ドラム

BLUE GIANT9巻(ブルージャイアント)あらすじとネタバレ

初めてのジャズフェス、3人で圧倒

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JASSが初めて出演するジャズフェス「カツシカジャズ」の打ち合わせからTake Twoに戻ってきた雪祈は非常に怒っています。アクトの天沼に若さだけのバンドと決めつけられた腹立ちです。雪祈は大と玉田に、アクトに勝つ!と宣言したことを話します。ビビる玉田に喜ぶ大、3人は当日に向けて走り出すのでした。ちなみに大は本当に走っています。それぞれ個人練習に打ち込む雪祈と玉田のカットの後、サックスを持たずに走り込みをする大のシーンが描かれます。以前雪祈に「強い音を出せ」と言われたときも大は走り、泳いでいました。

カツシカジャズ当日、JASSのリハを耳にした天沼の評価は徐々に「これは、ありじゃないか?」に変わっていきました。

「ピアノ、上手いな。」

「サックスは野太い音だね。」

「ドラムは、まあまあか。」

ドラム、まあまあなんですよ。So Blueの平には初心者と見抜かれてた玉田が、それから幾らもたたないうちに大や雪祈を支えるドラマーkとして「まあまあ」の評価を得るのですから、これってすごいです。

ただし、本番前までの天沼の評価は「なかなかいいバンド」まで好転したものの、やはり若い後輩バンドとして下に見る気持ちは消えないようでした。自分達が盛り上げるから失敗など気にせず演っていいと言う天沼に雪祈が再びムカつきだしたのを見た大は、天沼に元気に自己紹介と挨拶をし

「いつも通り全力全開で盛り上げます。ですので、天沼さん達も頑張ってください。」

と、挑発するのでした。

JASSのステージは大のソロではじまります。初っ端から全開で飛ばす大の音量のリハとのあまりの違いにPAさん焦りますが、音圧は下げない方向で必死にベストポジションを探ります。ステージ袖で見守る天沼の表情が変わり始めます。3分ほど続いた大のソロに雪祈と玉田が飛び込みます。そして雪祈のソロ、壁を完全に乗り越え考えないプレイをしている雪祈とノッている観客を認めた大は玉田に囁きます。

「ソロやっぺ!!」

玉田の初ソロは、バスドラのみの連打からはじまりました。熱いソロを叩き出す玉田とそれを見守る天沼の表情、観客のノリ、JASSは3人で場を圧倒したのです。曲終わりに大がメンバー紹介をします。玉田を紹介した時に、その玉田のスティックを握った手をつかみ高々と掲げたのは雪祈でした。

ステージ袖に戻ってきたJASSの3人に天沼は惜しみない拍手を送り、握手を求めステージへと出ていきます。そこで天沼は熱いプレイを繰り広げそれはアクトの他のメンバーにも伝染し、大人のプロとしての演奏で観客を沸かせるのでした。

この玉田のソロからアクトの演奏までが一話に納められていますが、一話を通して文字が一切なく絵だけで表現されています。一番音が鳴っている場面で直接的な音の表現がまったくないのです。台詞ももちろんありません。この一話、最高にかっこいいです。

次の一話で描かれる大の仙台の家族の話もとてもいいです。残された家族がそれぞれ自分の持ち場で大の話をする、それだけなのですがストーリー全体に厚みを与えています。ちなみに彩花は、由井先生にフルートを習っています。大に贈られたフルートです。

ある日、仙台から三輪舞が大を訪ねてきました。突然のことにびっくりする大に舞は

「お台場に連れて行って。」

と言います。

二人は久しぶりにデートをします。東京へ来てから一年、ジャウとバイト三昧だった大にとって初めてのお台場で案内などはとてもできませんが、お互いの近況を話しながら観光してまわります。大は、東京で色々なことがあったこと、それでも舞のことは忘れたことがないと話します。

二人は観覧車に乗ります。そこで大は舞から

「好きな人ができました。」

と告げられます。すぐには言葉を返せない大でしたが、続く舞の言葉に一年もほとんど連絡をとらず放っておいた自分を省みるのでした。

別れ際、舞は

「私、疑ったことないんだ。1ミリも。」

「宮本大が、世界一のサックスプレーヤーになるの。」

いつか、世界一の大のサックスを聴きに行くと言い残して舞は仙台に帰ります。

So Blueのステージに立つ!

舞との別れは大にとって想像以上のショックを与えました。大はそれを悟られまいと普段通りに振舞っていたのですが、大の出す音に現れていたため雪祈にも玉田にも気づかれていました。それを知った大は、気持ちがすべて伝わってしまうジャズはやはりすごい、と感じ改めて目標として

「So Blueのステージに立つ。」

と宣言します。舞との最後のデートで舞が言った

「宮本大は、昔話が似合わないね。」

の一言の通り、止まらずに突き進みジャズしか見えていない男なのです。

・・・別れて正解だわ、舞ちゃん。

JASSに可能性は残されている。

その日、雪祈はいつものように工事現場でバイト中でした。休憩中携帯が突然鳴りだし、表示された相手の名前を見て雪祈は驚愕するのでした。

「平さん So Blue」

平は緊急事態を迎えていました。So Blueでライブを二日後に控えたカルテットのピアニストが急病で倒れ来日できなくなったと連絡を受けたところだったのです。ついてはトラのピアニストを探してほしいとの要請でした。

電話を取った雪祈に平は事情を話し、出演してみないかと言うのです。ただし、JASSではなく雪祈だけだと。

雪祈はメンバーと話し3時間以内で返事をすると約束し、大の居候する玉田の家に駆け付けます。

玉田の家では大と玉田が牛乳の賞味期限のことで平和に喧嘩中でした。そこで雪祈はSo Blueから雪祈一人に出演オファーがあったことを告げます。抜け駆けだと思われてもしかたない、と話しはじめる雪祈をよそに大は玉田と二人分のチケットを入手します。

深夜のコンビニで譜面を手に入れ、徹夜で練習をして翌日昼からのリハに参加した雪祈はカルテットのメンバーにも無事

「いいと思うよ。」

と本番の参加を認められました。そして雪祈は平に頭を下げあの夜のことを謝ります。そして精一杯やるので今回自分の演奏がよかったら

「JASSに可能性は残されていると言ってください。」

と心から言うのでした。

そして、ステージははじまります。

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BLUE GIANT8巻(ブルージャイアント)あらすじとネタバレ

全力で自分をさらけ出す

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雪祈は人を探しています。顔しか知らない人です。JASSがライブを演っている店を回って、その人が来たら教えてもらえるよう頼んでいます。その人に会わないと、始まらない何かが雪祈にはあるようです。

ある夜、雪祈はいつものように工事現場の誘導のバイトをしています。そこで、その人らしい人を見つけるのでした。その人は豆腐店の名前が入った軽トラに乗っていました。雪祈はバイトを終えてから地図アプリを頼りにその豆腐屋を訪ねます。たどり着いたのは深夜1時過ぎ、それから2時間ほど待って店のシャッターを開けた人は、雪祈の探していたその人でした。

まだ寒い早朝から黙々と仕事をするその人を雪祈は見つめています。

「こういう人が、JASSのライブを聴きに来てくれている。」

その人は、先日雪祈がライブ後にサインを断った男性でした。仕事が一段落するのを見計らい、雪祈は男性に声をかけ、自分のサインを渡します。

「次はもっと、いい演奏しますので。」

そういって頭を下げるのでした。

雪祈はSo Blueの平に言われた言葉が心底堪えていました。本当のソロができないこと、音楽以前に人として駄目であることを突き付けられ、自分を変え本当のソロを演りたいと思います。その一歩として無下にサインを断った男性にサインを渡し、次のもっといい演奏を約束しないと始まらなかったのです。

雪祈が悩んでいるらしいことは、始終一緒に合わせている大や玉田にも伝わっています。雪祈は何かを言ったわけではありませんが、音で伝わってしまうのです。

雪祈は、自宅を酒を持って訪ねてきた大に

「俺のソロ、どう思うよ。」

と聞きます。その雪祈の問いに大は

「話になんねえな。」

「俺はサックスを吹く時はいつでも、世界一だと思って吹いてる。」

「次元が違い過ぎて話になんねえ。」

と、ざっくり切り捨てるのでした。

しかし、大は雪祈を信じていたのです。

壁を破れなければそこで終わり。でも、あいつは破る。

So Blueの平は悩んでいました。仕事でブッキングした大物プレイヤーは昔の面影はなく、客の入りも今一つ。本人にもやる気は見られません。落ち目であることもわかっていない様子です。

平は雪祈に言い過ぎたと後悔するのです。仕事の合間にセミプロのバンドを何バンドか聴いてみて、JASSは面白いバンドだったと思い返します。面白いと思ったからこそ、率直過ぎることを言ってしまったのです。

ある日、平は立ち寄ったライブハウスで大を見かけます。途中で退席した大を追い、声をかけます。平は肩書を隠し、JASSのライブを聴いたこと、一杯奢らせてほしいと大に申し出ます。ところが、そこで少々おかしな誤解が生じてしまうのです。

平が大を連れてきた行きつけのスナックのママが心だけ女性のトランスジェンダーの男性であったことで、大は平がゲイだと勘違いします。

平は気になっていた雪祈の近況を聞きます。そこで大は、平が雪祈を狙っていると思い込み、

「雪祈は彼女いますよ。100人、いやもっと、メチャメチャモテるんで、女に。」

勘違いなのですが、大なりに雪祈を守るつもりで滅茶苦茶なことを言います。ここは妹の彩花じゃありませんが

「ちっちゃい兄ちゃん、ほんとバカだ!」

と言いたくなりますが、勿論平はそんなことは言わず、それどころか気にも留めず

「ピアノ、弾いてる?」

と聞きました。大は、今雪祈が大きな壁に突き当たり苦しんでいることを話します。

「壁を破れなかったら終わりです。」

誰も助けられない雪祈の悩みを思っての言葉です。

「でも、雪祈は破るでしょうね。」

大は別れ際、いつか必ず、JASSでSo Blueに出演するから見に来てください、と平に言います。

そんなある日のライブ、雪祈はまだ苦しんでいます。どうしても手グセのフレーズやコード進行の枠組みの中で考えたフレーズしか出てこないのです。平と会ってから数週間、練習しても練習しても自分をさらけ出すソロが弾けないのです。ダメであることに失望しながら自分のソロを終え、大に渡します。

ところが、大は吹きません。吹かないどころかサックスから手を放し、腕組みしてしまいます。次も雪祈のソロです。雪祈は渾身のソロを弾きます。考えるな、考えるな!

これでどうだ?と大を見ますが、大は相変わらずサックスから手を放したまま雪祈を煽ります。もうやるしかない袋小路に追われた雪祈のソロが再び続きます。両手でのワンノートの連打からはじまるソロ、考えずに自分をさらけ出している様が、絵だけで伝わってきます。そこに大の掛け声と観客の歓声、そして大のソロが割って入ります。玉田はその雪祈のソロが今までで一番良かったと感じながらサポートするのでした。

もっといい音が出るように

雪祈の最高のソロ、そのライブを観に来た人が楽屋に訪ねてきました。21ミュージックの五十貝と名乗るその人は、ジャズの時代が終わったと言われている今、ジャズを売ろうと思っていると言い、通るかどうかわからないがCDリリースの企画に出すからとJASSの音源を求めるのでした。

五十貝は21ミュージックのジャズ部に所属し、ジャズを売ろうと奔走していますが、力を入れたミュージシャンのCDでさえ初版1,500枚しかリリースできず、上からはジャズはわかりにくく売れないからリスクのない音楽を求められています。それでも負けずに日々戦い続けます。

雪祈はCDリリースが月旅行だとしたら、五十貝の話は熱海や品川までで月には遠すぎるというのですが、大は

「月まで行こうぜって言いに来たんだべ、あの人は。」

と、ほんの少しでも月に近づいたことを示唆します。

年末になり、冬休みを迎えた雪祈と玉田はそれぞれ実家に帰省します。一人になった大はバイト代も入り少しだけリッチな年末年始を過ごせることになる・・・はずでした。

サックスのメンテナンス代を払ったあとの全財産の入った財布を落とし、の日々を送るはめになるのでした。大晦日もいつもの練習場所でひたすら練習する大のもとに、家族からの電話が入ります。

一人で迎えた新年、大は通りかかった神社で初詣をします。次にバイト代が入るまでの残り少ない財産から100円を賽銭箱に入れて

「もっといい音が出るように。」

と祈るのでした。

うちのテナーを見れば、全部わかるんで

冬休みも終わり、雪祈も玉田も東京に戻ってきて再び練習の日々です。

そして、JASSに初めてジャズフェスの出演依頼がきました。町おこしとして開催される小さなジャズフェスですが、メインの出演者が名の通った「アクト」というバンドで、JASSの出番はアクトの直前です。

出演者の説明会と親睦会を兼ねた集まりに参加するため、雪祈は柴又駅に降り立ちます。ジャズフェスの名前はカツシカジャズ。葛飾区で実際にジャズフェスをやっているかどうか調べてみましたが、見当たらないようなので架空のジャズフェスの模様です。

会場にはアクトのピアニストの天沼がいて、雪祈に声をかけてきました。天沼は評論はラジオ等でも活動している著名なピアニストです。

雪祈はJASSをカツシカジャズに推薦したのは天沼だと知りますが、どこでJASSのライブを観たのか聴くと天沼は

「聴いたことはない。」

と答えるのです。知り合いに若くて元気のいいバンドを教えてもらった、それがJASSだったというわけでした。

少し鼻白む雪祈でしたが、天沼はJASSはどのような音楽をやっているか問い、「オリジナル中心のジャズ。」と答える雪祈に続けて、それだけでは曖昧すぎて何も伝わらない、アクトはジャズを数少ないジャズファンに届けるため幅広い活動をしてマイナーなジャズが受け入れられる努力をしてきた。JASSは何を伝えようとしているのだ、と畳みかけます。言っていることは正論ではありますが、JASSを若さだけのバンドと蔑んで絡んでいるようにも見えます。

それに対して雪祈は、

「一人でも多くの人に自分たちの音楽を聴いてもらうために出演する。」

と返し、

「うちのテナーを見れば、全部わかるんで。」

そう言い残し会場を去りました。

それにしても玉田の成長っぷりときたら

8巻は雪祈り中心に話が進んでおり、その分主人公である大の影がなんとなく薄いのですが、玉田の成長が地味にすごいのです。初心者ですから伸びしろは当然たっぷりあるのですが、雪祈のソロを聴いて「苦しそう」と思いながら叩いたり、また雪祈が壁を破ったライブでは「今までで一番よかった。」と感じたり、音をしっかり聴きながら叩いているし、音の裏側にあるものも感じ分けています。

努力が実っていることもありますが、大の音を聴いてまったく縁のなかったジャズをやってみたいと思うあたり、ジャズと相性がよく耳もよかったのだと思います。

玉田は大や雪祈のようにジャズプレイヤーとして生活していこうとは思っていません。いずれは大学に戻り就職するつもりです。そのうえで今はドラムに打ち込む(ドラムだけに)ことに決め大学を留年させてほしいと親を説得するために年末に仙台まで帰郷します。

ブルージャイアントの各巻には巻末に「bonus track」というサイドストーリーが掲載されています。その大半が恐らく世界を股にかけるサックスプレイヤーとなった大の無名時代の縁の人のインタビューという形式になっています。インタビューを受ける人の職場や自宅等でのインタビューです。

玉田は7巻に出演します。会社の会議室のようなところで、玉田はジャケットにノーネクタイというソフトカジュアルで出てきます。自由な雰囲気の業界に就職したようです。音楽関係の可能性もありますね。もしかしたら21ミュージック?などと思ってみるのも楽しいです。

玉田が8巻でスティックを購入したのがこちら。楽器の事なら石橋楽器!

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BLUE GIANT 7巻(ブルージャイアント)あらすじとネタバレ

JASS!初ギャラいただきました!

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6巻の最後で、JASSのステージに飛び入りした日本を代表するジャズギタリストの一人、川喜田 元(かわきた もと)に客席もざわめくのですが、なんと大は川喜田を知りませんでした。川喜田の選んだ曲はジョン・コルトレーンのインプレッションズ。ギターではなくサックスの曲を選んだことで川喜田が本気で勝負に出たことを悟る雪祈は、大に「負けるな。」と告げます。

観客は川喜田のソロに盛り上がり、川喜田の正体を知らない大もその熱いプレイに引きつけられます。セッションが終わったあと、川喜田は雪祈にはまた勝負しに来ると言い、大には名前を聞きます。覚えておくから頑張れ、と告げるのでした。そして玉田にも「ありがとう。」と声をかけます。

大は雪祈との会話のなかで、川喜田とは思う存分できたと話します。そこで雪祈に

「玉田はどうだった?」

と聞かれ、初めて玉田のドラムを気にせず演ることができたことに気づくのでした。

川喜田がSNSでつぶやいた影響もあったのか、JASSの3度目のライブは小さなライブハウスをほぼ満席にしていました。終演後、観客に囲まれる大と雪祈を目の当たりにしながら、自らの手の豆を見つめる玉田。その玉田に声をかけたのは初回からライブを見に来ている紳士でした。

「僕は成長する君のドラムを聴きに来ているんだ。」

「君のドラムはどんどんよくなっている。」

とかけられた言葉に玉田は密かに涙するのです。それは明らかに先日、橋の上で流した涙とは違うものでした。

そしてこの日、JASSに初めてのギャラが入ったのです。一人一万円ずつ分けたギャラを三人はそれぞれ思い思いの使い方をするのでした。

玉田は教則DVDを購入します。以前は初心者向けの教本を買ったのですが、今度は上級者向けです。さらに通っている音楽教室の先生にビールを買います。

雪祈は花屋で5千円分の花束を二束買います。一束は実家の母に、もう一束はTake Twoのアキコさんに贈るためです。雪祈はアキコさんに、自分たち三人からだと言って花を渡します。

そして大は、女物の服やら靴やらを見て回っています。しかし、贈る相手のサイズすらわかっていません。さんざん迷った大が選んだのは、楽器屋で一番安いフルートでした。もらったギャラに自分で自由に使えるギリギリのお金を足して買ったフルートは、仙台の妹、彩花に届けられます。かつて雅兄は大に、店で一番高いサックスを贈りました。大は、雅兄にプレゼントをするのではなく自分より下の妹にフルートを贈るのでした。長兄から弟へ、次兄から妹へ、順繰りに贈られるのです。

大が彩花に贈ったフルートはこれかな?クリックで購入できます。



ゴールがない世界の幸せ

大はライブの時、一瞬だけ音と自分がつながったソロを吹くことが増えてきています。ただそれは一瞬だけで、つながっていたいのにすぐに離れてしまうことがほとんどです。大は、一流のプレイヤーは皆、音と自分がつながり無意識で吹いていることに気づいています。それが自分には一瞬しかおとずれないのです。スキルの問題か気持ちの問題かはわかりません。

雪祈も大が時々無意識の「自動演奏モード」に入ることに気づいています。それは雪祈にはまだ訪れたことのない瞬間です。

ここで、サックス、ピアノ、ベース、ドラムのカルテットが登場します。彼らのバンド名は「ザ・ファイブ」メンバーが一人抜けたばかりの、元はクインテッドだったようです。仕事はそれぞれ別に持っているものの、ギャラをもらえるライブをするセミプロで、メジャーデビューを目指しています。

以前は山ほどあった情熱は結成10年で少しずつ削られ、生活に追われるようになっていますが、サックスの森は自分たちには変化が必要だ、と思っています。

森は音源をレコード会社に持ちこみますが、年齢も30代半ばになるザ・ファイブは音源すら聴いてもらえず門前払いです。

その森のところに川喜田から電話が入ります。川喜田はJASSを聴きに行くように森に伝えます。損はさせないから、と川喜田は言いますが、森はJASSが10代の若者で構成されているバンドであることを知り、聴きに行くことに抵抗を示します。

それでもピアノの阿川に連れられJASSのライブに来た森は大を見て

「あいつ、知ってる。」

と言い出します。以前、ザ・ファイブが定禅寺ストリートジャズフェスティバルに出演したとき、客席でひときわ元気に乗りまくっていたのが大でした。その大に乗せられて森は長々とソロを吹きまくり、結局一曲削ることになったのでした。さらに、演奏を終えた森達がサックス一本の音に惹かれて駆け付けたところ、そこで吹いていたのは先ほどの高校生、大だったのです。森は久しぶりに聴いた大が腕を上げていることに気づきます。

JASSのライブが終わったところで、森達は川喜田の紹介だと言って大達に声をかけ呑みに誘います。そこで森は大に、

「お前はこれからどうなんの?」

と問いかけます。大は、

「JASSで武道館と東京ドームを満員にする、世界中をツアーで回る、グラミー賞も取る。」

「そのためには、毎日出し切らないと、オレの持ってる全部を出し切らないと。」

「だって、幸せじゃないすか。今までたくさんのプレーヤーがいたけど、、ゴールについた人間は誰もいないんすよ。」

「ゴールがない世界でずっとやり続けられるなんて、最高に幸せじゃないすか。」

先ほどまで雪祈に「才能がない。」とやり込められていたザ・ファイブでしたが、森はその言葉にうっすら涙を浮かべるのでした。

そして、ある日の小さなライブハウス、少ない客の前で演奏するザ・ファイブの姿がありました。

So Blueのステージに立ちたい!

雪祈の夢は10代のうちにSo Blueのステージに立つこと。そのための準備に余念がありません。JASSにも固定ファンがつき、一定の集客が望めるようになった頃、雪祈は川喜田の自宅を訪ねます。用件はズバリ

「どうしたらSo Blueのステージに立てるでしょうか。」

と直球です。それはいくらなんでも舐めた考えだ、という川喜田に対し、死ぬほど憧れているSo blue を舐めたことは一度もないと真剣な気持ちを伝え、結果川喜田からSo blueのスタッフに雪祈に連絡するよう伝えるという返事を引き出しました。

それから2週間ほど後、So blueの平と名乗る人物からメールが来ます。雪祈はSo blueでのライブを切望していること、一度自分たちのライブを聴いてほしいことを訴えます。最初にメールが来てからさらに2週間後、ついにSo blue平がJASSのライブを聴きに来ました。

雪祈は大と玉田には何も告げず、「今日もマックスで頼む。」とだけ言います。終演後、平から雪祈にライブハウスの近くのバーにいるとメールが入り、バーへと急ぐ雪祈はファンの男性からサインを頼まれるも断って、平の待つバーへと急ぎます。

平と初めて会った雪祈は挨拶もそこそこにJASSの印象を聞きます。それに対して平は、ドラムは初心者で技術不足だが、一生懸命で好感が持てる。サックスは独特で音に強さ、太さがあり面白い。彼の将来は気になる。さらに平は雪祈に対し、

「君、全然だめだ。」

「君のピアノは鼻につく、つまらない。」

「君、バカにしてないか?バカにしてないとしたら、なぜ本当のソロをやれてない?」

「全力で自分をさらけ出す、それがソロだろ。」

何一つ言い返せないでいる雪祈に向かって平はさらに、雪祈の態度を横柄で人をバカにしていると一刀両断にし、今回の話はなかったことにすると言い残しバーを出て行ったのでした。

雪祈は夜道を一人、平の言葉を反芻しながら歩きます。

「普通、言うか?」

「あそこまで、言ってくれるか?」

「あの人、いい人だな。やっぱスゲエな、この店」

雪祈は歩きながらいつも間にかSo Blueの前まで来ていたのでした。

頑張れ雪祈

と言いたくなる7巻でした。雪祈は小出しにされるエピソードからもわかるように、本当は素直で心優しい子ですが、若さの持つ未熟さとジャズの情熱の故の尖がった面もあり、それがしばしば廻りと軋轢を起こすこともあります。今回もザ・ファイブのメンバーと一発触発の雰囲気にもなりました。雪祈は傲慢な態度を取ることで自分の弱さを隠している面もあると言えます。ところが弱さを隠すことで、平に指摘された自分をさらけ出せないソロしかできないようになってしまったのでしょう。平の言う、「音楽をばかにしている。」というのは、雪祈の傲慢さ、不遜さの奥に隠れている弱さ、素直さ、優しさも音楽に漏れてしまっているのに、隠しきれていると思っているところでしょう。音楽はそんなに甘くはない、音楽に向き合って嘘をついていられるわけはない、だから思い切って自分をさらけ出しなさい、そういう意味ではないでしょうか。

一方大は、そのような屈折はありません。大の音が太く強いのは大の内面の現れで、その強さ故に真っすぐ純粋でいられるのです。あまりにも真っすぐで迷いがないため、今後主人公としては少し影が薄くなるかもしれません。けれども今後大は世界で活躍するミュージシャンになるのはボーナストラックを読んでも明らかです。世界で通用する大きさの器の持ち主だからこそ、純粋でいて大丈夫なのでしょう。

廻りがどれほど嘘をつこうと、ミュージシャンは、いや表現者は自分の表現において嘘は許されないのです。頑張れ雪祈!

7巻に登場の曲はこちら


インプレッションズ
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Take Twoでのリハ前に雪祈が一人で弾いていた曲

Tom Waits – Grapefruit Moon クリックでyoutubeへ

大が電車の中で出会ったおじさんは、500円玉貯金で買ったトランペットを大事に持っていました。その根性に惹かれ音を聴いてみたくなり、おじさんの個人練習についていきます。そこでおじさんが吹いた曲がこれ。

Blue Mitchel – I’ll close my eyes クリックでyoutubeへ

ちなみにおじさんが買った「相棒」はこちら

おじさんが500円玉貯金で買った相棒 購入は画像をクリック

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BLUE GIANT6巻(ブルージャイアント)あらすじとネタバレ

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First Note   大・・・強い音を出せ

その日、雪祈は曲を書いていました。大の強く太い音に負けないメロディを必死で探します。そんな雪祈の元に、一本の電話が入ります。ジャズギタリストの川喜田 元(かわきた もと)が、高校生の頃の雪祈のプレーを聴き、ピアニストとして使ってみたいという電話でした。雪祈は川喜田のライブに参加し、気に入られます。川喜田は自分のバンドのメンバーになりツアーを回るよう雪祈を誘いますが、雪祈は自分の求めるジャズの世界に行ける相手ではないと感じるのでした。そしてその相手は雪祈にとってはやはり大なのです。雪祈は一人闇の中で練習する大を誘い、その晩のギャラで大と玉田に焼き肉を奢ります。ギャラを全部使いきるのでした。

雪祈は曲を書き上げます。タイトルは「First Note」大は非常に気に入ります。玉田はまず自分のことに必死で曲を聴く余裕がありません。そして作曲者である雪祈は、まだまだ不満足です。

大は、ドラムに必死で他の音を聴いている余裕がないと言う玉田のドラムが、いつのまにジャズらしくなってきていることに気づき、さらに雪祈に

「弱い!」

「お前の強い音、どこへ行っちゃった?」

と指摘されます。

玉田の成長と雪祈の努力に背中を押されるように、大は走り込み、泳ぎ、強い音を取り戻すために行動するのでした。さらにジャズバーのセッションに参加し、ソロで長い長い、さらにどんどん強さを待つロングトーンで回りを圧倒し・・・怒られるのでした。しかし、これで大は、自分の強い長い音が武器であることを確信します。

18歳のジャズナイト

大はライブを企画し、一人でチラシを作って配り歩きます。雪祈は無名の自分たちを聴きにくる人などいない、それにまだ初心者の玉田には事が大き過ぎると反対しますが、たった一人でチラシを配る大を見て気持ちを変えます。

ライブ当日、客はお店の常連客が3人だけです。大はその客席を見ながら

「この日を一生、覚えておこう。」

と誓うのでした。そして、ライブがあることも知らず、ただ酒を飲みに来ていた3人の常連、そしてHPに告知もせず、チラシも貼らなかった店長を一気に引き込む演奏をします。そして雪祈は、大が本番のステージで凄みを増し大きくなることを確信するのです。

一方玉田は、自分が予想していたよりずっと、何もできなかったことに傷つき落ち込んでいます。店長や常連客はライブの前後でまったく態度を変えるのですが、それは主に大と雪祈に対してで、玉田の存在感は全くと言っていいほどありません。大はその玉田の姿に、仙台のバードの初ライブの時の自分を重ねます。

バイトを控えているため、初ライブの打ち上げは自販機の缶ジュース、その打ち上げの席で玉田は、

「オレのドラム、クソだ。」

「オレ、抜けないと。」

その玉田に雪祈は

「125回」

と言います。玉田のミスの数です。何も言い返せない玉田に雪祈は続けて

「正直言うわ。」

「思ってたより、悪くなかったわ。」

その夜、一人になった玉田は橋の上で号泣するのでした。バードのライブの後大も泣いていましたが、それを大きく超えて泣きじゃくります。

翌日の練習に遅れてきた玉田は、手が震えてリズムが刻めなくなってしまい、理由をつけて練習場所であるtake twoから抜け出します。それを見た雪祈は大をなじります。

大が、ようやく少し叩けるようになった初心者の玉田をステージに引っ張り出したのが原因で、玉田は叩けなくなったのだと。さらにライブ中にミスを連発しすっかり委縮した玉田を助けることもできず、置き去りにして一人で吹いていたのだと指摘するのです。

一方玉田は、take twoから抜け出した先の公園で、奇妙な音を出す楽器のようなものを吹く男子中学生と出会います。

「それ、楽器?」

玉田は問いかけます。

「トランペットのマウスピースです。」

少年は、中学一年で吹奏楽部に入部したばかり、はじめは音が出せないので楽器には触らせてもらえずマウスピースだけの練習を続けています。彼の中学のブラバンは厳しく、小学校からの経験者は夏から楽器を使えるのですが、彼は初心者のためトランペットを触るだけでも先輩に怒られるが、秋には楽器を使えるのを楽しみにしています。玉田は彼に、

「頑張って。」

と言い残してその場を去るのですが、途中でそれが何か違うように感じ、公園に引き返して彼にこう告げるのです。

「頑張って、じゃなかったわ。」

「先輩、ぶっ飛ばしちゃえ。オレならそうする。」

玉田はその後、昨日号泣した橋の手すりをスティックで叩きながら

「大も雪祈も、全員ぶっ飛ばしてやる。」

と誓い、再び練習に励むのでした。

JASS

以前雪祈に自分のバンドに加わるようオファーをし、結果断られたジャズギタリストの川喜田が、小さなジャズバーに姿を現します。そこでは今時のジャズバーらしくなく、若い観客が歓声をあげ演者をあおり、さらに追っかけらしき若い女性客も黄色い声を張り上げていました。演奏しているのは「JASS」という若者のバンドです。サックス、ピアノ、ドラムの三人編成でベースレスです。

川喜田が探しあてた雪祈がそこにいました。曲の最中でも気に入らないプレイに対して言い合いをし、観客はそれに対しても盛り上がります。ステージと客席が一体になって作り上げる、まさしく「ライブ」な空間でした。そしてそこには玉田もいました。まだ大と雪祈の「fight」には入っていけない玉田ですが、いつか必ず殴り込んでやるつもりでいます。

川喜田は勢いのある三人の演奏、そして雪祈の挑発に対して目の前で成長を見せる大を目にして、マスターにギターを借り

「ちょっと負けに行ってくる。」

とステージに飛び入りするのでした。

いや、かっこいいな川喜田さん。

センスも才能もある十代の若者トリオと言えばこちら、ソルティドッグ (僕のジョバンニ)もそうです。オリジナル中心で、JASSはベース、ソルティドッグはドラムがいないところも、フライヤーにセンスの欠片もないところも同じです。(大がPCで作ったフライヤーは三人の焼き肉を食べる写真、縁の手書きフライヤーに至っては、ヘタな犬の絵が添えられているという代物)

二作品の連載時期からすると年齢的に5歳くらいJASSの方が上なのですが、この二つのバンドが出会ったらどんな感じなのでしょう。

・・・なんとなく、雪祈と縁が喧嘩して終わりそうな気がする。



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