば卵の中の天才が卵から孵るお話です。
天才ジャズミュージシャン矢代俊一と、ジャズには縁のない、そのくせ確かな耳だけは持っているヤクザの滝川との交流をメインに、さりげなくジャズの楽曲について解説も入ります。

滝川は自分が殺した男の部屋で見つけたレコードではじめて聴いたジャズが気になり、俊一の演奏するキャバレーでその曲「レフト・アローン」のリクエストを繰り返すようになります。
そしてある日、俊一を席に呼び
「なぜにお前の演奏はレコードと違うのか。」
と聞きます。
下町のキャバレーですからリクエストといえば演歌にムード歌謡、そのような場所でジャズの名曲をリクエストする相手がまさかジャズに対してド素人であるとは思いもしない俊一は滝川の問いを
「お前みたいな若造がジャッキー・マクリーン演ろうなんざ百年早いわ」
と嘲られたと思い
「ジャッキーが聞きたきゃレコード聴きやがれ!俺が出すのは矢代俊一の音だ!」
と啖呵を切ります。
普段は大人しい俊一ですが、かっとなると見境がつかなくなり相手がヤクザであろうがなかろうが、くってかかってしまうのです。

それから数日後、店が終わった早朝、いつもの練習場所である川原で俊一は滝川と再会します。
俊一に対する滝川の態度はうってかわって、まだ子供の俊一に敬語を使い尊敬の念さえ感じさせるものになっていました。
そして俊一は俊一で、滝川がまったくジャズを知らないこと、それでいて俊一の演奏時の気持ちの変化や他のメンバーとの違いなどを正確に言い当てたことに心底驚きます。

滝川が若い頃からジャズに触れる生活をしていたらどうなっていたんだろう、と考えることがあります。
その確かな耳と、ヤクザの世界とはいえ一目置かれる存在であった滝川がジャズを早くに知っていたら、楽器を持っていたら、やはりミュージシャンになっていたかもしれません。

同じ栗本作品で、やはりサックス奏者を主人公とした「死は優しく奪う」にもチョイ役で矢代俊一が出てきます。キャバレーの少しあとです。作中で俊一は、主人公の金井恭平について
「昔知ってたヤクザに似ている。」
と語るシーンがあります。

金井恭平は俊一とは違うタイプのミュージシャンで、骨太で男っぽい、それでいて暖かな音を出します。周囲からもボスと呼ばれ慕われています。確かに滝川と重なる面があります。

滝川がミュージシャンとして俊一と出会っていたら、二人の関係性はまったく違ったものになっていたかもしれません。
それはそれで読んでみたかったような気がします。
単行本の帯のコピ-「若さの残酷、ヤクザの優しさ」がこの作品を一言で表していて切ないです。

映画化、ミュージカル化されました。ミュージカルではサックスプレイヤーではなくタップダンサーに変更されています。おそらくサックスをプロとして吹ける役者が見つからなかったためではないかと思います。ダンサーならミュージカルの役者の本業ですからね。それにバンド入れてしまうと転換とか大変そうですもんね。


[DVD邦]キャバレー [主演:野村宏伸/鹿賀丈史/三原じゅん子/原作:栗本薫/1986年作品]/中古DVD【中古】【P10倍♪5/9(木)20時〜5/21(火)10時迄】


栗本薫・中島梓傑作電子全集13 [ハード・ボイルド]

「キャバレー」とその続編、「黄昏のローレライ」、黄昏のローレライにも登場するサックスプレーヤー金井恭平を主人公とする 「死は優しく奪う」その他数作のハードボイルド小説とエッセイが収録されています。


栗本薫・中島梓傑作電子全集7 [朝日のあたる家]

矢代俊一はこちらにも名前だけ出てきます。日本では作曲家としても名が通るようになってます。ジャズプレイヤーの中では一番有名かもしれません。