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BLUE GIANT8巻(ブルージャイアント)あらすじとネタバレ

全力で自分をさらけ出す

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雪祈は人を探しています。顔しか知らない人です。JASSがライブを演っている店を回って、その人が来たら教えてもらえるよう頼んでいます。その人に会わないと、始まらない何かが雪祈にはあるようです。

ある夜、雪祈はいつものように工事現場の誘導のバイトをしています。そこで、その人らしい人を見つけるのでした。その人は豆腐店の名前が入った軽トラに乗っていました。雪祈はバイトを終えてから地図アプリを頼りにその豆腐屋を訪ねます。たどり着いたのは深夜1時過ぎ、それから2時間ほど待って店のシャッターを開けた人は、雪祈の探していたその人でした。

まだ寒い早朝から黙々と仕事をするその人を雪祈は見つめています。

「こういう人が、JASSのライブを聴きに来てくれている。」

その人は、先日雪祈がライブ後にサインを断った男性でした。仕事が一段落するのを見計らい、雪祈は男性に声をかけ、自分のサインを渡します。

「次はもっと、いい演奏しますので。」

そういって頭を下げるのでした。

雪祈はSo Blueの平に言われた言葉が心底堪えていました。本当のソロができないこと、音楽以前に人として駄目であることを突き付けられ、自分を変え本当のソロを演りたいと思います。その一歩として無下にサインを断った男性にサインを渡し、次のもっといい演奏を約束しないと始まらなかったのです。

雪祈が悩んでいるらしいことは、始終一緒に合わせている大や玉田にも伝わっています。雪祈は何かを言ったわけではありませんが、音で伝わってしまうのです。

雪祈は、自宅を酒を持って訪ねてきた大に

「俺のソロ、どう思うよ。」

と聞きます。その雪祈の問いに大は

「話になんねえな。」

「俺はサックスを吹く時はいつでも、世界一だと思って吹いてる。」

「次元が違い過ぎて話になんねえ。」

と、ざっくり切り捨てるのでした。

しかし、大は雪祈を信じていたのです。

壁を破れなければそこで終わり。でも、あいつは破る。

So Blueの平は悩んでいました。仕事でブッキングした大物プレイヤーは昔の面影はなく、客の入りも今一つ。本人にもやる気は見られません。落ち目であることもわかっていない様子です。

平は雪祈に言い過ぎたと後悔するのです。仕事の合間にセミプロのバンドを何バンドか聴いてみて、JASSは面白いバンドだったと思い返します。面白いと思ったからこそ、率直過ぎることを言ってしまったのです。

ある日、平は立ち寄ったライブハウスで大を見かけます。途中で退席した大を追い、声をかけます。平は肩書を隠し、JASSのライブを聴いたこと、一杯奢らせてほしいと大に申し出ます。ところが、そこで少々おかしな誤解が生じてしまうのです。

平が大を連れてきた行きつけのスナックのママが心だけ女性のトランスジェンダーの男性であったことで、大は平がゲイだと勘違いします。

平は気になっていた雪祈の近況を聞きます。そこで大は、平が雪祈を狙っていると思い込み、

「雪祈は彼女いますよ。100人、いやもっと、メチャメチャモテるんで、女に。」

勘違いなのですが、大なりに雪祈を守るつもりで滅茶苦茶なことを言います。ここは妹の彩花じゃありませんが

「ちっちゃい兄ちゃん、ほんとバカだ!」

と言いたくなりますが、勿論平はそんなことは言わず、それどころか気にも留めず

「ピアノ、弾いてる?」

と聞きました。大は、今雪祈が大きな壁に突き当たり苦しんでいることを話します。

「壁を破れなかったら終わりです。」

誰も助けられない雪祈の悩みを思っての言葉です。

「でも、雪祈は破るでしょうね。」

大は別れ際、いつか必ず、JASSでSo Blueに出演するから見に来てください、と平に言います。

そんなある日のライブ、雪祈はまだ苦しんでいます。どうしても手グセのフレーズやコード進行の枠組みの中で考えたフレーズしか出てこないのです。平と会ってから数週間、練習しても練習しても自分をさらけ出すソロが弾けないのです。ダメであることに失望しながら自分のソロを終え、大に渡します。

ところが、大は吹きません。吹かないどころかサックスから手を放し、腕組みしてしまいます。次も雪祈のソロです。雪祈は渾身のソロを弾きます。考えるな、考えるな!

これでどうだ?と大を見ますが、大は相変わらずサックスから手を放したまま雪祈を煽ります。もうやるしかない袋小路に追われた雪祈のソロが再び続きます。両手でのワンノートの連打からはじまるソロ、考えずに自分をさらけ出している様が、絵だけで伝わってきます。そこに大の掛け声と観客の歓声、そして大のソロが割って入ります。玉田はその雪祈のソロが今までで一番良かったと感じながらサポートするのでした。

もっといい音が出るように

雪祈の最高のソロ、そのライブを観に来た人が楽屋に訪ねてきました。21ミュージックの五十貝と名乗るその人は、ジャズの時代が終わったと言われている今、ジャズを売ろうと思っていると言い、通るかどうかわからないがCDリリースの企画に出すからとJASSの音源を求めるのでした。

五十貝は21ミュージックのジャズ部に所属し、ジャズを売ろうと奔走していますが、力を入れたミュージシャンのCDでさえ初版1,500枚しかリリースできず、上からはジャズはわかりにくく売れないからリスクのない音楽を求められています。それでも負けずに日々戦い続けます。

雪祈はCDリリースが月旅行だとしたら、五十貝の話は熱海や品川までで月には遠すぎるというのですが、大は

「月まで行こうぜって言いに来たんだべ、あの人は。」

と、ほんの少しでも月に近づいたことを示唆します。

年末になり、冬休みを迎えた雪祈と玉田はそれぞれ実家に帰省します。一人になった大はバイト代も入り少しだけリッチな年末年始を過ごせることになる・・・はずでした。

サックスのメンテナンス代を払ったあとの全財産の入った財布を落とし、の日々を送るはめになるのでした。大晦日もいつもの練習場所でひたすら練習する大のもとに、家族からの電話が入ります。

一人で迎えた新年、大は通りかかった神社で初詣をします。次にバイト代が入るまでの残り少ない財産から100円を賽銭箱に入れて

「もっといい音が出るように。」

と祈るのでした。

うちのテナーを見れば、全部わかるんで

冬休みも終わり、雪祈も玉田も東京に戻ってきて再び練習の日々です。

そして、JASSに初めてジャズフェスの出演依頼がきました。町おこしとして開催される小さなジャズフェスですが、メインの出演者が名の通った「アクト」というバンドで、JASSの出番はアクトの直前です。

出演者の説明会と親睦会を兼ねた集まりに参加するため、雪祈は柴又駅に降り立ちます。ジャズフェスの名前はカツシカジャズ。葛飾区で実際にジャズフェスをやっているかどうか調べてみましたが、見当たらないようなので架空のジャズフェスの模様です。

会場にはアクトのピアニストの天沼がいて、雪祈に声をかけてきました。天沼は評論はラジオ等でも活動している著名なピアニストです。

雪祈はJASSをカツシカジャズに推薦したのは天沼だと知りますが、どこでJASSのライブを観たのか聴くと天沼は

「聴いたことはない。」

と答えるのです。知り合いに若くて元気のいいバンドを教えてもらった、それがJASSだったというわけでした。

少し鼻白む雪祈でしたが、天沼はJASSはどのような音楽をやっているか問い、「オリジナル中心のジャズ。」と答える雪祈に続けて、それだけでは曖昧すぎて何も伝わらない、アクトはジャズを数少ないジャズファンに届けるため幅広い活動をしてマイナーなジャズが受け入れられる努力をしてきた。JASSは何を伝えようとしているのだ、と畳みかけます。言っていることは正論ではありますが、JASSを若さだけのバンドと蔑んで絡んでいるようにも見えます。

それに対して雪祈は、

「一人でも多くの人に自分たちの音楽を聴いてもらうために出演する。」

と返し、

「うちのテナーを見れば、全部わかるんで。」

そう言い残し会場を去りました。

それにしても玉田の成長っぷりときたら

8巻は雪祈り中心に話が進んでおり、その分主人公である大の影がなんとなく薄いのですが、玉田の成長が地味にすごいのです。初心者ですから伸びしろは当然たっぷりあるのですが、雪祈のソロを聴いて「苦しそう」と思いながら叩いたり、また雪祈が壁を破ったライブでは「今までで一番よかった。」と感じたり、音をしっかり聴きながら叩いているし、音の裏側にあるものも感じ分けています。

努力が実っていることもありますが、大の音を聴いてまったく縁のなかったジャズをやってみたいと思うあたり、ジャズと相性がよく耳もよかったのだと思います。

玉田は大や雪祈のようにジャズプレイヤーとして生活していこうとは思っていません。いずれは大学に戻り就職するつもりです。そのうえで今はドラムに打ち込む(ドラムだけに)ことに決め大学を留年させてほしいと親を説得するために年末に仙台まで帰郷します。

ブルージャイアントの各巻には巻末に「bonus track」というサイドストーリーが掲載されています。その大半が恐らく世界を股にかけるサックスプレイヤーとなった大の無名時代の縁の人のインタビューという形式になっています。インタビューを受ける人の職場や自宅等でのインタビューです。

玉田は7巻に出演します。会社の会議室のようなところで、玉田はジャケットにノーネクタイというソフトカジュアルで出てきます。自由な雰囲気の業界に就職したようです。音楽関係の可能性もありますね。もしかしたら21ミュージック?などと思ってみるのも楽しいです。

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ロック漫画 気分はグルービー あらすじとネタバレ


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1980年代の茨城県水戸市を舞台に、アマチュアロックバンド「ピテカントロプスエレクトス」通称「ピテカン」のメンバードラムの憲二、キーボードの寿子、ベースの大将、ギターの稲村、ボーカルの奥ちゃんの高校生活を描く、佐藤宏之の代表作。
明るくバカバカしい日常、ロックに対する熱い想い、甘酸っぱかったり情けなかったりの高校生活が、やがてほろ苦いラストへなだれ込みます。
ライブシーンや楽器はリアルで、当時のバンド少年少女は共感したり身につまされたりしていました。
バンド経験者でないと描けない作品だと思います。

物語は高校一年の武藤憲二が楽器店でドラムセットを売るところからはじまります。母親からドラムを反対されたためです。売るまえにスタジオを借りてたたき納めをする憲二、それを聴いていたのが同じクラスの風紀委員長、友永寿子です。
寿子は自分がキーボードを弾いているバンド、ピテカントロプス・エレクトスのドラマーとして憲二をスカウトします。
一度は断ったものの、やはりロックがやりたい憲二はピテカンに加入します。憲二は知らなかったのですが、実はピテカンとは、S&Nコンテスト(east&westと思われる。)で全国優勝したバンドだったのです。

物語は基本的に一話完結で、バンドに全く関係のない回も多くあります。80年代の、のんびりとした高校生活、背伸びして酒も煙草も当たり前にやっていた自由な雰囲気がよく出ています。そして憲二と寿子はやがて恋仲となるのでした。

S&Nコンテストを控えたある日、ピテカンOBでプロのベーシストのクニさんが修行先のイギリスから帰国します。ピテカンが練習しているスタジオを訪ねたクニさんは、

「リズムすら満足にとれないくせによ。」

と、憲二の買ったばかりのシンセドラム(パールのシンカッション。現在中古で15万くらいです。)を取っ払い、スネア一つで超絶技巧を見せつけます。

パールのシンカッション。いわゆるシンセドラム

「シロートは機械に頼る。」

と言われ、落ち込みながら憲二は発奮して練習します。クニさんの言うことは本当だと感じたのです。何をやっても長続きしない、辛抱が足りないと言われ続けた憲二は、こうしてドラムに、ロックにのめりこんでいきます。

ライブとリハ、合宿、コンテストとバンドマンの日々、さらに文化祭、修学旅行、クラスマッチ、クリスマスにお正月にバレンタインと高校生の青春の日々を送り、

やがてピテカンのメンバーは将来についてそれぞれが考えるようになり、弁護士を目指すベースでバンマスの大将が、受験でバンドを辞めると言い出します。(禁断症状が出て数日後に復帰)普段の楽しい高校生活との対比、やがてやってくる大人になる日に向けて、彼らも成長していきます。

稲村はリスペクトするブルースシンガー、本間のおっちゃんと出会います。本間のおっちゃんは一曲だけヒットを飛ばしたシンガーですが、今は仕事がなく流しでもなんでもやり日銭を稼いでいます。プロでやっていきたい稲村はおっちゃんに弟子入り志願し、家出して関西のキャバレーで一緒に演奏しています。客が誰も聴いていない、リクエストがあれば演歌でもやる、やりたい曲はできない、それでも稲村は

「好きなことをやるため。」

と言い、おっちゃんは

「誰も聴かないのが当たり前のこの場所で、誰かが自分の歌を聴いて感動してくれたら、歌い手冥利につきる。」

と、憲二に語ります。

この辺り、前述のキャバレーにも通じるものがあります。

そんな中、憲二はある同じ夢を見るようになります。

「街はずれにあるトンネルを抜けたところに広場があり、大勢の人が歌い、踊り、楽器をかき鳴らし、それはもう楽しくて・・・。」
その夢が伏線となり、ラストシーンで憲二は夢を現実にするための道を行くことになります。以下ネタバレです。

憲二の背中を押したのは、ドラムに反対していた母親でした。憲二はミュージシャンとして稲村と本間のおっちゃんとドサ廻りの旅に出ます。寿子とは別れを選びます。そのラストの持つあるリアリティのため、読者はいつまでも彼らの未来を追ってしまうのです。

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