ブルージャイアント

BLUE GIANT10巻(ブルージャイアント)あらすじとネタバレ

最初で、そして・・・最後かもしれない

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いよいよ雪祈がSo Blueのステージに立ちます。ステージ袖で出番を待つ雪祈の胸に去来するのは、幼い頃からひたすらピアノとジャズに邁進した日々でした。突き指を恐れ体育のバスケを見学して指のトレーニングをする雪祈。一方水泳の授業では水の抵抗を使った水中でのトレーニングをする小学生の雪祈。バンド仲間はロックをやりたがりバンドを一人離れる中学生の雪祈。そして母に連れられて初めて行ったSo Blue!そのすべてを胸に雪祈はSo Blueのピアノに向き合いました。

雪祈はたちまち世界で活躍する一流のプロの力を肌で知りますが、客席にいる大は雪祈しか目に入らなくなっていました。

そして雪祈のソロ、So Blueで弾く最初の、そして最後かも知れないソロ、雪祈はそのソロで今の自分を正直に出そうと決め、それは客席中を沸かせ圧倒するソロとなります。終演後、雪祈は「出来た・・・。」とトイレで一人涙します。

21ミュージックの五十貝はJASSのCDのリリースを進めるため上司に掛け合います。先日のSo Blueのライブも聴きに行って手ごたえを感じた五十貝は、若干19歳でフレッド・シルバーカルテットのメンバーとしてSo Blueのステージに立ったピアニストという話題性も武器に説得をしたのです。ジャズ専門誌にも記事が載り、流れが一気に変わってきたある日、雪祈は平からJASSのSo Blue出演のオファーを受けます。

いつも通り熱の入った練習の後Take Twoに出勤してくるアキコさんを待ち受け、雪祈はそのことを告げます。アキコさんは

「そう、よかった。」

とクールに一言、それきり雪祈達に背を向け洗い物をするのでした。いつもぶっきらぼうで素っ気ない彼女らしい対応でしたが、実はアキコさん、背を向けたまま声もなく涙を流すのでした。

「本当におめでとう。」

と心の中で祝福します。

So Blueの平は知る限りの音楽ライターにコンタクトを取りJASSの記事を書いてくれるよう頼み、評論家にも連絡します。

21ミュージックの

五十貝も、上層部の説得に成功、いよいよ2日後にSo BlueのステージにJASSが立つという、その夜。

・・・とても意味のあるライブだった。

雪祈はいつものように工事現場のバイトに出ます。いつものようにヘルメットをかぶり交通整理しています。いつもの夜、雪祈はJASSを想っていました。

「三人だから、ここまでできた。」

「大、玉田、あいつらと組んで、本当によかった。」

そこに突然の閃光と衝撃!突っ込んできたトラックにはねられた雪祈の腕と指があらぬ方向に曲がっていました。雪祈は無事だった左手で大に電話をします。

「ライブ出られねえや・・・。」

病院に駆け付けた大と玉田は、雪祈のバイト先の人から今手術中であること、右腕が残せるかどうかもまだわからないことを聞き、その足でTake Twoに向かい練習を続けるのでした。大は、今止まってはいけない気がしているのです。

JASSのライブ当日、So Blueの入り口に向かう大と玉田を平が出迎えました。前日に大が雪祈の事故のこと、サックスとドラムのデュオでやりたいことを伝え、平はそれを了承したのです。雪祈のいないJASSのリハが淡々と続けられ、本番を迎えます。影アナは自ら名乗り出た平が勤め、そこで雪祈が交通事故で重体のため出演不可であること、今も怪我と戦っていることが告げられます。そして、JASSのライブを平自身が本当に楽しみにしていたことも明かされるのでした。その平の紹介によって、ステージに上がった二人は予想より大幅に減った観客すべてを巻き込み、ドラムとサックスのデュオという異例の形態ながら大きな感動と強い印象を残したのでした。

楽屋に戻る大と玉田を待ち構えていた平は涙をこらえきれずに二人に告げます。

「とても意味のあるライブだった。」

大は、1日も止まっちゃいけない

大と玉田は雪祈を見舞い、そこで雪祈の右手が元に戻るかどうかわからないことを知ります。ただ切断は免れたようです。さらに雪祈は二人に

「JASSを解散しよう。」

と告げるのでした。

「大は、1日も止まっちゃいけない奴だろ。」

病院を出て用があるという玉田と別れ、大は玉田の家で一人号泣します。

ある日、大が仙台に帰ってきました。仙台に着いてすぐに由井の家を訪れます。由井は

「まず吹いてみろ。」

と大の音を聴くことを求めました。

大が由井の元を訪ねたのは相談があったためです。東京での経験を話し、海外に行きたい、いろいろな国の音を吸収したいと。そのためにはどこの国がいいだろうかと由井の意見を求めに来たのです。それに対して由井はヨーロッパのある国を示唆しました。聴く側も演る側も熱く、ジャズに対して柔らかく開いている国だと。大は、その国に行くことにします。

旅立つ日、成田へ向かうシャトルバスで玉田に見送られ、成田から雪祈に電話をします。雪祈は今実家の松本で療養中です。雪祈はピアノに向かい、慣れない左手で譜面を書いていました。その雪祈に大は

「お前のピアノが好きだ。」

「お前の一番のファンかもしれない。」

雪祈は、大のその言葉に恐らく声を出さずに号泣し、

「大、行け」

と一言、告げます。そして大は旅立っていくのでした。

止まることのない大の物語は次へと続く

大の物語はこの後続編、ブルージャイアントシュプリームへと続きます。大は止まりません。So Blue出演の際、大は平を覚えていませんでした。雪祈を狙っていると勘違いしてけん制したことも何もかもです。当然「ザ・ファイブ」の森に定禅寺で会ったことも忘れています。それは決して彩花の言うように「ちっちゃい兄ちゃん、ほんとバカ。」だからではなく、前しか向いていないからですね。

ところで雪祈はどうなったのか。単行本巻末のボーナストラックには雪祈自身は出てきません。他の人のインタビューの中に雪祈の話題は出るのですが、現在の話ではないのです。

雪祈は作曲家になっているのではないでしょうか。作曲が好きだと言う台詞があり、ラストシーンも作曲しているシーンでしたから。いずれにしろ、音楽家として一線で活躍しているのは間違いないと思います。そんなことを思わせる希望のあるラストでした。

10代でSo Blueのステージに立つ。リアルブルージャイアント

雪祈が夢見ていたSo Blueのステージに10代で立つ、その夢を実際にかなえた若者を紹介して締めとしたいと思います。

2019ブルージャイアントナイト、オープニングアクトオーディションファイナリスト

Ascension

Ts.佐々木諒太

Pf.菊池冬真

B.山本修也

Dr.片山晴翔

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チケットぴあ

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BLUE GIANT9巻(ブルージャイアント)あらすじとネタバレ

初めてのジャズフェス、3人で圧倒

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JASSが初めて出演するジャズフェス「カツシカジャズ」の打ち合わせからTake Twoに戻ってきた雪祈は非常に怒っています。アクトの天沼に若さだけのバンドと決めつけられた腹立ちです。雪祈は大と玉田に、アクトに勝つ!と宣言したことを話します。ビビる玉田に喜ぶ大、3人は当日に向けて走り出すのでした。ちなみに大は本当に走っています。それぞれ個人練習に打ち込む雪祈と玉田のカットの後、サックスを持たずに走り込みをする大のシーンが描かれます。以前雪祈に「強い音を出せ」と言われたときも大は走り、泳いでいました。

カツシカジャズ当日、JASSのリハを耳にした天沼の評価は徐々に「これは、ありじゃないか?」に変わっていきました。

「ピアノ、上手いな。」

「サックスは野太い音だね。」

「ドラムは、まあまあか。」

ドラム、まあまあなんですよ。So Blueの平には初心者と見抜かれてた玉田が、それから幾らもたたないうちに大や雪祈を支えるドラマーkとして「まあまあ」の評価を得るのですから、これってすごいです。

ただし、本番前までの天沼の評価は「なかなかいいバンド」まで好転したものの、やはり若い後輩バンドとして下に見る気持ちは消えないようでした。自分達が盛り上げるから失敗など気にせず演っていいと言う天沼に雪祈が再びムカつきだしたのを見た大は、天沼に元気に自己紹介と挨拶をし

「いつも通り全力全開で盛り上げます。ですので、天沼さん達も頑張ってください。」

と、挑発するのでした。

JASSのステージは大のソロではじまります。初っ端から全開で飛ばす大の音量のリハとのあまりの違いにPAさん焦りますが、音圧は下げない方向で必死にベストポジションを探ります。ステージ袖で見守る天沼の表情が変わり始めます。3分ほど続いた大のソロに雪祈と玉田が飛び込みます。そして雪祈のソロ、壁を完全に乗り越え考えないプレイをしている雪祈とノッている観客を認めた大は玉田に囁きます。

「ソロやっぺ!!」

玉田の初ソロは、バスドラのみの連打からはじまりました。熱いソロを叩き出す玉田とそれを見守る天沼の表情、観客のノリ、JASSは3人で場を圧倒したのです。曲終わりに大がメンバー紹介をします。玉田を紹介した時に、その玉田のスティックを握った手をつかみ高々と掲げたのは雪祈でした。

ステージ袖に戻ってきたJASSの3人に天沼は惜しみない拍手を送り、握手を求めステージへと出ていきます。そこで天沼は熱いプレイを繰り広げそれはアクトの他のメンバーにも伝染し、大人のプロとしての演奏で観客を沸かせるのでした。

この玉田のソロからアクトの演奏までが一話に納められていますが、一話を通して文字が一切なく絵だけで表現されています。一番音が鳴っている場面で直接的な音の表現がまったくないのです。台詞ももちろんありません。この一話、最高にかっこいいです。

次の一話で描かれる大の仙台の家族の話もとてもいいです。残された家族がそれぞれ自分の持ち場で大の話をする、それだけなのですがストーリー全体に厚みを与えています。ちなみに彩花は、由井先生にフルートを習っています。大に贈られたフルートです。

ある日、仙台から三輪舞が大を訪ねてきました。突然のことにびっくりする大に舞は

「お台場に連れて行って。」

と言います。

二人は久しぶりにデートをします。東京へ来てから一年、ジャウとバイト三昧だった大にとって初めてのお台場で案内などはとてもできませんが、お互いの近況を話しながら観光してまわります。大は、東京で色々なことがあったこと、それでも舞のことは忘れたことがないと話します。

二人は観覧車に乗ります。そこで大は舞から

「好きな人ができました。」

と告げられます。すぐには言葉を返せない大でしたが、続く舞の言葉に一年もほとんど連絡をとらず放っておいた自分を省みるのでした。

別れ際、舞は

「私、疑ったことないんだ。1ミリも。」

「宮本大が、世界一のサックスプレーヤーになるの。」

いつか、世界一の大のサックスを聴きに行くと言い残して舞は仙台に帰ります。

So Blueのステージに立つ!

舞との別れは大にとって想像以上のショックを与えました。大はそれを悟られまいと普段通りに振舞っていたのですが、大の出す音に現れていたため雪祈にも玉田にも気づかれていました。それを知った大は、気持ちがすべて伝わってしまうジャズはやはりすごい、と感じ改めて目標として

「So Blueのステージに立つ。」

と宣言します。舞との最後のデートで舞が言った

「宮本大は、昔話が似合わないね。」

の一言の通り、止まらずに突き進みジャズしか見えていない男なのです。

・・・別れて正解だわ、舞ちゃん。

JASSに可能性は残されている。

その日、雪祈はいつものように工事現場でバイト中でした。休憩中携帯が突然鳴りだし、表示された相手の名前を見て雪祈は驚愕するのでした。

「平さん So Blue」

平は緊急事態を迎えていました。So Blueでライブを二日後に控えたカルテットのピアニストが急病で倒れ来日できなくなったと連絡を受けたところだったのです。ついてはトラのピアニストを探してほしいとの要請でした。

電話を取った雪祈に平は事情を話し、出演してみないかと言うのです。ただし、JASSではなく雪祈だけだと。

雪祈はメンバーと話し3時間以内で返事をすると約束し、大の居候する玉田の家に駆け付けます。

玉田の家では大と玉田が牛乳の賞味期限のことで平和に喧嘩中でした。そこで雪祈はSo Blueから雪祈一人に出演オファーがあったことを告げます。抜け駆けだと思われてもしかたない、と話しはじめる雪祈をよそに大は玉田と二人分のチケットを入手します。

深夜のコンビニで譜面を手に入れ、徹夜で練習をして翌日昼からのリハに参加した雪祈はカルテットのメンバーにも無事

「いいと思うよ。」

と本番の参加を認められました。そして雪祈は平に頭を下げあの夜のことを謝ります。そして精一杯やるので今回自分の演奏がよかったら

「JASSに可能性は残されていると言ってください。」

と心から言うのでした。

そして、ステージははじまります。

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BLUE GIANT8巻(ブルージャイアント)あらすじとネタバレ

全力で自分をさらけ出す

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雪祈は人を探しています。顔しか知らない人です。JASSがライブを演っている店を回って、その人が来たら教えてもらえるよう頼んでいます。その人に会わないと、始まらない何かが雪祈にはあるようです。

ある夜、雪祈はいつものように工事現場の誘導のバイトをしています。そこで、その人らしい人を見つけるのでした。その人は豆腐店の名前が入った軽トラに乗っていました。雪祈はバイトを終えてから地図アプリを頼りにその豆腐屋を訪ねます。たどり着いたのは深夜1時過ぎ、それから2時間ほど待って店のシャッターを開けた人は、雪祈の探していたその人でした。

まだ寒い早朝から黙々と仕事をするその人を雪祈は見つめています。

「こういう人が、JASSのライブを聴きに来てくれている。」

その人は、先日雪祈がライブ後にサインを断った男性でした。仕事が一段落するのを見計らい、雪祈は男性に声をかけ、自分のサインを渡します。

「次はもっと、いい演奏しますので。」

そういって頭を下げるのでした。

雪祈はSo Blueの平に言われた言葉が心底堪えていました。本当のソロができないこと、音楽以前に人として駄目であることを突き付けられ、自分を変え本当のソロを演りたいと思います。その一歩として無下にサインを断った男性にサインを渡し、次のもっといい演奏を約束しないと始まらなかったのです。

雪祈が悩んでいるらしいことは、始終一緒に合わせている大や玉田にも伝わっています。雪祈は何かを言ったわけではありませんが、音で伝わってしまうのです。

雪祈は、自宅を酒を持って訪ねてきた大に

「俺のソロ、どう思うよ。」

と聞きます。その雪祈の問いに大は

「話になんねえな。」

「俺はサックスを吹く時はいつでも、世界一だと思って吹いてる。」

「次元が違い過ぎて話になんねえ。」

と、ざっくり切り捨てるのでした。

しかし、大は雪祈を信じていたのです。

壁を破れなければそこで終わり。でも、あいつは破る。

So Blueの平は悩んでいました。仕事でブッキングした大物プレイヤーは昔の面影はなく、客の入りも今一つ。本人にもやる気は見られません。落ち目であることもわかっていない様子です。

平は雪祈に言い過ぎたと後悔するのです。仕事の合間にセミプロのバンドを何バンドか聴いてみて、JASSは面白いバンドだったと思い返します。面白いと思ったからこそ、率直過ぎることを言ってしまったのです。

ある日、平は立ち寄ったライブハウスで大を見かけます。途中で退席した大を追い、声をかけます。平は肩書を隠し、JASSのライブを聴いたこと、一杯奢らせてほしいと大に申し出ます。ところが、そこで少々おかしな誤解が生じてしまうのです。

平が大を連れてきた行きつけのスナックのママが心だけ女性のトランスジェンダーの男性であったことで、大は平がゲイだと勘違いします。

平は気になっていた雪祈の近況を聞きます。そこで大は、平が雪祈を狙っていると思い込み、

「雪祈は彼女いますよ。100人、いやもっと、メチャメチャモテるんで、女に。」

勘違いなのですが、大なりに雪祈を守るつもりで滅茶苦茶なことを言います。ここは妹の彩花じゃありませんが

「ちっちゃい兄ちゃん、ほんとバカだ!」

と言いたくなりますが、勿論平はそんなことは言わず、それどころか気にも留めず

「ピアノ、弾いてる?」

と聞きました。大は、今雪祈が大きな壁に突き当たり苦しんでいることを話します。

「壁を破れなかったら終わりです。」

誰も助けられない雪祈の悩みを思っての言葉です。

「でも、雪祈は破るでしょうね。」

大は別れ際、いつか必ず、JASSでSo Blueに出演するから見に来てください、と平に言います。

そんなある日のライブ、雪祈はまだ苦しんでいます。どうしても手グセのフレーズやコード進行の枠組みの中で考えたフレーズしか出てこないのです。平と会ってから数週間、練習しても練習しても自分をさらけ出すソロが弾けないのです。ダメであることに失望しながら自分のソロを終え、大に渡します。

ところが、大は吹きません。吹かないどころかサックスから手を放し、腕組みしてしまいます。次も雪祈のソロです。雪祈は渾身のソロを弾きます。考えるな、考えるな!

これでどうだ?と大を見ますが、大は相変わらずサックスから手を放したまま雪祈を煽ります。もうやるしかない袋小路に追われた雪祈のソロが再び続きます。両手でのワンノートの連打からはじまるソロ、考えずに自分をさらけ出している様が、絵だけで伝わってきます。そこに大の掛け声と観客の歓声、そして大のソロが割って入ります。玉田はその雪祈のソロが今までで一番良かったと感じながらサポートするのでした。

もっといい音が出るように

雪祈の最高のソロ、そのライブを観に来た人が楽屋に訪ねてきました。21ミュージックの五十貝と名乗るその人は、ジャズの時代が終わったと言われている今、ジャズを売ろうと思っていると言い、通るかどうかわからないがCDリリースの企画に出すからとJASSの音源を求めるのでした。

五十貝は21ミュージックのジャズ部に所属し、ジャズを売ろうと奔走していますが、力を入れたミュージシャンのCDでさえ初版1,500枚しかリリースできず、上からはジャズはわかりにくく売れないからリスクのない音楽を求められています。それでも負けずに日々戦い続けます。

雪祈はCDリリースが月旅行だとしたら、五十貝の話は熱海や品川までで月には遠すぎるというのですが、大は

「月まで行こうぜって言いに来たんだべ、あの人は。」

と、ほんの少しでも月に近づいたことを示唆します。

年末になり、冬休みを迎えた雪祈と玉田はそれぞれ実家に帰省します。一人になった大はバイト代も入り少しだけリッチな年末年始を過ごせることになる・・・はずでした。

サックスのメンテナンス代を払ったあとの全財産の入った財布を落とし、の日々を送るはめになるのでした。大晦日もいつもの練習場所でひたすら練習する大のもとに、家族からの電話が入ります。

一人で迎えた新年、大は通りかかった神社で初詣をします。次にバイト代が入るまでの残り少ない財産から100円を賽銭箱に入れて

「もっといい音が出るように。」

と祈るのでした。

うちのテナーを見れば、全部わかるんで

冬休みも終わり、雪祈も玉田も東京に戻ってきて再び練習の日々です。

そして、JASSに初めてジャズフェスの出演依頼がきました。町おこしとして開催される小さなジャズフェスですが、メインの出演者が名の通った「アクト」というバンドで、JASSの出番はアクトの直前です。

出演者の説明会と親睦会を兼ねた集まりに参加するため、雪祈は柴又駅に降り立ちます。ジャズフェスの名前はカツシカジャズ。葛飾区で実際にジャズフェスをやっているかどうか調べてみましたが、見当たらないようなので架空のジャズフェスの模様です。

会場にはアクトのピアニストの天沼がいて、雪祈に声をかけてきました。天沼は評論はラジオ等でも活動している著名なピアニストです。

雪祈はJASSをカツシカジャズに推薦したのは天沼だと知りますが、どこでJASSのライブを観たのか聴くと天沼は

「聴いたことはない。」

と答えるのです。知り合いに若くて元気のいいバンドを教えてもらった、それがJASSだったというわけでした。

少し鼻白む雪祈でしたが、天沼はJASSはどのような音楽をやっているか問い、「オリジナル中心のジャズ。」と答える雪祈に続けて、それだけでは曖昧すぎて何も伝わらない、アクトはジャズを数少ないジャズファンに届けるため幅広い活動をしてマイナーなジャズが受け入れられる努力をしてきた。JASSは何を伝えようとしているのだ、と畳みかけます。言っていることは正論ではありますが、JASSを若さだけのバンドと蔑んで絡んでいるようにも見えます。

それに対して雪祈は、

「一人でも多くの人に自分たちの音楽を聴いてもらうために出演する。」

と返し、

「うちのテナーを見れば、全部わかるんで。」

そう言い残し会場を去りました。

それにしても玉田の成長っぷりときたら

8巻は雪祈り中心に話が進んでおり、その分主人公である大の影がなんとなく薄いのですが、玉田の成長が地味にすごいのです。初心者ですから伸びしろは当然たっぷりあるのですが、雪祈のソロを聴いて「苦しそう」と思いながら叩いたり、また雪祈が壁を破ったライブでは「今までで一番よかった。」と感じたり、音をしっかり聴きながら叩いているし、音の裏側にあるものも感じ分けています。

努力が実っていることもありますが、大の音を聴いてまったく縁のなかったジャズをやってみたいと思うあたり、ジャズと相性がよく耳もよかったのだと思います。

玉田は大や雪祈のようにジャズプレイヤーとして生活していこうとは思っていません。いずれは大学に戻り就職するつもりです。そのうえで今はドラムに打ち込む(ドラムだけに)ことに決め大学を留年させてほしいと親を説得するために年末に仙台まで帰郷します。

ブルージャイアントの各巻には巻末に「bonus track」というサイドストーリーが掲載されています。その大半が恐らく世界を股にかけるサックスプレイヤーとなった大の無名時代の縁の人のインタビューという形式になっています。インタビューを受ける人の職場や自宅等でのインタビューです。

玉田は7巻に出演します。会社の会議室のようなところで、玉田はジャケットにノーネクタイというソフトカジュアルで出てきます。自由な雰囲気の業界に就職したようです。音楽関係の可能性もありますね。もしかしたら21ミュージック?などと思ってみるのも楽しいです。

玉田が8巻でスティックを購入したのがこちら。楽器の事なら石橋楽器!

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BLUE GIANT 7巻(ブルージャイアント)あらすじとネタバレ

JASS!初ギャラいただきました!

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6巻の最後で、JASSのステージに飛び入りした日本を代表するジャズギタリストの一人、川喜田 元(かわきた もと)に客席もざわめくのですが、なんと大は川喜田を知りませんでした。川喜田の選んだ曲はジョン・コルトレーンのインプレッションズ。ギターではなくサックスの曲を選んだことで川喜田が本気で勝負に出たことを悟る雪祈は、大に「負けるな。」と告げます。

観客は川喜田のソロに盛り上がり、川喜田の正体を知らない大もその熱いプレイに引きつけられます。セッションが終わったあと、川喜田は雪祈にはまた勝負しに来ると言い、大には名前を聞きます。覚えておくから頑張れ、と告げるのでした。そして玉田にも「ありがとう。」と声をかけます。

大は雪祈との会話のなかで、川喜田とは思う存分できたと話します。そこで雪祈に

「玉田はどうだった?」

と聞かれ、初めて玉田のドラムを気にせず演ることができたことに気づくのでした。

川喜田がSNSでつぶやいた影響もあったのか、JASSの3度目のライブは小さなライブハウスをほぼ満席にしていました。終演後、観客に囲まれる大と雪祈を目の当たりにしながら、自らの手の豆を見つめる玉田。その玉田に声をかけたのは初回からライブを見に来ている紳士でした。

「僕は成長する君のドラムを聴きに来ているんだ。」

「君のドラムはどんどんよくなっている。」

とかけられた言葉に玉田は密かに涙するのです。それは明らかに先日、橋の上で流した涙とは違うものでした。

そしてこの日、JASSに初めてのギャラが入ったのです。一人一万円ずつ分けたギャラを三人はそれぞれ思い思いの使い方をするのでした。

玉田は教則DVDを購入します。以前は初心者向けの教本を買ったのですが、今度は上級者向けです。さらに通っている音楽教室の先生にビールを買います。

雪祈は花屋で5千円分の花束を二束買います。一束は実家の母に、もう一束はTake Twoのアキコさんに贈るためです。雪祈はアキコさんに、自分たち三人からだと言って花を渡します。

そして大は、女物の服やら靴やらを見て回っています。しかし、贈る相手のサイズすらわかっていません。さんざん迷った大が選んだのは、楽器屋で一番安いフルートでした。もらったギャラに自分で自由に使えるギリギリのお金を足して買ったフルートは、仙台の妹、彩花に届けられます。かつて雅兄は大に、店で一番高いサックスを贈りました。大は、雅兄にプレゼントをするのではなく自分より下の妹にフルートを贈るのでした。長兄から弟へ、次兄から妹へ、順繰りに贈られるのです。

大が彩花に贈ったフルートはこれかな?クリックで購入できます。



ゴールがない世界の幸せ

大はライブの時、一瞬だけ音と自分がつながったソロを吹くことが増えてきています。ただそれは一瞬だけで、つながっていたいのにすぐに離れてしまうことがほとんどです。大は、一流のプレイヤーは皆、音と自分がつながり無意識で吹いていることに気づいています。それが自分には一瞬しかおとずれないのです。スキルの問題か気持ちの問題かはわかりません。

雪祈も大が時々無意識の「自動演奏モード」に入ることに気づいています。それは雪祈にはまだ訪れたことのない瞬間です。

ここで、サックス、ピアノ、ベース、ドラムのカルテットが登場します。彼らのバンド名は「ザ・ファイブ」メンバーが一人抜けたばかりの、元はクインテッドだったようです。仕事はそれぞれ別に持っているものの、ギャラをもらえるライブをするセミプロで、メジャーデビューを目指しています。

以前は山ほどあった情熱は結成10年で少しずつ削られ、生活に追われるようになっていますが、サックスの森は自分たちには変化が必要だ、と思っています。

森は音源をレコード会社に持ちこみますが、年齢も30代半ばになるザ・ファイブは音源すら聴いてもらえず門前払いです。

その森のところに川喜田から電話が入ります。川喜田はJASSを聴きに行くように森に伝えます。損はさせないから、と川喜田は言いますが、森はJASSが10代の若者で構成されているバンドであることを知り、聴きに行くことに抵抗を示します。

それでもピアノの阿川に連れられJASSのライブに来た森は大を見て

「あいつ、知ってる。」

と言い出します。以前、ザ・ファイブが定禅寺ストリートジャズフェスティバルに出演したとき、客席でひときわ元気に乗りまくっていたのが大でした。その大に乗せられて森は長々とソロを吹きまくり、結局一曲削ることになったのでした。さらに、演奏を終えた森達がサックス一本の音に惹かれて駆け付けたところ、そこで吹いていたのは先ほどの高校生、大だったのです。森は久しぶりに聴いた大が腕を上げていることに気づきます。

JASSのライブが終わったところで、森達は川喜田の紹介だと言って大達に声をかけ呑みに誘います。そこで森は大に、

「お前はこれからどうなんの?」

と問いかけます。大は、

「JASSで武道館と東京ドームを満員にする、世界中をツアーで回る、グラミー賞も取る。」

「そのためには、毎日出し切らないと、オレの持ってる全部を出し切らないと。」

「だって、幸せじゃないすか。今までたくさんのプレーヤーがいたけど、、ゴールについた人間は誰もいないんすよ。」

「ゴールがない世界でずっとやり続けられるなんて、最高に幸せじゃないすか。」

先ほどまで雪祈に「才能がない。」とやり込められていたザ・ファイブでしたが、森はその言葉にうっすら涙を浮かべるのでした。

そして、ある日の小さなライブハウス、少ない客の前で演奏するザ・ファイブの姿がありました。

So Blueのステージに立ちたい!

雪祈の夢は10代のうちにSo Blueのステージに立つこと。そのための準備に余念がありません。JASSにも固定ファンがつき、一定の集客が望めるようになった頃、雪祈は川喜田の自宅を訪ねます。用件はズバリ

「どうしたらSo Blueのステージに立てるでしょうか。」

と直球です。それはいくらなんでも舐めた考えだ、という川喜田に対し、死ぬほど憧れているSo blue を舐めたことは一度もないと真剣な気持ちを伝え、結果川喜田からSo blueのスタッフに雪祈に連絡するよう伝えるという返事を引き出しました。

それから2週間ほど後、So blueの平と名乗る人物からメールが来ます。雪祈はSo blueでのライブを切望していること、一度自分たちのライブを聴いてほしいことを訴えます。最初にメールが来てからさらに2週間後、ついにSo blue平がJASSのライブを聴きに来ました。

雪祈は大と玉田には何も告げず、「今日もマックスで頼む。」とだけ言います。終演後、平から雪祈にライブハウスの近くのバーにいるとメールが入り、バーへと急ぐ雪祈はファンの男性からサインを頼まれるも断って、平の待つバーへと急ぎます。

平と初めて会った雪祈は挨拶もそこそこにJASSの印象を聞きます。それに対して平は、ドラムは初心者で技術不足だが、一生懸命で好感が持てる。サックスは独特で音に強さ、太さがあり面白い。彼の将来は気になる。さらに平は雪祈に対し、

「君、全然だめだ。」

「君のピアノは鼻につく、つまらない。」

「君、バカにしてないか?バカにしてないとしたら、なぜ本当のソロをやれてない?」

「全力で自分をさらけ出す、それがソロだろ。」

何一つ言い返せないでいる雪祈に向かって平はさらに、雪祈の態度を横柄で人をバカにしていると一刀両断にし、今回の話はなかったことにすると言い残しバーを出て行ったのでした。

雪祈は夜道を一人、平の言葉を反芻しながら歩きます。

「普通、言うか?」

「あそこまで、言ってくれるか?」

「あの人、いい人だな。やっぱスゲエな、この店」

雪祈は歩きながらいつも間にかSo Blueの前まで来ていたのでした。

頑張れ雪祈

と言いたくなる7巻でした。雪祈は小出しにされるエピソードからもわかるように、本当は素直で心優しい子ですが、若さの持つ未熟さとジャズの情熱の故の尖がった面もあり、それがしばしば廻りと軋轢を起こすこともあります。今回もザ・ファイブのメンバーと一発触発の雰囲気にもなりました。雪祈は傲慢な態度を取ることで自分の弱さを隠している面もあると言えます。ところが弱さを隠すことで、平に指摘された自分をさらけ出せないソロしかできないようになってしまったのでしょう。平の言う、「音楽をばかにしている。」というのは、雪祈の傲慢さ、不遜さの奥に隠れている弱さ、素直さ、優しさも音楽に漏れてしまっているのに、隠しきれていると思っているところでしょう。音楽はそんなに甘くはない、音楽に向き合って嘘をついていられるわけはない、だから思い切って自分をさらけ出しなさい、そういう意味ではないでしょうか。

一方大は、そのような屈折はありません。大の音が太く強いのは大の内面の現れで、その強さ故に真っすぐ純粋でいられるのです。あまりにも真っすぐで迷いがないため、今後主人公としては少し影が薄くなるかもしれません。けれども今後大は世界で活躍するミュージシャンになるのはボーナストラックを読んでも明らかです。世界で通用する大きさの器の持ち主だからこそ、純粋でいて大丈夫なのでしょう。

廻りがどれほど嘘をつこうと、ミュージシャンは、いや表現者は自分の表現において嘘は許されないのです。頑張れ雪祈!

7巻に登場の曲はこちら


インプレッションズ
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Take Twoでのリハ前に雪祈が一人で弾いていた曲

Tom Waits – Grapefruit Moon クリックでyoutubeへ

大が電車の中で出会ったおじさんは、500円玉貯金で買ったトランペットを大事に持っていました。その根性に惹かれ音を聴いてみたくなり、おじさんの個人練習についていきます。そこでおじさんが吹いた曲がこれ。

Blue Mitchel – I’ll close my eyes クリックでyoutubeへ

ちなみにおじさんが買った「相棒」はこちら

おじさんが500円玉貯金で買った相棒 購入は画像をクリック

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BLUE GIANT6巻(ブルージャイアント)あらすじとネタバレ

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First Note   大・・・強い音を出せ

その日、雪祈は曲を書いていました。大の強く太い音に負けないメロディを必死で探します。そんな雪祈の元に、一本の電話が入ります。ジャズギタリストの川喜田 元(かわきた もと)が、高校生の頃の雪祈のプレーを聴き、ピアニストとして使ってみたいという電話でした。雪祈は川喜田のライブに参加し、気に入られます。川喜田は自分のバンドのメンバーになりツアーを回るよう雪祈を誘いますが、雪祈は自分の求めるジャズの世界に行ける相手ではないと感じるのでした。そしてその相手は雪祈にとってはやはり大なのです。雪祈は一人闇の中で練習する大を誘い、その晩のギャラで大と玉田に焼き肉を奢ります。ギャラを全部使いきるのでした。

雪祈は曲を書き上げます。タイトルは「First Note」大は非常に気に入ります。玉田はまず自分のことに必死で曲を聴く余裕がありません。そして作曲者である雪祈は、まだまだ不満足です。

大は、ドラムに必死で他の音を聴いている余裕がないと言う玉田のドラムが、いつのまにジャズらしくなってきていることに気づき、さらに雪祈に

「弱い!」

「お前の強い音、どこへ行っちゃった?」

と指摘されます。

玉田の成長と雪祈の努力に背中を押されるように、大は走り込み、泳ぎ、強い音を取り戻すために行動するのでした。さらにジャズバーのセッションに参加し、ソロで長い長い、さらにどんどん強さを待つロングトーンで回りを圧倒し・・・怒られるのでした。しかし、これで大は、自分の強い長い音が武器であることを確信します。

18歳のジャズナイト

大はライブを企画し、一人でチラシを作って配り歩きます。雪祈は無名の自分たちを聴きにくる人などいない、それにまだ初心者の玉田には事が大き過ぎると反対しますが、たった一人でチラシを配る大を見て気持ちを変えます。

ライブ当日、客はお店の常連客が3人だけです。大はその客席を見ながら

「この日を一生、覚えておこう。」

と誓うのでした。そして、ライブがあることも知らず、ただ酒を飲みに来ていた3人の常連、そしてHPに告知もせず、チラシも貼らなかった店長を一気に引き込む演奏をします。そして雪祈は、大が本番のステージで凄みを増し大きくなることを確信するのです。

一方玉田は、自分が予想していたよりずっと、何もできなかったことに傷つき落ち込んでいます。店長や常連客はライブの前後でまったく態度を変えるのですが、それは主に大と雪祈に対してで、玉田の存在感は全くと言っていいほどありません。大はその玉田の姿に、仙台のバードの初ライブの時の自分を重ねます。

バイトを控えているため、初ライブの打ち上げは自販機の缶ジュース、その打ち上げの席で玉田は、

「オレのドラム、クソだ。」

「オレ、抜けないと。」

その玉田に雪祈は

「125回」

と言います。玉田のミスの数です。何も言い返せない玉田に雪祈は続けて

「正直言うわ。」

「思ってたより、悪くなかったわ。」

その夜、一人になった玉田は橋の上で号泣するのでした。バードのライブの後大も泣いていましたが、それを大きく超えて泣きじゃくります。

翌日の練習に遅れてきた玉田は、手が震えてリズムが刻めなくなってしまい、理由をつけて練習場所であるtake twoから抜け出します。それを見た雪祈は大をなじります。

大が、ようやく少し叩けるようになった初心者の玉田をステージに引っ張り出したのが原因で、玉田は叩けなくなったのだと。さらにライブ中にミスを連発しすっかり委縮した玉田を助けることもできず、置き去りにして一人で吹いていたのだと指摘するのです。

一方玉田は、take twoから抜け出した先の公園で、奇妙な音を出す楽器のようなものを吹く男子中学生と出会います。

「それ、楽器?」

玉田は問いかけます。

「トランペットのマウスピースです。」

少年は、中学一年で吹奏楽部に入部したばかり、はじめは音が出せないので楽器には触らせてもらえずマウスピースだけの練習を続けています。彼の中学のブラバンは厳しく、小学校からの経験者は夏から楽器を使えるのですが、彼は初心者のためトランペットを触るだけでも先輩に怒られるが、秋には楽器を使えるのを楽しみにしています。玉田は彼に、

「頑張って。」

と言い残してその場を去るのですが、途中でそれが何か違うように感じ、公園に引き返して彼にこう告げるのです。

「頑張って、じゃなかったわ。」

「先輩、ぶっ飛ばしちゃえ。オレならそうする。」

玉田はその後、昨日号泣した橋の手すりをスティックで叩きながら

「大も雪祈も、全員ぶっ飛ばしてやる。」

と誓い、再び練習に励むのでした。

JASS

以前雪祈に自分のバンドに加わるようオファーをし、結果断られたジャズギタリストの川喜田が、小さなジャズバーに姿を現します。そこでは今時のジャズバーらしくなく、若い観客が歓声をあげ演者をあおり、さらに追っかけらしき若い女性客も黄色い声を張り上げていました。演奏しているのは「JASS」という若者のバンドです。サックス、ピアノ、ドラムの三人編成でベースレスです。

川喜田が探しあてた雪祈がそこにいました。曲の最中でも気に入らないプレイに対して言い合いをし、観客はそれに対しても盛り上がります。ステージと客席が一体になって作り上げる、まさしく「ライブ」な空間でした。そしてそこには玉田もいました。まだ大と雪祈の「fight」には入っていけない玉田ですが、いつか必ず殴り込んでやるつもりでいます。

川喜田は勢いのある三人の演奏、そして雪祈の挑発に対して目の前で成長を見せる大を目にして、マスターにギターを借り

「ちょっと負けに行ってくる。」

とステージに飛び入りするのでした。

いや、かっこいいな川喜田さん。

センスも才能もある十代の若者トリオと言えばこちら、ソルティドッグ (僕のジョバンニ)もそうです。オリジナル中心で、JASSはベース、ソルティドッグはドラムがいないところも、フライヤーにセンスの欠片もないところも同じです。(大がPCで作ったフライヤーは三人の焼き肉を食べる写真、縁の手書きフライヤーに至っては、ヘタな犬の絵が添えられているという代物)

二作品の連載時期からすると年齢的に5歳くらいJASSの方が上なのですが、この二つのバンドが出会ったらどんな感じなのでしょう。

・・・なんとなく、雪祈と縁が喧嘩して終わりそうな気がする。



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BULE GIANT5巻(ブルージャイアント)あらすじとネタバレ

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沢辺 雪祈(さわべ ゆきのり)18歳 担当パート、ピアノ

take2のアキコさんに教わったライブハウスで、大はピアニストの沢辺雪祈と出会います。一曲通して左手だけで弾き通し大の心を強く動かした雪祈は、大の右手の親指にできているタコを見てサックス吹きであることを看過し、さらに大の年齢を聞き

「一緒に組まない?」

と誘いをかけるのでした。雪祈の野望は、10代の若いプレイヤーで東京の音楽シーンの先頭に立つこと。そして、長らく日本のジャズ界でプレイするベテランミュージシャンにわからせてやるのだと大に語ります。

「あいつらがどんだけジャズをダメにしてきたか、あいつらのせいでジャズが負け続けてきたんだっつーのを・・・。」

そう言う雪祈の言葉を遮るように大は言います。

「ジャズを好きな人たちがいるから、今日もまたジャズがある。」

他の人がどう思うかより、自分しか出せない音を出すことに、必死だと。

生意気で傲慢、しかし心根は優しい雪祈と真っすぐでスケールが名前の通り大きく、とんでもない可能性を秘めた大、二人の才能ある若者の最初の出会いでした。

雪祈に連れられて行った日本屈指のライブハウス「So Blue」(モデルはBlue Note Tokyo)の立見席で、週三回通っているという雪祈が、ライブの音に合わせて一心に手すりを「弾いている」のを見た大は、

「雪祈、組もう。」

と言います。

3年間、どんだけやってきたんだ・・・

工事現場で誘導のバイト中の雪祈の元に、大から電話が入ります。サックスがメンテナンスから戻ってきたので、自分の音を聴いてほしいとの電話でした。バイトを終えた雪祈はTake Twoに向かいます。そこで雪祈は、大のサックス歴が3年であること、ブラバン部員ですらなくバスケ部であったことを知り、密かに軽くみるのでした。

大はピアノを弾こうとした雪祈を押しとどめ、

「オレ一人で吹いても、ヘタかどうか雪祈なら分かるべ?」

「一緒にプレーするのは、組んでからでいいんだべ。」

そういって一人でプレーし始めます。

吹き終わった大を、雪祈は何も言わずに帰します。そして、Take Twoのカウンターで一人涙するのでした。

大の音に心を揺さぶられた涙でした。才能と・・・努力に、感動したのです。

「たった3年で、どれだけ努力したんだ。」

雪祈は努力家です。口でも相当のことを言い、自信家でもありますが、それには才能だけでなくそれ以上の努力の積み重ねという裏付けがあってのことでした。その雪祈を、大の音は完全に打ちのめしたのでした。そして、その大の努力に感動する雪祈の努力も凄まじいもので、その雪祈だからこそわかるものでもありました。

ドラムは車。ドライブさせてくれる才能あるドラマー、急募!

大は雪祈からOKの返事をもらい、二人は一緒にやることになります。大は雪祈が大の音につき抜かれてしまったとを知りません。雪祈はあくまで、「合格」とだけ伝えたのです。

雪祈はリズムセkション、それもまずドラマーが必要だと言います。ドラマーの必要性がいまいちわかっていない大に、雪祈は

「ドラムは車だ。」

と言うのでした。ドラムは車、いいジャズドラマーはレーシングカーでも高級車でもスポーツカーでもトラックでも、すべての車になることができ、乗せている上物プレイヤーの音に瞬時に反応する耳を持っているのが才能あるドラマーだと。

大の家主である玉田は高校の時からサッカー部で、大学に入ってもサークルでサッカーをやっています。しかし玉田はサークルのサッカーの緩さに物足りなさを感じていました。。

勝手に玉田のアパートに上がり込み、決起集会を繰り広げ熱くジャズを語り合う大と雪祈に何かを感じた玉田は、サークルを辞めました。その足で、川原で一人練習する大の元に行きます。大は玉田に木の枝と空き缶を渡し、リズムを出してもらいます。玉田の叩くリズムで一心に吹く大を見る玉田の脳裏には、かつて全力で打ち込んでいた高校のサッカー部がよみがえります。一方大は、玉田の天性のリズム感に気づきます。玉田は自分にドラムができるのだろうかと大に問い、大はそんな玉田を雪祈の元に連れていき

「ドラマーの玉田君です。」

と紹介するのでした。勿論、雪祈は大反対です。押し切った大が玉田に叩かせてのセッションですが、初めてドラムに触った玉田は当然ついていけません。雪祈は玉田を帰し、素人とはやれない、自分たちには時間がない、と大に告げます。雪祈の夢は10代のメンバーでSo Blueのステージに立つこと。18歳の雪祈には残された時間は本当にわずかなのです。ジャズの高い敷居をまたいで越えてきた奴としか組めない、そう雪祈は言うのでした。

それに対して大は

「なら、オレもだ。」「ジャズの敷居、見たこともまたいだこともねえっちゃ。」

ドラマー 玉田俊二 ドラム歴4日

玉田が帰ってから4時間ほど雪祈とセッションした大が帰宅すると、玉田は毛布をかぶってバケツを叩き続けていました。それを見た大は

「やりてんだから、いいじゃんな。」

とつぶやくのでした。

玉田はさらに電子ドラムを購入し、教本を見ながら練習をはじめます。そしてドラム教室の体験レッスンにも参加します。玉田の生活はわずかな間にドラム一色に変わりました。

ちなみに玉田購入の電子ドラムは多分これ。作中でYAMAHAの箱で届けられています。値段も一緒。

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一方雪祈は、大学のジャズ研の同期のドラマー、上野を連れてきます。雪祈は玉田に、上野と玉田とどちらが上か玉田自身で決めろといいます。

大、雪祈、上野の三人のセッションがはじまりますが、大は雪祈のいうドライブさせてくれる車を上野に感じません。雪祈の求める反応のよさもなく、ついていくのがやっとでした。上野もすぐにそれを悟りサークルに戻っていきます。

玉田はそのあと、雪祈に止められながらもドラムの前に座ります。習ったばかりの8ビートでセッションが始まります。

セッション後に玉田とはやれない、という雪祈に対して大は、それが一番簡単だ。だからジャズがダメになるのだと言い放つのでした。

「オレは上手くても下手でも、感動できればいい。」

雪祈は玉田に今は正式なメンバーにはできないけど、練習には好きなだけ来ていいと言います。ドラマー、玉田俊二の誕生です。

So Blue・・・Blue Note Tokyo

雪祈の憧れのライブハウス、So BlueのモデルになっているのがBlue Note Tokyo

言わずと知れた日本のジャズクラブのトップに位置する名門です。ただSo Blueのように安い立見席はありませんので、雪祈が週3回通い続けるのは無理な気がします。

そのBlue Note Tokyoのステージに最年少で立ったのがLittle Glee Monster。MTV Unpluggedの公開録画でのことでした。2018年6月のことなので、ブルージャイアント5巻の本誌掲載時には10代のミュージシャンはまだいなかったことになります。

果たして雪祈の夢は叶うのか、これから先明らかになります。

Blue Note Tokyo

 

雪祈は「音楽教室なんか行くな」と独白するのですが

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BLUE GIANT NIGHTS 2019

今年も開催!BULE GIANT NIGHT

 

So BlueことBULENOTE TOKYO、そして大の故郷、仙台は仙台電力ホールでブルージャイアントのライブイベントが開かれます。

2019年9月19日
仙台電力ホール
開場18:00、開演18:30
2019年9月21~23日
BLUE NOTE TOKYO

[1st]Open3:00pm Start4:00pm

[2nd]Open6:45pm Start7:30pm

オープニングアクト募集中です。23歳以下限定。最新刊での大の年齢ですね。オーディション参加の課題曲はchロキー。やる気がある若者の挑戦を待っています。

詳細はこちら

チケットはこちらから

チケットぴあ

追記

オーディションを勝ち抜いた15歳~19歳のバンド「Ascinsion」

明日29日、池袋Absolute Blueでライブです。未成年者のためかライブ時間早いですが、そしてものすごくギリギリですが、お時間ある方どうぞ。

9月29日(日) @ Absolute Blue 
【Ascension】
佐々木 諒太(sax)
菊池 冬馬(p)
山本 修也(b)
片岡 晴翔(dr)

open 16:00 
1st 16:30-17:30 / 2nd 18:00-19:00 

チャージ:予約 ¥3,000 / 当日 ¥3,300/ 学割¥2,000 (別途1ドリンクオーダー)

★ご予約⇒ http://absol.blue

2019年今から間に合うストリートジャズフェスティバル

ブルージャイアント2巻で、大が舞を連れて行ったのは定禅寺ストリートジャズフェスティバルでした。今回は定禅寺ストリートジャズフェスティバルを含む、ストリート音楽フェスの中からこれから開催されるお勧めをご紹介します。遠方のフェスを楽しむための格安航空券のご紹介も。

ストリート音楽フェスティバルとは、数ある音楽フェスの中でも街中で行われるタイプフェスです。音楽フェスティバルは大きく分けてストリート型とパーク型に分かれますが、ここではストリート型に的を絞ってご紹介することとします。

定禅寺ストリートジャズフェスティバル

ブルージャイアントでも紹介された、日本で最大規模、老舗のストリート型ジャスフェスティバルです。ブルージャイアントの作中でも触れられた通り仙台の街中を上げて行われ、アマチュアからプロまでが集まり仙台中で様々な音楽が楽しめます。毎年9月の第2土、日曜日に開催され、前日に行われる前夜祭も含めると3日間、仙台市内が音楽一色に染まります。

市民ボランティア中心で運営されているのが特徴、またジャズのみならずポップスからロック、ブルーグラスにアイリッシュ等、様々なジャンルが一堂に会する音楽ファンにとってはたまらないイベントです。

当日は屋台村もあり、グルメも堪能できます。また、誰でも参加できるオープンステージもあり音楽を十二分に楽しめるものとなっています。

2019年は9月7日(土)~9月8日(日)開催です。→終了しました

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横濱ジャズプロムナード→台風のため中止(10/12更新)

日本におけるジャズ発祥の地、横浜を舞台に繰り広げられる街中ジャズフェスティバルです。国内は勿論、海外からも参加者多数です。横浜はみなとみらいを中心に、街角、ホール、ジャズクラブに分かれて開催されます。2019年は10月12日(土)~10月13日(日)の二日間開催決定、プロミュージシャンの出演者募集は締切られましたが、アマチュアミュージシャンの出演者募集は7月1日~8月1日までです。詳細は公式HP出演者募集ページ

他のジャスフェスティバルとは違い、ジャズに特化しているところが特徴です。ジャズと一口に言っても様々なジャンルがあるため好みに合わせて楽しむことができます。

街角ではビックバンドが多くジャズクラブ等はコンボが多いです。街角は無料ですがジャズクラブやホール等はチャージや入場料がかかることがあります。

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すみだストリートジャズフェスティバル 

墨田区内を会場に、すべて無料で行われる市民ジャズフェスティバルです。無料ながら、プロの出演者は日本国内でも一流どころが顔を揃えています。会場は錦糸町駅、押上駅、両国駅、および東京スカイツリー周辺と数駅にまたがり、会場をつなぐシャトルバスも運行されています。ライブの他、ダンスやヨガのワークショップも催され、多彩な楽しみ方ができるのが特徴です。

2019年は8月16日(金)~18日(日)の3日間の開催です。→終了しました。

8/17にすみジャズ行ってきました。体験記はこちら

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四日市JAZZフェスティバル→終了しました

四日市市民公園をメイン会場とし、市内全15会場で開催される市民ジャズフェスです。こちらもすべての会場が無料ですが、ジャズクラブ等が会場の場合別途1ドリンク以上のオーダーが必要です。規模はそれほ大きくありませんが、ゲストミュージシャンは無料で聴けるとは思えないメンバーが揃っています。

ジャズだけではなく、ポップス、ロック、フォークなど幅広く音楽を楽しめます。

2019年は10月26日(土)~10月27日(日)開催です。

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阿佐ヶ谷JAZZストリート (8/19更新)→終了しました。

今年25周年を迎える老舗のストリートフェスティバルです。共通パスポートを購入して入場する有料のパブリック会場、阿佐ヶ谷駅から2kmほどのストリート野外ライブを楽しめるストリート会場、阿佐ヶ谷の街中のライブハウスやバー、喫茶店やレストラン等でライブを見ることができる(各店ごとにチャージあり)バラエティ会場の3パターンから構成されています。2019の詳細が公式HPではまだ出ていないのでTwitterのチェックをお勧めします。

2019年は10月25日(金)~10月26日(土)

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体験記を書きました→こちら

MIYA JAZZINN (10/5更新)

1974年から実に45年続いてきた超老舗のストリートフェスティバルです。会場は宇都宮市街地の3か所(オリオンスクエア会場(オリオン市民広場)、オリオン通り曲師町イベント広場会場、オリオンACぷらざ会場)公募により集まったミュージシャンが2日間にわたり熱い演奏を繰り広げます。「ジャズの街・うつのみや」合言葉に、いつでもジャズを楽しめる街として町おこしを続け、市民によるジャズは盛んです。

2019年は11月2日(土)~11月3日(祝)

公式ページはこちら

ストリート音楽フェスティバルを楽しむために、最適な旅行プランはこちらからどうぞ

これらのフェスティバルはほとんどが無料ですが、遠方に出かけて楽しむとなると旅費がかかりますね。ここではできるだけ出費を抑えるためのプランをご紹介します。

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BLUE GIANT4巻(ブルージャイアント)あらすじとネタバレ

ギャフン、っつたんだべよ!

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大をステージから降ろしたおじさんは、「一曲だけでも聴いてほしい。」という大の願いを受け、カウンターに座りなおします。

大はステージに上がり、川原で何度か感じてきた音と自分がつながる感覚を思い出そうとしています。つながれば、いける!そう思っているのです。吹き始めた大の音に、以前のライブを知っているバードのマスターやピアニストは、短い期間での成長を感じます。

けれども大は、間違ったことはやっていないのにつながれない自分を感じるのです。アンサンブルなのに一人で吹いているようにさえ思えます。あせりながら客席の由井を見ると、由井が自分の耳を差し、何か言っています。「聴け!」と。

それを見て悟った大は、改めて回りの音に注意を向け聴き始めます。他の3人のリズム隊は(ドラム、ベース、ピアノ)大の音がバンドにはまってきたことを即座に感じ、反応します。

しっかりとアンサンブルになったところで、大が前に音を出していきます。今度は一人ではありません。そこでつながることのできた大の創り出すラインにピアニストが引っ張られ、喜びの表情を浮かべます。そして例のおじさんは、大が宣言した通り度肝を抜かれたで見ていました

4人で創り出す音の波の中に大がいて、何か掴んだような顔で立っている顔が印象的なコマは原作で確認してください。大を、そろそろ人とやらせようとバードに連れてきた由井の判断は、やはり間違っていなかったのです。

大はおじさんに言います。

「高校を卒業したら、仙台を離れジャズプレイヤーになる。その前におじさんにもう一度聴いてもらいたかった。」

それに対しておじさんは、

「ギャフン、っつったんだべよ。」

と、相変わらず憮然とした表情で答えるのでした。

小っちゃい兄ちゃんは、もう帰ってこないんだ

大の妹、彩花は小6、雅之が大好きで、

「大きい兄ちゃんのお嫁さんになる。」

と公言しています。半面大とはいつも喧嘩ばかりしています。彩花の口癖は、

「小っちゃい兄ちゃん、やっぱ馬鹿だ。」

何かにつけて大を馬鹿にし、舐めた態度を取る生意気盛りの女の子です。雅之は大と彩花の母親代わりも務める大人で優しい青年ですが、次兄である大は彩花をからかったり意地悪をしたり、嫌われるようなことばかりしているので致し方ありません。けれども、雅之は家を出て一人暮らし、父は仕事で不在の時、インフルエンザにかかった彩花を負ぶって医者に連れて行ったのは大であり、彩花も実は大を慕っているのでした。それを二人の兄もよく知っています。

大はジャズプレイヤーになるため東京に行くことに決め、家族を集めその決意を話します。父の提案で、大は初めて家族の前でサックスを吹くのでした。大のサックスを聴いた父と雅之は嬉しそうな顔をし、彩花は涙を流すのでした。

彩花は大のサックスを聴いて、はっきりと悟ってしまったのでした。

「小っちゃい兄ちゃんはもう、帰ってこないんだ。」

Take Twoとの出会い、そして・・・彼がいた

大は東京へ旅立ちました。同級生の玉田のアパートに転がり込んでの居候生活です。生活のためのバイト三昧の日々です。深夜にやっと自分の練習ができます。初めて親元を離れ、まず食べなくてははじまらないという現実を目の当たりにします。

そんなある日、サックスをメンテナンスに出し練習ができない大は、街で見かけたジャズ喫茶に入ります。そこには客の姿はおろか、店主さえも見当たりません。BGMすらなく、流れてくるのはラジオの野球中継でした。

ようやく姿を現した店主は50代くらいの女性、ジャズはやっていないのかと聞く大に

「今日は、なし。」

と不愛想に答えます。そして、

「レコードでもいい?」

と大に問い、夥しい数のレコードから一枚を選び出しました。その膨大なレコードを見て大は、

「この人、ジャズを信じてるんだな。」

と感じるのでした。これが、Take Twoオーナーのアキコさんとの出会いです。

ライブが聴きたかった大でしたがレコードのよさも感じ、すっかりご機嫌になったところで、アキコさんからライブをやっている店を教わりそちらに寄ることにします。店に行ってみるとちょうどセッションの日でした。サックスをメンテナンスに出してしまった大はそれを残念に思いながら店に入ると、ピアノの前に彼がいました。

大が最初にバンドを組む同世代、雪祈(ゆきのり)との邂逅でした。

舞台は仙台から東京へ 大きく転換を迎えた4巻

大の最初のセッションで演った最初の曲はこれ。

Cherokee-Charlie Parker .クリックでyoutubeへ

大は、まず生活のためにバイトをし、「金がないのって甘くねえべ。」とレインボーブリッジを見ながら思います。そして、

「腹へった、腹へった、腹へった、腹へった!!」

と吹いていると、屋形船が近づいてきます。そしてそこに乗っていた客のサラリーマンからリクエストされます。それがこの曲

Herbie Hancock – Maiden Voyage クリックでyoutubeへ

その演奏は、大が初めてギャラをもらった演奏となるのでした。

ブルージャイアントで取り上げられている曲をまとめて聴きたい方にはこちらがお勧め

『ブルージャイアント』コンプリート・エディション [ (V.A.) ]

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BLUE GIANT3巻(ブルージャイアント)あらすじとネタバレ

二人の「師」・・・由井

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3巻の1話は、大の師匠の由井の日常を描いています。酒瓶の転がる汚部屋のソファで昼まで眠りこける由井に、一本の電話が入るシーンからはじまります。半年前に依頼されたCMソングの催促の電話でした。FAXする旨伝えて、ようやく由井の1日がはじまります。

自宅の地下スタジオでレッスンです。まず60代とおぼしき男性のサックスレッスンです。初心者らしい男性の課題曲は「蝶々」定年後に新しく挑戦した趣味、といったところでしょうか。緊張の面持ちで必死に吹く男性に由井は一言

「上手!」

さらに

「ジャッキー・マクリーンみたい。特にミの音が。」

と付け加えます。すると、それまで半信半疑だった男性の顔がパッと明るくなり、喜んで帰っていきます。やる気が出た様子です。

次の生徒はボーカルの女性、迫力のある体格の彼女にも

「上手!!」

{もう少し口角を上げ気味で歌うといいね。」

とアドバイスします。

その日最後の生徒は大でした。由井は怒鳴りまくります。本領発揮です。

大のレッスンが終わったあと、由井はバークリー時代の同級生、片山に会います。ピアニストの片山は、翌日のライブののため仙台に前のりしてきたのでした。由井は片山に通ってくる生徒の中に面白いやつがいると語るのです。

「ブルージャイアントが現れてお前の耳に届く日が来る。そいつだ。」

次の日、由井は大に片山のチケットを渡し、自分は幼稚園生のピアノのレッスンに勤しむのでした。そこには由井なりの思いがあるのでした。由井は密かに、一流という片山と由井の夢に一人献杯するのです。

けれど由井先生、大に対してだけではなく他の生徒にもいいレッスンしてます。レッスン室に酒瓶が転がったままなのは考えものですが。

最初のサックスの男性に対し、ただ「上手!」と褒めるだけではなく、「ジャッキー・マクリーンみたい。特にミの音が」と付け加えることで、具体的にどこがよかったかを伝えています。男性はジャッキー・マクリーンを知っています。知っているだけでなく恐らく憧れのミュージシャンであるのでしょう。ほんの少しだけ憧れの存在に近づけた喜びとともに、ミだけではなくファもソも他の音もジャッキーに近づけるように努力することでしょう。大にGの座標を与えたように、サックスの男性にも自分の中で一番ジャッキー・マクレーンに近いミの音を指標として与えたのです。

ただ、もしかすると作者の意図するところは、一流を目指して挫折した男が初心者を相手に無難なレッスンをしているが、大に対してだけは本気でレッスンするというところなのかもしれませんが、だとすると由井は作者の手を離れて勝手にいいレッスンをしてしまったのですね。そういうとこ嫌いじゃないですよ、由井師匠。

二人の・「師」・・・ミュージックティーチャー 黒木

雅之からサックスを贈られた大は毎日練習するのですが、どのキーを押しても同じ音しかでないことで悩んでいました。困った大はある日、音楽室に音楽の黒木先生を訪ねていきます。

黒木先生は定年間近と思しき女の先生です。白髪交じりの真ん中から分けたボブが70年代に青春時代を過ごした名残にも見えなくありません。その人柄は真面目でピュア。音楽室に来た大に両手をきちんと前で組み

「バスケットボール部の宮本君。」

と呼びかけます。バスケ部、なんて略し方はしないのです。大は黒木先生が部活まで覚えていることに驚きます。黒木先生は全生徒のフルネームと部活を覚えているのでした。

大の悩みを聞いた黒木先生は、大にサックスの運指表をくれました。「宮本君 がんばってください。」と書き込まれた運指表を頼りに運指を覚えていきます。

どうしたらうまくなるのかと問う大に黒木先生は、

「吹くの。毎日吹くの。」

「毎日毎日毎日毎日ずっとずっとずっとず——-っと毎日吹くの。」

「きっと上手くなる。先生応援してるから、ね。」

その言葉の通り毎日毎日吹き続けた大は、高校最後の学園祭。サックスのソロでステージに立つことを決めます。学園祭当日、ロックバンドがほとんどのステージでジャズという音楽の熱さ、激しさ、カッコよさを伝えにいきます。

一方黒木先生は、生徒たちのステージを見ながら、かつてバンドマンを目指した大勢の教え子たちに想いを馳せます。たくさんの子供たちが音楽を愛し、バンドマンを目指し、挫折していったこと。その子たちに自分は何かしてあげられたのかと自分に問うのでした。

大は最初の一音で観客を圧倒し、体育館中を沸かせました。そして2曲目は黒木先生をピアノに迎え、演ったのは校歌。大合唱になったところでジャズアレンジになります。黒木先生は立ち上がって熱いソロを繰り広げます。全員総立ちでした。ジャズが伝わったのです。

大は黒木先生に伝えます。黒木先生が音楽の先生でよかったと。音楽は人生に不可欠な、心の欲する栄養だと語った黒木先生の授業も間違いなく伝わっていました。

次の日、舞とデートをした大は舞に「仙台を離れる。」と告げます。由井にはジャズの道は険しいこと、調子にのるな、と釘をさされた大でしたが、若者にもジャズは伝わると確信したのでした。

2度目の「バード」で、あの人と再会

由井は大が急速に成長したことを感じます。毎日川原で一人きりで吹いている大に、そろそろ他の人と一緒にやる時期が来たと告げ、バードのオープンマイクに連れていきます。バードは何も知らなかった大が初めてライブをやり、最初の挫折を味わった店です。大は由井に、バードで演るなら聴いてほしい人がいると言います。

その日ピアノを弾いていたのは大の初めてのライブの日のピアニストでした。彼は大の参加を喜びます。自分の出番まで他の人の演奏を楽しむ大でしたが、スケールからはずれた音、合ってない音にすぐ気づきます。そんな聴き方をしたことがなかった大は、自分の耳が明らかに成長していることに気づきます。

そこにやってきた一人の酔客が、大の待っている人でした。最初のライブの時、大はバンドとのバランスを考えず川原で出している音量で吹いてしまい

「うるさいんだよ君は!」

と客に怒られてステージを下ろされてしまうのですが、その客がマスターに呼ばれてやってきたのでした。大の顔を見て帰ろうとする客に大は、一曲だけ聴いていってくださいと頼みます。

「必ずおじさんの度肝を抜きますから。」

と。

 

さて、由井先生は仙台にしかいませんが(しかも2次元の仙台にしかいませんが)こちらの教室なら全国どこからでも通えます。教室に酒瓶が転がっていることもありません。体験レッスンからどうぞ。

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