少年漫画

BLUE GIANT9巻(ブルージャイアント)あらすじとネタバレ

初めてのジャズフェス、3人で圧倒

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JASSが初めて出演するジャズフェス「カツシカジャズ」の打ち合わせからTake Twoに戻ってきた雪祈は非常に怒っています。アクトの天沼に若さだけのバンドと決めつけられた腹立ちです。雪祈は大と玉田に、アクトに勝つ!と宣言したことを話します。ビビる玉田に喜ぶ大、3人は当日に向けて走り出すのでした。ちなみに大は本当に走っています。それぞれ個人練習に打ち込む雪祈と玉田のカットの後、サックスを持たずに走り込みをする大のシーンが描かれます。以前雪祈に「強い音を出せ」と言われたときも大は走り、泳いでいました。

カツシカジャズ当日、JASSのリハを耳にした天沼の評価は徐々に「これは、ありじゃないか?」に変わっていきました。

「ピアノ、上手いな。」

「サックスは野太い音だね。」

「ドラムは、まあまあか。」

ドラム、まあまあなんですよ。So Blueの平には初心者と見抜かれてた玉田が、それから幾らもたたないうちに大や雪祈を支えるドラマーkとして「まあまあ」の評価を得るのですから、これってすごいです。

ただし、本番前までの天沼の評価は「なかなかいいバンド」まで好転したものの、やはり若い後輩バンドとして下に見る気持ちは消えないようでした。自分達が盛り上げるから失敗など気にせず演っていいと言う天沼に雪祈が再びムカつきだしたのを見た大は、天沼に元気に自己紹介と挨拶をし

「いつも通り全力全開で盛り上げます。ですので、天沼さん達も頑張ってください。」

と、挑発するのでした。

JASSのステージは大のソロではじまります。初っ端から全開で飛ばす大の音量のリハとのあまりの違いにPAさん焦りますが、音圧は下げない方向で必死にベストポジションを探ります。ステージ袖で見守る天沼の表情が変わり始めます。3分ほど続いた大のソロに雪祈と玉田が飛び込みます。そして雪祈のソロ、壁を完全に乗り越え考えないプレイをしている雪祈とノッている観客を認めた大は玉田に囁きます。

「ソロやっぺ!!」

玉田の初ソロは、バスドラのみの連打からはじまりました。熱いソロを叩き出す玉田とそれを見守る天沼の表情、観客のノリ、JASSは3人で場を圧倒したのです。曲終わりに大がメンバー紹介をします。玉田を紹介した時に、その玉田のスティックを握った手をつかみ高々と掲げたのは雪祈でした。

ステージ袖に戻ってきたJASSの3人に天沼は惜しみない拍手を送り、握手を求めステージへと出ていきます。そこで天沼は熱いプレイを繰り広げそれはアクトの他のメンバーにも伝染し、大人のプロとしての演奏で観客を沸かせるのでした。

この玉田のソロからアクトの演奏までが一話に納められていますが、一話を通して文字が一切なく絵だけで表現されています。一番音が鳴っている場面で直接的な音の表現がまったくないのです。台詞ももちろんありません。この一話、最高にかっこいいです。

次の一話で描かれる大の仙台の家族の話もとてもいいです。残された家族がそれぞれ自分の持ち場で大の話をする、それだけなのですがストーリー全体に厚みを与えています。ちなみに彩花は、由井先生にフルートを習っています。大に贈られたフルートです。

ある日、仙台から三輪舞が大を訪ねてきました。突然のことにびっくりする大に舞は

「お台場に連れて行って。」

と言います。

二人は久しぶりにデートをします。東京へ来てから一年、ジャウとバイト三昧だった大にとって初めてのお台場で案内などはとてもできませんが、お互いの近況を話しながら観光してまわります。大は、東京で色々なことがあったこと、それでも舞のことは忘れたことがないと話します。

二人は観覧車に乗ります。そこで大は舞から

「好きな人ができました。」

と告げられます。すぐには言葉を返せない大でしたが、続く舞の言葉に一年もほとんど連絡をとらず放っておいた自分を省みるのでした。

別れ際、舞は

「私、疑ったことないんだ。1ミリも。」

「宮本大が、世界一のサックスプレーヤーになるの。」

いつか、世界一の大のサックスを聴きに行くと言い残して舞は仙台に帰ります。

So Blueのステージに立つ!

舞との別れは大にとって想像以上のショックを与えました。大はそれを悟られまいと普段通りに振舞っていたのですが、大の出す音に現れていたため雪祈にも玉田にも気づかれていました。それを知った大は、気持ちがすべて伝わってしまうジャズはやはりすごい、と感じ改めて目標として

「So Blueのステージに立つ。」

と宣言します。舞との最後のデートで舞が言った

「宮本大は、昔話が似合わないね。」

の一言の通り、止まらずに突き進みジャズしか見えていない男なのです。

・・・別れて正解だわ、舞ちゃん。

JASSに可能性は残されている。

その日、雪祈はいつものように工事現場でバイト中でした。休憩中携帯が突然鳴りだし、表示された相手の名前を見て雪祈は驚愕するのでした。

「平さん So Blue」

平は緊急事態を迎えていました。So Blueでライブを二日後に控えたカルテットのピアニストが急病で倒れ来日できなくなったと連絡を受けたところだったのです。ついてはトラのピアニストを探してほしいとの要請でした。

電話を取った雪祈に平は事情を話し、出演してみないかと言うのです。ただし、JASSではなく雪祈だけだと。

雪祈はメンバーと話し3時間以内で返事をすると約束し、大の居候する玉田の家に駆け付けます。

玉田の家では大と玉田が牛乳の賞味期限のことで平和に喧嘩中でした。そこで雪祈はSo Blueから雪祈一人に出演オファーがあったことを告げます。抜け駆けだと思われてもしかたない、と話しはじめる雪祈をよそに大は玉田と二人分のチケットを入手します。

深夜のコンビニで譜面を手に入れ、徹夜で練習をして翌日昼からのリハに参加した雪祈はカルテットのメンバーにも無事

「いいと思うよ。」

と本番の参加を認められました。そして雪祈は平に頭を下げあの夜のことを謝ります。そして精一杯やるので今回自分の演奏がよかったら

「JASSに可能性は残されていると言ってください。」

と心から言うのでした。

そして、ステージははじまります。

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BLUE GIANT6巻(ブルージャイアント)あらすじとネタバレ

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First Note   大・・・強い音を出せ

その日、雪祈は曲を書いていました。大の強く太い音に負けないメロディを必死で探します。そんな雪祈の元に、一本の電話が入ります。ジャズギタリストの川喜田 元(かわきた もと)が、高校生の頃の雪祈のプレーを聴き、ピアニストとして使ってみたいという電話でした。雪祈は川喜田のライブに参加し、気に入られます。川喜田は自分のバンドのメンバーになりツアーを回るよう雪祈を誘いますが、雪祈は自分の求めるジャズの世界に行ける相手ではないと感じるのでした。そしてその相手は雪祈にとってはやはり大なのです。雪祈は一人闇の中で練習する大を誘い、その晩のギャラで大と玉田に焼き肉を奢ります。ギャラを全部使いきるのでした。

雪祈は曲を書き上げます。タイトルは「First Note」大は非常に気に入ります。玉田はまず自分のことに必死で曲を聴く余裕がありません。そして作曲者である雪祈は、まだまだ不満足です。

大は、ドラムに必死で他の音を聴いている余裕がないと言う玉田のドラムが、いつのまにジャズらしくなってきていることに気づき、さらに雪祈に

「弱い!」

「お前の強い音、どこへ行っちゃった?」

と指摘されます。

玉田の成長と雪祈の努力に背中を押されるように、大は走り込み、泳ぎ、強い音を取り戻すために行動するのでした。さらにジャズバーのセッションに参加し、ソロで長い長い、さらにどんどん強さを待つロングトーンで回りを圧倒し・・・怒られるのでした。しかし、これで大は、自分の強い長い音が武器であることを確信します。

18歳のジャズナイト

大はライブを企画し、一人でチラシを作って配り歩きます。雪祈は無名の自分たちを聴きにくる人などいない、それにまだ初心者の玉田には事が大き過ぎると反対しますが、たった一人でチラシを配る大を見て気持ちを変えます。

ライブ当日、客はお店の常連客が3人だけです。大はその客席を見ながら

「この日を一生、覚えておこう。」

と誓うのでした。そして、ライブがあることも知らず、ただ酒を飲みに来ていた3人の常連、そしてHPに告知もせず、チラシも貼らなかった店長を一気に引き込む演奏をします。そして雪祈は、大が本番のステージで凄みを増し大きくなることを確信するのです。

一方玉田は、自分が予想していたよりずっと、何もできなかったことに傷つき落ち込んでいます。店長や常連客はライブの前後でまったく態度を変えるのですが、それは主に大と雪祈に対してで、玉田の存在感は全くと言っていいほどありません。大はその玉田の姿に、仙台のバードの初ライブの時の自分を重ねます。

バイトを控えているため、初ライブの打ち上げは自販機の缶ジュース、その打ち上げの席で玉田は、

「オレのドラム、クソだ。」

「オレ、抜けないと。」

その玉田に雪祈は

「125回」

と言います。玉田のミスの数です。何も言い返せない玉田に雪祈は続けて

「正直言うわ。」

「思ってたより、悪くなかったわ。」

その夜、一人になった玉田は橋の上で号泣するのでした。バードのライブの後大も泣いていましたが、それを大きく超えて泣きじゃくります。

翌日の練習に遅れてきた玉田は、手が震えてリズムが刻めなくなってしまい、理由をつけて練習場所であるtake twoから抜け出します。それを見た雪祈は大をなじります。

大が、ようやく少し叩けるようになった初心者の玉田をステージに引っ張り出したのが原因で、玉田は叩けなくなったのだと。さらにライブ中にミスを連発しすっかり委縮した玉田を助けることもできず、置き去りにして一人で吹いていたのだと指摘するのです。

一方玉田は、take twoから抜け出した先の公園で、奇妙な音を出す楽器のようなものを吹く男子中学生と出会います。

「それ、楽器?」

玉田は問いかけます。

「トランペットのマウスピースです。」

少年は、中学一年で吹奏楽部に入部したばかり、はじめは音が出せないので楽器には触らせてもらえずマウスピースだけの練習を続けています。彼の中学のブラバンは厳しく、小学校からの経験者は夏から楽器を使えるのですが、彼は初心者のためトランペットを触るだけでも先輩に怒られるが、秋には楽器を使えるのを楽しみにしています。玉田は彼に、

「頑張って。」

と言い残してその場を去るのですが、途中でそれが何か違うように感じ、公園に引き返して彼にこう告げるのです。

「頑張って、じゃなかったわ。」

「先輩、ぶっ飛ばしちゃえ。オレならそうする。」

玉田はその後、昨日号泣した橋の手すりをスティックで叩きながら

「大も雪祈も、全員ぶっ飛ばしてやる。」

と誓い、再び練習に励むのでした。

JASS

以前雪祈に自分のバンドに加わるようオファーをし、結果断られたジャズギタリストの川喜田が、小さなジャズバーに姿を現します。そこでは今時のジャズバーらしくなく、若い観客が歓声をあげ演者をあおり、さらに追っかけらしき若い女性客も黄色い声を張り上げていました。演奏しているのは「JASS」という若者のバンドです。サックス、ピアノ、ドラムの三人編成でベースレスです。

川喜田が探しあてた雪祈がそこにいました。曲の最中でも気に入らないプレイに対して言い合いをし、観客はそれに対しても盛り上がります。ステージと客席が一体になって作り上げる、まさしく「ライブ」な空間でした。そしてそこには玉田もいました。まだ大と雪祈の「fight」には入っていけない玉田ですが、いつか必ず殴り込んでやるつもりでいます。

川喜田は勢いのある三人の演奏、そして雪祈の挑発に対して目の前で成長を見せる大を目にして、マスターにギターを借り

「ちょっと負けに行ってくる。」

とステージに飛び入りするのでした。

いや、かっこいいな川喜田さん。

センスも才能もある十代の若者トリオと言えばこちら、ソルティドッグ (僕のジョバンニ)もそうです。オリジナル中心で、JASSはベース、ソルティドッグはドラムがいないところも、フライヤーにセンスの欠片もないところも同じです。(大がPCで作ったフライヤーは三人の焼き肉を食べる写真、縁の手書きフライヤーに至っては、ヘタな犬の絵が添えられているという代物)

二作品の連載時期からすると年齢的に5歳くらいJASSの方が上なのですが、この二つのバンドが出会ったらどんな感じなのでしょう。

・・・なんとなく、雪祈と縁が喧嘩して終わりそうな気がする。



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BULE GIANT5巻(ブルージャイアント)あらすじとネタバレ

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沢辺 雪祈(さわべ ゆきのり)18歳 担当パート、ピアノ

take2のアキコさんに教わったライブハウスで、大はピアニストの沢辺雪祈と出会います。一曲通して左手だけで弾き通し大の心を強く動かした雪祈は、大の右手の親指にできているタコを見てサックス吹きであることを看過し、さらに大の年齢を聞き

「一緒に組まない?」

と誘いをかけるのでした。雪祈の野望は、10代の若いプレイヤーで東京の音楽シーンの先頭に立つこと。そして、長らく日本のジャズ界でプレイするベテランミュージシャンにわからせてやるのだと大に語ります。

「あいつらがどんだけジャズをダメにしてきたか、あいつらのせいでジャズが負け続けてきたんだっつーのを・・・。」

そう言う雪祈の言葉を遮るように大は言います。

「ジャズを好きな人たちがいるから、今日もまたジャズがある。」

他の人がどう思うかより、自分しか出せない音を出すことに、必死だと。

生意気で傲慢、しかし心根は優しい雪祈と真っすぐでスケールが名前の通り大きく、とんでもない可能性を秘めた大、二人の才能ある若者の最初の出会いでした。

雪祈に連れられて行った日本屈指のライブハウス「So Blue」(モデルはBlue Note Tokyo)の立見席で、週三回通っているという雪祈が、ライブの音に合わせて一心に手すりを「弾いている」のを見た大は、

「雪祈、組もう。」

と言います。

3年間、どんだけやってきたんだ・・・

工事現場で誘導のバイト中の雪祈の元に、大から電話が入ります。サックスがメンテナンスから戻ってきたので、自分の音を聴いてほしいとの電話でした。バイトを終えた雪祈はTake Twoに向かいます。そこで雪祈は、大のサックス歴が3年であること、ブラバン部員ですらなくバスケ部であったことを知り、密かに軽くみるのでした。

大はピアノを弾こうとした雪祈を押しとどめ、

「オレ一人で吹いても、ヘタかどうか雪祈なら分かるべ?」

「一緒にプレーするのは、組んでからでいいんだべ。」

そういって一人でプレーし始めます。

吹き終わった大を、雪祈は何も言わずに帰します。そして、Take Twoのカウンターで一人涙するのでした。

大の音に心を揺さぶられた涙でした。才能と・・・努力に、感動したのです。

「たった3年で、どれだけ努力したんだ。」

雪祈は努力家です。口でも相当のことを言い、自信家でもありますが、それには才能だけでなくそれ以上の努力の積み重ねという裏付けがあってのことでした。その雪祈を、大の音は完全に打ちのめしたのでした。そして、その大の努力に感動する雪祈の努力も凄まじいもので、その雪祈だからこそわかるものでもありました。

ドラムは車。ドライブさせてくれる才能あるドラマー、急募!

大は雪祈からOKの返事をもらい、二人は一緒にやることになります。大は雪祈が大の音につき抜かれてしまったとを知りません。雪祈はあくまで、「合格」とだけ伝えたのです。

雪祈はリズムセkション、それもまずドラマーが必要だと言います。ドラマーの必要性がいまいちわかっていない大に、雪祈は

「ドラムは車だ。」

と言うのでした。ドラムは車、いいジャズドラマーはレーシングカーでも高級車でもスポーツカーでもトラックでも、すべての車になることができ、乗せている上物プレイヤーの音に瞬時に反応する耳を持っているのが才能あるドラマーだと。

大の家主である玉田は高校の時からサッカー部で、大学に入ってもサークルでサッカーをやっています。しかし玉田はサークルのサッカーの緩さに物足りなさを感じていました。。

勝手に玉田のアパートに上がり込み、決起集会を繰り広げ熱くジャズを語り合う大と雪祈に何かを感じた玉田は、サークルを辞めました。その足で、川原で一人練習する大の元に行きます。大は玉田に木の枝と空き缶を渡し、リズムを出してもらいます。玉田の叩くリズムで一心に吹く大を見る玉田の脳裏には、かつて全力で打ち込んでいた高校のサッカー部がよみがえります。一方大は、玉田の天性のリズム感に気づきます。玉田は自分にドラムができるのだろうかと大に問い、大はそんな玉田を雪祈の元に連れていき

「ドラマーの玉田君です。」

と紹介するのでした。勿論、雪祈は大反対です。押し切った大が玉田に叩かせてのセッションですが、初めてドラムに触った玉田は当然ついていけません。雪祈は玉田を帰し、素人とはやれない、自分たちには時間がない、と大に告げます。雪祈の夢は10代のメンバーでSo Blueのステージに立つこと。18歳の雪祈には残された時間は本当にわずかなのです。ジャズの高い敷居をまたいで越えてきた奴としか組めない、そう雪祈は言うのでした。

それに対して大は

「なら、オレもだ。」「ジャズの敷居、見たこともまたいだこともねえっちゃ。」

ドラマー 玉田俊二 ドラム歴4日

玉田が帰ってから4時間ほど雪祈とセッションした大が帰宅すると、玉田は毛布をかぶってバケツを叩き続けていました。それを見た大は

「やりてんだから、いいじゃんな。」

とつぶやくのでした。

玉田はさらに電子ドラムを購入し、教本を見ながら練習をはじめます。そしてドラム教室の体験レッスンにも参加します。玉田の生活はわずかな間にドラム一色に変わりました。

ちなみに玉田購入の電子ドラムは多分これ。作中でYAMAHAの箱で届けられています。値段も一緒。

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一方雪祈は、大学のジャズ研の同期のドラマー、上野を連れてきます。雪祈は玉田に、上野と玉田とどちらが上か玉田自身で決めろといいます。

大、雪祈、上野の三人のセッションがはじまりますが、大は雪祈のいうドライブさせてくれる車を上野に感じません。雪祈の求める反応のよさもなく、ついていくのがやっとでした。上野もすぐにそれを悟りサークルに戻っていきます。

玉田はそのあと、雪祈に止められながらもドラムの前に座ります。習ったばかりの8ビートでセッションが始まります。

セッション後に玉田とはやれない、という雪祈に対して大は、それが一番簡単だ。だからジャズがダメになるのだと言い放つのでした。

「オレは上手くても下手でも、感動できればいい。」

雪祈は玉田に今は正式なメンバーにはできないけど、練習には好きなだけ来ていいと言います。ドラマー、玉田俊二の誕生です。

So Blue・・・Blue Note Tokyo

雪祈の憧れのライブハウス、So BlueのモデルになっているのがBlue Note Tokyo

言わずと知れた日本のジャズクラブのトップに位置する名門です。ただSo Blueのように安い立見席はありませんので、雪祈が週3回通い続けるのは無理な気がします。

そのBlue Note Tokyoのステージに最年少で立ったのがLittle Glee Monster。MTV Unpluggedの公開録画でのことでした。2018年6月のことなので、ブルージャイアント5巻の本誌掲載時には10代のミュージシャンはまだいなかったことになります。

果たして雪祈の夢は叶うのか、これから先明らかになります。

Blue Note Tokyo

 

雪祈は「音楽教室なんか行くな」と独白するのですが

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BLUE GIANT4巻(ブルージャイアント)あらすじとネタバレ

ギャフン、っつたんだべよ!

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大をステージから降ろしたおじさんは、「一曲だけでも聴いてほしい。」という大の願いを受け、カウンターに座りなおします。

大はステージに上がり、川原で何度か感じてきた音と自分がつながる感覚を思い出そうとしています。つながれば、いける!そう思っているのです。吹き始めた大の音に、以前のライブを知っているバードのマスターやピアニストは、短い期間での成長を感じます。

けれども大は、間違ったことはやっていないのにつながれない自分を感じるのです。アンサンブルなのに一人で吹いているようにさえ思えます。あせりながら客席の由井を見ると、由井が自分の耳を差し、何か言っています。「聴け!」と。

それを見て悟った大は、改めて回りの音に注意を向け聴き始めます。他の3人のリズム隊は(ドラム、ベース、ピアノ)大の音がバンドにはまってきたことを即座に感じ、反応します。

しっかりとアンサンブルになったところで、大が前に音を出していきます。今度は一人ではありません。そこでつながることのできた大の創り出すラインにピアニストが引っ張られ、喜びの表情を浮かべます。そして例のおじさんは、大が宣言した通り度肝を抜かれたで見ていました

4人で創り出す音の波の中に大がいて、何か掴んだような顔で立っている顔が印象的なコマは原作で確認してください。大を、そろそろ人とやらせようとバードに連れてきた由井の判断は、やはり間違っていなかったのです。

大はおじさんに言います。

「高校を卒業したら、仙台を離れジャズプレイヤーになる。その前におじさんにもう一度聴いてもらいたかった。」

それに対しておじさんは、

「ギャフン、っつったんだべよ。」

と、相変わらず憮然とした表情で答えるのでした。

小っちゃい兄ちゃんは、もう帰ってこないんだ

大の妹、彩花は小6、雅之が大好きで、

「大きい兄ちゃんのお嫁さんになる。」

と公言しています。半面大とはいつも喧嘩ばかりしています。彩花の口癖は、

「小っちゃい兄ちゃん、やっぱ馬鹿だ。」

何かにつけて大を馬鹿にし、舐めた態度を取る生意気盛りの女の子です。雅之は大と彩花の母親代わりも務める大人で優しい青年ですが、次兄である大は彩花をからかったり意地悪をしたり、嫌われるようなことばかりしているので致し方ありません。けれども、雅之は家を出て一人暮らし、父は仕事で不在の時、インフルエンザにかかった彩花を負ぶって医者に連れて行ったのは大であり、彩花も実は大を慕っているのでした。それを二人の兄もよく知っています。

大はジャズプレイヤーになるため東京に行くことに決め、家族を集めその決意を話します。父の提案で、大は初めて家族の前でサックスを吹くのでした。大のサックスを聴いた父と雅之は嬉しそうな顔をし、彩花は涙を流すのでした。

彩花は大のサックスを聴いて、はっきりと悟ってしまったのでした。

「小っちゃい兄ちゃんはもう、帰ってこないんだ。」

Take Twoとの出会い、そして・・・彼がいた

大は東京へ旅立ちました。同級生の玉田のアパートに転がり込んでの居候生活です。生活のためのバイト三昧の日々です。深夜にやっと自分の練習ができます。初めて親元を離れ、まず食べなくてははじまらないという現実を目の当たりにします。

そんなある日、サックスをメンテナンスに出し練習ができない大は、街で見かけたジャズ喫茶に入ります。そこには客の姿はおろか、店主さえも見当たりません。BGMすらなく、流れてくるのはラジオの野球中継でした。

ようやく姿を現した店主は50代くらいの女性、ジャズはやっていないのかと聞く大に

「今日は、なし。」

と不愛想に答えます。そして、

「レコードでもいい?」

と大に問い、夥しい数のレコードから一枚を選び出しました。その膨大なレコードを見て大は、

「この人、ジャズを信じてるんだな。」

と感じるのでした。これが、Take Twoオーナーのアキコさんとの出会いです。

ライブが聴きたかった大でしたがレコードのよさも感じ、すっかりご機嫌になったところで、アキコさんからライブをやっている店を教わりそちらに寄ることにします。店に行ってみるとちょうどセッションの日でした。サックスをメンテナンスに出してしまった大はそれを残念に思いながら店に入ると、ピアノの前に彼がいました。

大が最初にバンドを組む同世代、雪祈(ゆきのり)との邂逅でした。

舞台は仙台から東京へ 大きく転換を迎えた4巻

大の最初のセッションで演った最初の曲はこれ。

Cherokee-Charlie Parker .クリックでyoutubeへ

大は、まず生活のためにバイトをし、「金がないのって甘くねえべ。」とレインボーブリッジを見ながら思います。そして、

「腹へった、腹へった、腹へった、腹へった!!」

と吹いていると、屋形船が近づいてきます。そしてそこに乗っていた客のサラリーマンからリクエストされます。それがこの曲

Herbie Hancock – Maiden Voyage クリックでyoutubeへ

その演奏は、大が初めてギャラをもらった演奏となるのでした。

ブルージャイアントで取り上げられている曲をまとめて聴きたい方にはこちらがお勧め

『ブルージャイアント』コンプリート・エディション [ (V.A.) ]

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BLUE GIANT3巻(ブルージャイアント)あらすじとネタバレ

二人の「師」・・・由井

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3巻の1話は、大の師匠の由井の日常を描いています。酒瓶の転がる汚部屋のソファで昼まで眠りこける由井に、一本の電話が入るシーンからはじまります。半年前に依頼されたCMソングの催促の電話でした。FAXする旨伝えて、ようやく由井の1日がはじまります。

自宅の地下スタジオでレッスンです。まず60代とおぼしき男性のサックスレッスンです。初心者らしい男性の課題曲は「蝶々」定年後に新しく挑戦した趣味、といったところでしょうか。緊張の面持ちで必死に吹く男性に由井は一言

「上手!」

さらに

「ジャッキー・マクリーンみたい。特にミの音が。」

と付け加えます。すると、それまで半信半疑だった男性の顔がパッと明るくなり、喜んで帰っていきます。やる気が出た様子です。

次の生徒はボーカルの女性、迫力のある体格の彼女にも

「上手!!」

{もう少し口角を上げ気味で歌うといいね。」

とアドバイスします。

その日最後の生徒は大でした。由井は怒鳴りまくります。本領発揮です。

大のレッスンが終わったあと、由井はバークリー時代の同級生、片山に会います。ピアニストの片山は、翌日のライブののため仙台に前のりしてきたのでした。由井は片山に通ってくる生徒の中に面白いやつがいると語るのです。

「ブルージャイアントが現れてお前の耳に届く日が来る。そいつだ。」

次の日、由井は大に片山のチケットを渡し、自分は幼稚園生のピアノのレッスンに勤しむのでした。そこには由井なりの思いがあるのでした。由井は密かに、一流という片山と由井の夢に一人献杯するのです。

けれど由井先生、大に対してだけではなく他の生徒にもいいレッスンしてます。レッスン室に酒瓶が転がったままなのは考えものですが。

最初のサックスの男性に対し、ただ「上手!」と褒めるだけではなく、「ジャッキー・マクリーンみたい。特にミの音が」と付け加えることで、具体的にどこがよかったかを伝えています。男性はジャッキー・マクリーンを知っています。知っているだけでなく恐らく憧れのミュージシャンであるのでしょう。ほんの少しだけ憧れの存在に近づけた喜びとともに、ミだけではなくファもソも他の音もジャッキーに近づけるように努力することでしょう。大にGの座標を与えたように、サックスの男性にも自分の中で一番ジャッキー・マクレーンに近いミの音を指標として与えたのです。

ただ、もしかすると作者の意図するところは、一流を目指して挫折した男が初心者を相手に無難なレッスンをしているが、大に対してだけは本気でレッスンするというところなのかもしれませんが、だとすると由井は作者の手を離れて勝手にいいレッスンをしてしまったのですね。そういうとこ嫌いじゃないですよ、由井師匠。

二人の・「師」・・・ミュージックティーチャー 黒木

雅之からサックスを贈られた大は毎日練習するのですが、どのキーを押しても同じ音しかでないことで悩んでいました。困った大はある日、音楽室に音楽の黒木先生を訪ねていきます。

黒木先生は定年間近と思しき女の先生です。白髪交じりの真ん中から分けたボブが70年代に青春時代を過ごした名残にも見えなくありません。その人柄は真面目でピュア。音楽室に来た大に両手をきちんと前で組み

「バスケットボール部の宮本君。」

と呼びかけます。バスケ部、なんて略し方はしないのです。大は黒木先生が部活まで覚えていることに驚きます。黒木先生は全生徒のフルネームと部活を覚えているのでした。

大の悩みを聞いた黒木先生は、大にサックスの運指表をくれました。「宮本君 がんばってください。」と書き込まれた運指表を頼りに運指を覚えていきます。

どうしたらうまくなるのかと問う大に黒木先生は、

「吹くの。毎日吹くの。」

「毎日毎日毎日毎日ずっとずっとずっとず——-っと毎日吹くの。」

「きっと上手くなる。先生応援してるから、ね。」

その言葉の通り毎日毎日吹き続けた大は、高校最後の学園祭。サックスのソロでステージに立つことを決めます。学園祭当日、ロックバンドがほとんどのステージでジャズという音楽の熱さ、激しさ、カッコよさを伝えにいきます。

一方黒木先生は、生徒たちのステージを見ながら、かつてバンドマンを目指した大勢の教え子たちに想いを馳せます。たくさんの子供たちが音楽を愛し、バンドマンを目指し、挫折していったこと。その子たちに自分は何かしてあげられたのかと自分に問うのでした。

大は最初の一音で観客を圧倒し、体育館中を沸かせました。そして2曲目は黒木先生をピアノに迎え、演ったのは校歌。大合唱になったところでジャズアレンジになります。黒木先生は立ち上がって熱いソロを繰り広げます。全員総立ちでした。ジャズが伝わったのです。

大は黒木先生に伝えます。黒木先生が音楽の先生でよかったと。音楽は人生に不可欠な、心の欲する栄養だと語った黒木先生の授業も間違いなく伝わっていました。

次の日、舞とデートをした大は舞に「仙台を離れる。」と告げます。由井にはジャズの道は険しいこと、調子にのるな、と釘をさされた大でしたが、若者にもジャズは伝わると確信したのでした。

2度目の「バード」で、あの人と再会

由井は大が急速に成長したことを感じます。毎日川原で一人きりで吹いている大に、そろそろ他の人と一緒にやる時期が来たと告げ、バードのオープンマイクに連れていきます。バードは何も知らなかった大が初めてライブをやり、最初の挫折を味わった店です。大は由井に、バードで演るなら聴いてほしい人がいると言います。

その日ピアノを弾いていたのは大の初めてのライブの日のピアニストでした。彼は大の参加を喜びます。自分の出番まで他の人の演奏を楽しむ大でしたが、スケールからはずれた音、合ってない音にすぐ気づきます。そんな聴き方をしたことがなかった大は、自分の耳が明らかに成長していることに気づきます。

そこにやってきた一人の酔客が、大の待っている人でした。最初のライブの時、大はバンドとのバランスを考えず川原で出している音量で吹いてしまい

「うるさいんだよ君は!」

と客に怒られてステージを下ろされてしまうのですが、その客がマスターに呼ばれてやってきたのでした。大の顔を見て帰ろうとする客に大は、一曲だけ聴いていってくださいと頼みます。

「必ずおじさんの度肝を抜きますから。」

と。

 

さて、由井先生は仙台にしかいませんが(しかも2次元の仙台にしかいませんが)こちらの教室なら全国どこからでも通えます。教室に酒瓶が転がっていることもありません。体験レッスンからどうぞ。

全国約40校のミュージックスクール

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BLUE GIANT2巻(ブルージャイアント)あらすじとネタバレ

ヘタクソでナニが悪いんすか?

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毎日川原でサックスの練習を続ける大にも、好きな女の子がいます。水泳部の三輪 舞(みわ まい)です。舞は背が高く、さっぱりした気性の女の子です。修学旅行の時、大は舞をデートに誘います。

「自転車に乗せていくから、海を見に行こう。」

大らしく、ストレートな誘いの言葉でしたが、その時には実現しませんでした。それから一年後、花火大会の日に川原で練習する大の元に舞が現れます。

大は舞に今練習している曲を聴かせるため、ヘッドホンを舞に貸し、スマホでコルトレーンを流します。

「喫茶店のBGMみたいな感じ」

と舞が思ったところで、大がホリュームを上げます。びっくりした舞に

「もう少しそのままデカい音で聴いて。」

舞は先ほどまでとは全然違う音楽に思わず笑みをもらし、

「いいね。」

「それが、ジャズ!」

いいね、と笑う舞の表情がとてもいいのです。

舞を家まで送る途中、駅前でストリートミュージシャンが演奏しているところに出くわします。と、そこに通りかかった酔っ払いが一人、

「ヘタクソ」

と怒鳴るのでした。

大は思わず、

「ヘタの何が悪い。」

「みんなヘタクソからはじまるんだ。ヘタだから練習して、そしていつの日か、誰かの気持ちに届く音を出す。ヘタクソで、何が悪いんすか。」

と言ってしまいます。

酔っ払いは大に、お前はヘタクソか、と聞き、練習しろと言い残して去りました。これが、大と師匠の由井(ゆい)との出会いでした。

Gの座標に立つ・・・ジャズへの一歩

いつものように川原で練習する大の所に、初めてのライブをやったジャズバー「バード」のマスター、川西訪ねてきます。川西は大の音が忘れられず、会わせたい人がいる、と大をバードに連れていきます。そこにいたのは駅前で出会った酔っ払いの由井でした。

大はビビりながら、ピアノの前に座った由井と初めてのセッションをします。前回のライブのことを思い出し躊躇する大に由井は、

「いつもの川原の感じてやれ。」

と促すのでした。

はじめてすぐに由井は、大の出す音が尋常でない響きを持っていること、理論ではなく感覚、躍動感でのアドリブであること、そしてその音が未熟なのにも関わらず人を圧倒することを見抜きます。そして大も、自分の音が支えられる初めての感覚に楽しくてしかたがなくなるのです。

初めて全部出せた充実感と疲労感を覚える大に由井は、

「ヘタだ。」

と言います。理論、もプレイも全部だめ。だけど・・・。由井は大にサックスを教える、と言うのでした。

由井の初レッスン、まず教わったのは「G」の音。音の名前も高低も知らないままサックスを吹いてきた大への、初めての伝授と言えるものでした。「G」の音を座標とし、そこからどこにでも動ける。音を操縦する技術を身に着けることができる。「G」の上にしっかり立て。と教わるのです。

ちなみにレッスン室は由井の自宅スタジオですが、酒瓶がピアノの上にたくさん転がっています(笑)

定禅寺ストリートジャズフェスティバル

定禅寺ストリートジャズフェスティバルとは、仙台で行われている実在のジャズフェスです。仙台の街中で市民ボランティアが中心となって1981年から開催されている歴史あるフェスなのです。ジャズとついているものの、ジャンルは問わず、ありとあらゆる音楽を気軽に楽しむことができます。毎年9月の第2土曜、日曜に開催され、700組のバンドと75万人の聴衆で仙台の街がいっぱいになります。

大は舞と一緒に定禅寺ストリートジャズフェスティバルに出かけます。実質初めてのデートです。様々なジャンルの音楽を片っ端から聴き歩く二人、音楽といえば女子高生に人気の曲しか聞かない舞も、普段聴かないような音楽を楽しんでいます。

大は、街中のステージのない通りでサックスを取り出します。驚いた舞に一人で何を吹くのか聞かれた大は、

「音楽はいいなあ、音楽はスゲエな。を吹きます。」

と答え、吹きはじめます。

大の音に圧倒された人々が集まってくるシーン、最初に驚きで振り返った幼女の表情、衝撃を受けた人々の顔と吹き続ける大の姿、この一連のシーンは是非とも原作で味わってください。これは漫画でなきゃ伝わらないです。

2巻のボーナストラック2は定禅寺ストリートジャズフェスティバルの潜入レポートです。合わせてお楽しみください。

定禅寺ストリートジャズフェスティバルを含む、2019年今から間に合うストリート音楽フェスティバルのご紹介はこちら

50万円、36回払いのサックス

大は10歳の時に母親を亡くしています。兄、雅之は13歳、妹の彩花は3歳でした。何もわからない彩花、泣きじゃくる大に対して、中学生の雅之は泣くのをずっとこらえていました。それから雅之は、忙しい父をサポートし弟妹の保護者代わりに面倒を見てきたのです。

大のサックスは雅之からのプレゼントです。大がジャズに心惹かれ、サックスを吹いてみたいと思っていることを聞いた雅之は、楽器屋に行き

「この店で一番いいサックスをください。」

と言って初任給で36回ローンを組んだのでした。

欲しいもの何か買ってやる、と雅之が言っても、無邪気にねだる彩花とは対照的に大は、何もいらないと断るのです。大は雅之の給料を使わせることを気にしていたのでした。

就職と同時に家を出て一人暮らしをしていた雅之が、ある日突然帰宅して大に

「お前のだぞ。」

とサックスを手渡します。それを見た大は、何も言わず家を飛び出し一人涙します。

大を取り巻く人間関係が、暖かく実があるいいものなのです。兄の雅之だけではなく、妹の彩花や、スーパーの店長をしている父、音楽とは関係ないバイト先の上司や同級生との関係も、わざとらしくなく表現されています。なかでもこの雅之とのエピソードは何度読んでも泣けます。

ところで雅之が大に贈ったのは、セルマーのテナーサックスです。一番価格が近いのはこれかな?



雅之が大に贈ったのはセルマーのテナー。購入はこちら

 

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気分はグルービーと聖夜に登場する曲(聖夜編)

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さて、本日は聖夜に登場する曲のうち、ロックの紹介です。クラシックや現代音楽についてはまた今度。聖夜の主人公、一哉はキース・エマーソンに衝撃を受け、オルガンの入ったロックやジャズを片っ端から聴くようになります。ネットのない時代ですからラジオです。この頃は中学生くらいからラジオを聴き始め、深夜放送にはまるのが一般的でした。エア・チェック(FM放送から音楽をカセットテープに録音すること)が流行っていた頃です。

Tarkus/Emerson, Lake & Palmer (クリックでyoutubeへ)

一哉が自宅の教会の礼拝堂で練習している曲です。教会からEL&Pが流れていたらびっくりしますが、ちょっといいな、とも思ってしまいました。短めバージョンです。それでも10分近いです。

展覧会の絵/Emerson,Lake&Palmer(クリックでyoutubeへ)

一哉の日課は、祖母の部屋でオルガンを弾いて聴かせることです。この日、元ネタのムソルグスキーの展覧会の絵を弾いていたのですが、最後にちょっとだけEL&Pバージョンを弾きます。そしてある日、学校の礼拝の後奏で同じ曲を弾いて、それを聴いた深井に声を掛けられるのです。後奏とは、礼拝の参加者が礼拝堂を出る時に弾く曲です。これで退場するの大変そうですよね。フルバージョンです。40分あるのでお時間あるときにどうぞ。

Love Beach/Emerson, Lake & Palmer -(クリックでyoutubeへ)

深井に「あれ、聴いたか?」と聞かれるEL&Pのアルバムから、タイトル曲です。この後、深井は「今のプログレはもうだめだ。」と語ります。プログレの最盛期は70年代前半、80年代には音楽シーンがガラッと変わります。パンクが生まれ、AORが台頭します。深井はプログレの終焉を見据えながら、語る相手がいなかったのを一哉に一気にぶつけるように喋り続けるのでした。

Kid Charlemagne/Steely Dan – (クリックでyoutubeへ)

Sign in Stranger/Steely Dan- (クリックでyoutubeへ)

深井の部屋で聴かされた、スティーリー・ダンのアルバム「The Royal Scam」より深井お勧めの1曲目と一哉が気に入った4曲目。

彩/Steely Dan-(クリックでyoutubeへ)

次にかけたアルバムをフルバージョンで。ちなみに二人が気に入ったのは「The Royal Scam」の方です。

Romantic Warrior/Return To Forever –  (クリックでyoutubeへ)

深井の家で聴いた最後のアルバムです。この後、二人は「アーバン」のライブを聴きに行きます。

先日のグルービーの曲と合わせ、80年初めの高校生が演奏していた曲のだいたいの傾向がつかめたでしょうか。バンドサウンドが主流になり音が厚くなってきましたが、まだギター一本で弾き語りも健在でした。それにしても深井くん、音楽的に早熟ですね。

そしてアーバンの笹本さんです。一哉の見立てでは20代半ばくらい。一哉たちより8歳位年上だとします。すると72年に高3です。アポロン世代が66年に高2ですから、笹本さんは薫たちの5歳下です。当時はフォークブームではありましたが、当時の高校生がEL&Pとか演ってたんでしょうか。

演ってたらしいです。プログレの他にブルース、ハードロック、スティーリー・ダンにリトル・フィート、クルセイダーズにスタッフなど、深井だけじゃなく音楽的に早熟な高校生がたくさんいました。音楽の世界が豊かだった時代です。密かにフォークソングを馬鹿にしてたという話も聞いたことがあります。余談ですが。

その笹本さんのセット、ハモンドとエレピを直角に置き、エレピの上にシンセを置いています。エレピはローズでしょうか。



RHODES ローズ / Mark7 73S Gloss Black 購入はこちら

このセッティングは寿子もよく使っています。寿子は自分のシンセ一台以外は現場にあるものを使っているようです。シンセは見た感じDX7かと思ったのですが、DX7は83年5月発売、83年は寿子は高3です。3年生になってからシンセが出てきたならDX7の可能性もあるのですが、2年生で出てきてしまうので違いますね。

残念だな。なんとなく寿子にDX7持っていて欲しかった。

DX7

DX7 これが出てから歴史がまた一つ動いたといっても過言ではない、名器です。

機材の話、面白いので改めて別に記事 にしてみようかな。

こちらなら絶版の気分はグルービーも買えますよ。

もったいない本舗

気分はグルービーと聖夜に登場する曲(グルービー編)

気分はグルービーの舞台は81年~84年、物語の初めで大将が高校2年、後の4人は高校1年です。当時はTOTOやシカゴが日本でヒットを飛ばしAORのブームがきた頃ですが、ピテカンがカバーしている曲はもう少しだけ前の曲が多いです。これは作者の佐藤宏之さんが61年の生まれだからでしょう。

また、聖夜の舞台は80年、グルービーの一年前で一哉や深井が高校3年、天野と青木が高校2年です。だいたい同じ年代ですね。作者の佐藤多佳子さんは65年生まれ、ピテカンメンバーのうち憲二、稲村、奥ちゃんと一緒です。(寿子はダブりなので64年生まれ)

なので、グルービーと聖夜に出てくる曲をピックアップしていきます。80年代の高校生が好んでよくカバーしていた曲特集です。本日はグルービー編。

Black dog/Led Zeppelin クリックでyoutubeへ

ピテカンがS&Nのテープ審査用に録音した曲。作中ではツェッペリンのブラックナイトとありますが、ブラックナイトはディープパープルの曲。作中にキーボードがないというセリフがあるので(1巻131p)おそらくブラックドッグの誤植かと思われます。
どちらにしても70年代初めの曲ですね。いやぁ!ロバート・プラントってやっぱり歌上手い。

The answer/Frank Marino クリックでyoutubeへ

ピテカンが合宿で練習する曲。憲二の妹、かおりがアポなしでやってきた回です。(2巻128p)

you’re like a doll baby/Johnny,Louis&Char クリックでyoutubeへ

ピンククラウドに改名する前のアルバム曲です。どのシーンで出てきたのか見つけられなかったのですが、演っているのは確かです。

China Grove/The Doobie Brothers  クリックでyoutubeへ

73年です。個人的に大好きな曲。合宿中の海の家でのライブ(4巻141p)手違いで合宿所が使えなくて困っている時、海の家の親父に拾われて昼間はスタッフとして働き、夜練習していました。

横浜ホンキートンク・ブルース/松田優作 クリックでyoutubeへ

イブのライブでの曲です。いろんな人がカバーしていますが、やはりここは松田優作で。

以下はピテカンラストライブの曲です。憲二が本間のおっちゃんと稲村と一緒にやることを決意してから、寿子との別れ、そして最後に稲村と二人、水戸を出るために街はずれのトンネルを抜けるラストシーンまでと、ラストライブのシーンが交互に描かれます。この一連の流れがあるため、気分はグルービーは連載終了後40年近く過ぎても今なお心に残る名作となっているのだと思います。

Smoke on the water/Deep Purple (クリックでyoutubeへ)

a part of your life/Kris Kristofferson&Rita Coolidge (クリックでyoutubeへ)

憲二と寿子がギター一本デュエットする曲。
寿子が歌いながら涙してしまうシーンです。このシーンに重ねるように二人の別れのシーンが描かれます。

Born to be wild/Steppenwolf (クリックでyoutubeへ)

映画「Easy Rider」の主題歌でしたね。

Purple Haze/The Jimi Hendrix Experience  (クリックでyoutubeへ)

This Guitar /George Harrison (クリックでyoutubeへ)

ピテカンの選曲は、割と有名どころを中心にバラエティにとんだ選曲になってます。
好きな曲はこだわらずにやってみるところもアマチュアらしくていいです。でも、根底にあるのはストレートなロックです。コンテスト用にフュージョン風の難しいアレンジを持ってきた大将が

「ピテカンがロックンロールバンドなんて誰が決めた?」

と問い、憲二が言葉に詰まるシーンがありますが、やはりピテカンはロックンロールバンドですね。この時は大将もそれを認め、アレンジを元のロックンロールに戻すのでした。

ところで作中、TOTOの曲を演奏するシーンは見当たらないのですが、TODOというバンドのライブを見に行くシーンがあります。
舞台である水戸市にTOTOが来たという話は聞いたことがないのですが、エリック・クラプトンやBBキング、マリーナ・ショーなどは来ています。今はなかなか地方都市にまで来ないですね。少し寂しいです。

聖夜は次回に。

ロック漫画 気分はグルービー あらすじとネタバレ


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1980年代の茨城県水戸市を舞台に、アマチュアロックバンド「ピテカントロプスエレクトス」通称「ピテカン」のメンバードラムの憲二、キーボードの寿子、ベースの大将、ギターの稲村、ボーカルの奥ちゃんの高校生活を描く、佐藤宏之の代表作。
明るくバカバカしい日常、ロックに対する熱い想い、甘酸っぱかったり情けなかったりの高校生活が、やがてほろ苦いラストへなだれ込みます。
ライブシーンや楽器はリアルで、当時のバンド少年少女は共感したり身につまされたりしていました。
バンド経験者でないと描けない作品だと思います。

物語は高校一年の武藤憲二が楽器店でドラムセットを売るところからはじまります。母親からドラムを反対されたためです。売るまえにスタジオを借りてたたき納めをする憲二、それを聴いていたのが同じクラスの風紀委員長、友永寿子です。
寿子は自分がキーボードを弾いているバンド、ピテカントロプス・エレクトスのドラマーとして憲二をスカウトします。
一度は断ったものの、やはりロックがやりたい憲二はピテカンに加入します。憲二は知らなかったのですが、実はピテカンとは、S&Nコンテスト(east&westと思われる。)で全国優勝したバンドだったのです。

物語は基本的に一話完結で、バンドに全く関係のない回も多くあります。80年代の、のんびりとした高校生活、背伸びして酒も煙草も当たり前にやっていた自由な雰囲気がよく出ています。そして憲二と寿子はやがて恋仲となるのでした。

S&Nコンテストを控えたある日、ピテカンOBでプロのベーシストのクニさんが修行先のイギリスから帰国します。ピテカンが練習しているスタジオを訪ねたクニさんは、

「リズムすら満足にとれないくせによ。」

と、憲二の買ったばかりのシンセドラム(パールのシンカッション。現在中古で15万くらいです。)を取っ払い、スネア一つで超絶技巧を見せつけます。

パールのシンカッション。いわゆるシンセドラム

「シロートは機械に頼る。」

と言われ、落ち込みながら憲二は発奮して練習します。クニさんの言うことは本当だと感じたのです。何をやっても長続きしない、辛抱が足りないと言われ続けた憲二は、こうしてドラムに、ロックにのめりこんでいきます。

ライブとリハ、合宿、コンテストとバンドマンの日々、さらに文化祭、修学旅行、クラスマッチ、クリスマスにお正月にバレンタインと高校生の青春の日々を送り、

やがてピテカンのメンバーは将来についてそれぞれが考えるようになり、弁護士を目指すベースでバンマスの大将が、受験でバンドを辞めると言い出します。(禁断症状が出て数日後に復帰)普段の楽しい高校生活との対比、やがてやってくる大人になる日に向けて、彼らも成長していきます。

稲村はリスペクトするブルースシンガー、本間のおっちゃんと出会います。本間のおっちゃんは一曲だけヒットを飛ばしたシンガーですが、今は仕事がなく流しでもなんでもやり日銭を稼いでいます。プロでやっていきたい稲村はおっちゃんに弟子入り志願し、家出して関西のキャバレーで一緒に演奏しています。客が誰も聴いていない、リクエストがあれば演歌でもやる、やりたい曲はできない、それでも稲村は

「好きなことをやるため。」

と言い、おっちゃんは

「誰も聴かないのが当たり前のこの場所で、誰かが自分の歌を聴いて感動してくれたら、歌い手冥利につきる。」

と、憲二に語ります。

この辺り、前述のキャバレーにも通じるものがあります。

そんな中、憲二はある同じ夢を見るようになります。

「街はずれにあるトンネルを抜けたところに広場があり、大勢の人が歌い、踊り、楽器をかき鳴らし、それはもう楽しくて・・・。」
その夢が伏線となり、ラストシーンで憲二は夢を現実にするための道を行くことになります。以下ネタバレです。

憲二の背中を押したのは、ドラムに反対していた母親でした。憲二はミュージシャンとして稲村と本間のおっちゃんとドサ廻りの旅に出ます。寿子とは別れを選びます。そのラストの持つあるリアリティのため、読者はいつまでも彼らの未来を追ってしまうのです。

作中に登場する曲についてはこちら

 

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